プロローグ その7 なぜ駆けている?
「は、刃が!」
切れ味が下がる、そういうレベルでない。明らかに目視で毀れているその刃を見て絶句!
「まさか…あの赤い奴か!」
「あの体液、腐食性持ってたんじゃあ…」
「と、とにかく急いで退却だ!」
「い、急げお!」
考えられる要因、可能性が高いのは赤い個体を倒した時に剣に浴びた体液だ。
夢中になって戦っていた時、あの体液がこんな悪影響をもたらすとは全く考えに無かった。今さらになって俺はちゅん助の忠告を無視したのを後悔し始めていた。
(クソ!後悔先に立たずとはよく言ったもんだ)
しかし今になって思う。何故あんなに突っ込んだのか、あれほど隊から離れて孤立するような真似をしてしまったのか?自分でも説明が付かなかった。ただただ、行ける!何故そう思ってしまったのか…
後悔しても遅い。だが幸いな事にそこらかしこに大量に湧いている灰グソクは大群であっても一切の統率は見られず、一斉に襲い掛かって来る事が無いのが救いだ。退却経路はまだ辛うじて埋め尽くされていない。全速力で駆け抜ければ何とかなりそうだ。
いや…
なぜそれにしても全速力で俺は駆けているのだ?
此奴らは少々狂暴な個体は存在した。ところが今はどうだ?大勢がにじり寄り始めているのは気のせいではなく包囲がきつくなっている。逃げ出す様に駆ける事なんて今までなかったはずだ。安全な狩りだったはずなのだ。
(落ち着け!落ち着け!)
そう言い聞かせて俺は走った。
かなり深く進んでしまったが、あの丘を回り込めば見晴らしの良い所まで出る。恐らく隊の姿も肉眼で確認できる位置まで戻れるはずだ。大声で叫べば声が届くかもしれない。なぜか攻撃的になってきた灰グソクは絶え間なく襲ってくる。切れず刺さらぬ剣でも弾き跳ね飛ばす事はなんとか出来ている。交戦を最小限にして駆けてきたから丘は目の前なんだ。
「もうすぐ見通しが良い場所に出るお!何とかなりそうだお!」
緊張は解けていない声だったが、ちゅん助が希望を口にした。
危ない危ない!
俺とした事がこんな冒険の序盤でまたも窮地に追い込まれるとは…あと一歩進んでしまっていたら本当にヤバい事になっていたかもしれない。五十歩百歩とは言うがこういうケースは50歩は助かっても51歩で死ぬ事もあるのだ。そんな思いにとらわれながら、なんとか丘を抜け平原に躍り出る。遮るものが何も無いこの場で大声を張り上げれば助けが呼べる!なんとか助かる!
はずだった…
「うおッ!?」
「なんじゃあ!こりゃああ!?」
こんばんは。ちゅん助ですお!
ラノベのちゅん助はグソクに囲まれ大ピンチですが現実のちゅん助は片頭痛に悩まされながら田んぼの草刈りと中干しと呼ばれる水稲の根張りをよくするための作業で苗に囲まれています。
自走式草刈り機が故障し、この夏は手持ち式の刈り払い機で戦わねばならず、ラノベのイズサンと同じ様に大苦戦!果たして現実のちゅん助も生き延びる事が出来るのか…
さてさてこのラノベでは作者のモチベーションを保つためにも皆様のブックマーク、いいね、感想を熱望しております。お手すきの際にはぜひよろしくお願いいたします。
であであ