第004話
ギアストーンオンライン、通称”GSO”。
バディロイド所持者が遊べる基本プレイ無料のVRMMOだ。
金策を考えていた俺にアーティが何故このゲームを勧めたのか、その答えは簡単だ。
このゲームで行われるイベントは賞金が貰えるのだ。
もちろんリアルマネー。
前世持ちだとビビるよね、俺はビビった。
GSOを運営しているのは、まさかのアーティ達バディロイドを開発生産している大企業“テラコーポ”。
なので、バディロイド所持者は無料でプレイできるそうな。
さらに事前に調べた結果、このフルダイブ型VRヘッドもこの会社が作ったものらしい。
テラコーポ、マジやばくない?。
フルダイブ型と言うことで、期待値MAXで始めたが、序盤のフロチャは前世のMMOと変わらない。
まずはプレイアバターのカスタマイズ。
それが終わったら、簡単なゲームのチュートリアルをする感じだ。
宇宙空間のような場所でシステム音声的な空間ディスプレイがカスタマイズの手順を案内してくれる。
だが、どうやら容姿のみがカスタマイズできるようだ。
職業やステ振りという項目がない。
流石に気になってシステム音声のウィンドウに話しかけてみる。
「あ、あの……ステ振りとかは?」
『このゲームには従来のそれらはありません。
身体ステータスは本来の体格から自動的に検出されます。
職業についても、貴方の行動如何でいかようにも変化します』
「……それって要するに3メートルの大男になればそれだけ筋力が高いって事?」
『いえ、この世界にも重力があり、人には体重があります。
そのため、例えば150センチメートル、50キログラムのプレイヤーが設定で身長を3メートルにした場合、体重は8倍になり、400キログラムになります。
筋力が比例して上がるとはいえ、それ相応のハンディキャップを背負うことになりますので、ご注意ください』
「……それ、遠回しにやめろって言ってるよね?」
『肯定します。
また、自身の身長、体格とかけ離れた設定を行う場合、相応に“操作感覚のズレ”が生じます。
これは不可避の現象であるため、プレイヤーの皆様には出来るだけ、現実と同じ体格でのカスタマイズを推奨しています』
「推奨って事は、別に禁止はしてないんだな。
どうしよう……変えるか?」
『髪や瞳などの色を変更する以外のカスタマイズを行う場合、最低500円の課金が必要になります』
「はいッ、却下~」
小学生に500円は重い。
俺はサクッとカスタマイズを済ませて、アーティと合流することにした。
ん~……正直ここら辺は前世のMMOの方が自由度があった気がするなぁ。
まぁ、基本無料ならそんなもんか。
「──それは良いんですが……ヒロシ、何ですその怪しい格好は」
始まりの場所である噴水前で、アーティが現実と変わらない見た目で話しかけてきた。
「だって色変更以外容姿変えるには課金が必要だったからさ。
コスチュームは最初の一揃えだけ無料だから、そこで個性を出してみた」
「そこまでコンプレックスを抱いている理由は前に聞きましたが、今世の貴方は別にブ男って訳ではありませんよ?」
「こればっかりは仕方ない。
それにこれカッコいいだろ?」
そう言いながら俺はマントを翻し、悪の首領っぽいポーズを決める。
今の俺は口元だけが辛うじて見えるメタリックな仮面をつけ、真っ黒なフード付きのマントを装備している。
ロボットモノのライバルキャラみたいな仮面を見つけた時はテンションが上がった。
相応に視界が悪いけど、甘んじて受け入れようッ!!
そして、もちろんマントの下は裸ではない。
裸マントとか、俺もそこまで変態じゃない。
ツナギと軍手、工具ベルトに安全靴を装備している。
「ファンタジーならファンタジーで統一しましょうよ」
「実用重視にしたんだよ、マントはただの飾り」
「その仮面は?」
「謎の男感の演出、ロマンだろ?」
「現実でそんな恰好をしてたら警察に呼び止められそうですけどね」
「仮想現実だから良いの。
さて、とりあえずカスタマイズ終わったら放り出されたし、情報収集といきますか」
「経路検索……ご案内します」
「よろしく、アーティ」