プロローグ その17 青ムカデ
青グソクの一団は塊を成して追って来ていたが、俺が足を止め交戦状態に入らざるを得なくなると、周囲を囲む行列となって円を描く軌道を取り始めた。
グソク達の間隔は次第に狭まれ前後のグソクが接触する程になったと思ったら、その走行スピードが跳ねる様に上がった。その行列の姿はまるで巨大な蛇であった。いやそれはスピードが速すぎた故、蛇に見えただけであって実際には驚くべき事に、別の巨大な生物に本当に姿を変えていた。
「こ、こいつら!」
「連なってただけなのに!」
「猛スピードで回り始めたら合体していつの間にかムカデになっとるお!こんなんありかお!」
「なんちゅう奴らだお!」
「速い!」
「な、なんちゅう!」
合体する、その事実だけでも厄介なのに真にヤバいのは青ムカデの、目で追うのがやっとの驚愕の速さであった。このスピードから逃げ切るのは、例え脚に傷を負っていなくとも絶対に不可能だろう。
「キュイー!」
右後方で大ムカデが叫んだかと思うと、物凄い勢いで一直線に俺に襲いかかって来るのがギリギリ見えた。
「うわっ!」
「ひょええ!」
奇跡的に反応出来、なんとか巨大青ムカデの初撃は躱すことに成功。
「キュイー!」
「キュイー!」
「キュイー!」
初撃をなんとか躱した俺であったが、こちらにまともな反撃の手段が無いのはとっくに察知されており青ムカデはさらに加速し、右から左から後ろからあらゆる死角を突いて連続攻撃を仕掛けて来る。
「クッ!」
「速すぎるお!」
防戦一方、いや、防戦ならまだいい。
全神経を集中させ攻撃を躱す。今できるのは本当にそれだけ。
(速すぎる!剣を合わせられない!)
「イズサン!カウンターだお!カウンターを合わせるお!」
「一列になってんだから上手く合わせればズバアアアア!!」
「って真っ二つに!一発で始末できるお!」
「んなこと出来ればとっくにやってるよ!」
そんなの、言うは易しだ。
まるで飛んで来る様なムカデの攻撃をなど必死に躱すので精一杯。
ちゅん助の言う様に出来れば世話は無い。
相手は次々にそれも死角ばかりを狙って猛スピードで突進してくるのだ。
カウンターを取るには真正面へ向き直り、且つ重心のある斬撃を放たなければならない。攻撃に対して何とか体を捻ってやり過ごしてる現状、攻撃のための重心を溜める暇など一切無い。出来るはずが無い。
「キュイー!キュイー!キュイイイイー!」
体捌きが鈍り始めたのを見て、巨大青ムカデはさらに攻撃速度を増し執拗な連続攻撃を加え始めた。
「アウッ!」
一瞬…間に合わなかった。
遂にムカデの攻撃が後方から左肩を捕らえ強力な一撃。身体から鮮血が飛び散った。
「わあー!イズサーン!」
泣き声に近いちゅん助の悲鳴が響き渡った。
「くう…!」
左肩を押さえ、堪らず片膝が地に着いた。
俺の脚が、動きが完全に止まったのを見て巨大青ムカデは挑発する様に、とどめの一撃を加えるべく眼前で∞字を描く軌道で素早く走り回り機会を窺がっている。
走るだけで風切り音が唸っている。
恐らく最速の攻撃、完全に決めに来る。そんな様子。
(ダメだ!速過ぎて、とても捉えられない!ましてやカウンターを合わせるなんて不可能だ!どうする!)
(まともに喰らったら一発でアウトだぞ、どうする!)
こんばんは。ちゅん助です。
ラノベのイズちゅんは巨大な青ムカデと対峙して大ピンチですが、現実のちゅん助は響けユーフォニアムの黄前久美子の部長としての素晴らしき矜持に涙しています。勝った時の振舞いより負けた時の振舞いにこそその人の真意や覚悟が見えるもの。
ちゅん助は楽器にについては興味ないのですが響け!は人間ドラマが素晴らしく全部見てしまっていますお!
1期の麗奈VS香織先輩でのオーディションのやり方、姿晒してやったら感情で票が動く事があって駄目じゃね???とか思っていたのですが、今回でその伏線というか凄く良い前振りになっていて驚愕!
麗奈の時は姿晒して尚、麗奈の方が実力が上だった、という表現にもなっていたと気付き脱帽ですお…
さてさてこのラノベでは皆様のブックマーク登録といいね、評価等熱望しております。面白くしていくのでぜひぜひ!
ではまた次回!




