第019話
損失分……実際はバディロイドバトル用に開発した武器の実験費用の事だが、残念ながらそれが最近膨れ上がってきている。
実のところ、剣などのギミックのない武器をモデリングするのはさほど難しくない。
ただその分、材質や最終調整……剣の場合は研ぎだな、に時間と費用がかかる。
ほぼ全ての素材が戻ってくるようなゲームデザインであるGSOだが、こういった細かな部分では材料および器具をリアルに消費してしまう点は何と言うかこの変態企業がッ!! と叫び声をあげたくなるレベルである。
ちなみにこのゲームで一番消費する素材は油──潤滑油だ。
しかも品質がピンキリ。
誰がそこまでしろと言った。
また剣などの武器についてはその素材にも問題がある。
ただの鉄で良いのかどうかという問題だ。
無論、強度を追求するなら鋼の方が良いと思う。
ただその分折れやすい、だからなんでそんなにリアリティ追及してるんだよ、このゲーム。
攻略サイトには一応、ハイマンガン鋼板がおすすめされていた。
正直わからんちんなので、書かれているまま作ってみたのは言うまでもない。
そんな手間暇をかけた剣は日の目にも当たらず基地の奥にそっとしまわれている。
他にも色々作ったがやはりそっしま。
そしてなくなる素材と消耗工具たち……。
いつか日の目を見ると良いなぁとか早いノスタルジーに浸りながら浴びる風はいつもよりしみったれているように感じる。
「何遠い目をしてるんですか」
「風が気持ちいいなぁっと思ってさ」
カブのモニタに浮かぶアーティの顔がジト目になっている。
「良いですね~……私はなんだか無駄に働かされている気分です」
「言うな言うな。
試運転も兼ねてるだけだから~ハッハッハ」
「ちょっと殺意が湧いてきました」
マジそうなアーティの声に緩んでいた頭のネジが締まる。
適当ぶっこき過ぎたようだ。
アーティの奴、たまにおっかねぇんだよなぁ。
「すまんすまん。
とりあえず今回で足回りは大丈夫そうだとわかったから、
今度は俺自身が運転できる普通のバイクを作ろうと思ってるんだ。
それで、2人で並走できれば楽しさに倍、輸送量も2ばーい」
尚、自作での内燃機関製作は考えないことにする。
あるといいなぁブループリント。
「そんな危ない事、ヒロシにはさせませんよ」
「い、いやいや……危ないって、ここVRの中だし大丈夫」
別に無茶なことなんてしないし。
乗るまでヘタレていた俺だが、いま乗っている感じだとあんまり自転車と変わらないし、普通の運転ならいけると思うんだけど。
「ダメです。
事故とかダメです」
「か、過保護だなぁ。
ならアーティが俺乗せたままずっと運転って形になるけどいいの?」
「……やぶさかではありません」
「そこまでかよ……」
モンスターに追っかけられてからアーティの母味(過保護ともいう)が上がったように感じるのだが気の所為だろうか。
どうにも、どこへ行くにも一言、どこへ行くのかと問いかけてくる。
そのくせトイレとか言うと塩対応されるし、ほんと何なんだろうね。
「おっ……」
「ヒカルさん達ですね。
停まります?」
「クラクションで良いだろ」
「クラクションと言う名のベルですけどね」
「クラクションのブループリントが討伐クエストの報酬なのが悪い」
そう言いながらチャリベルを鳴らすとヒカルと成瀬さんがこちらを見る。
「やっほー」
そう言いながら俺が通り過ぎるのを目が飛び出るレベルで見ていた二人だったが、見えなくなったところで急に鬼電が来た。
「なにこれ怖い」




