プロローグ
食という字は人を良くすると書きます。
また、美味しい食事には美味しいという以上の意味もあるように思えます。
なので、徒然なるままに『人の心と食事』をテーマ(?)に書いています。
ジャンルが何なのか、僕にもわかりません。
とにかく、楽しんで頂けたら幸いです。
4年ほど前から、この部屋には空虚さが溢れている。
別に物がないというわけではない。むしろ物はたくさんある。それでも友人達は空虚だと言い、私自信そう思う。
『この部屋が片付き過ぎてるのも理由の一つなんだろうが、活気がない事のほうが大きいように思えるな。昔活気があったぶん、余計そう感じるんだろう』
友人はそう言った。この言葉はきっと正しいのだろうが、私にはこうも思える。
この部屋が空虚なのは、私の魂の空虚さを反映した結果なのだと。
…理由はともかく、この部屋は訪れて楽しいところでないのは間違いない。だと言うのにこの部屋を訪れる人間は少なくない。
今日も一人の友人が冷たい風の中をわざわざ歩いてやってきた。
まったく、一人暮しの男のところに、女性が何をしにくるというのだ?
嫌々ながらも私はドアを開けた。
「一体何をしにきた?」
私が問い掛けると、彼女はこう答えた。
「匿ってくれない?」
…やはり嫌な予感が的中した。
思ってみれば今は十月、きっと私の幸運の女神も出掛けているのだろう。
このような無駄な事を、私は思わず考えてしまった。