第018話
ちょっとだけ前世の話をしよう。
俺は前世で運転免許を持っていなかった。
田舎は地方だったけど、大学からは都心だったし、必要性を感じなかったからだ。
あと免許って意外と取るのに金がかかるから、貧乏学生だった俺にはかなり縁遠いものだったというところもある。
とはいえ、オープンワールドなゲームで車やバイクをかっ飛ばすのは大好きだ。
現実の運転を知らない分、飛んだり跳ねたり回ったりと無茶な運転して、爆発炎上したのも100や200じゃ多分効かないくらい遊び倒していた。
ではここ、VRMMOではどうだろうか?
はっきり言おう、前世のゲームのような無茶な運転が出来るとは思えない、主に俺の心的な問題で。
慣れれば問題ないのだろうが、この世界は現実味が過ぎるのだ。
現実でジェットコースターすら乗れない人間が耐えられるわけがない。
あれから時たま父親がちらちらと俺の方を見てくるが、正直バイクの後ろにも乗りたくない。
車でのドライブなら付き合うから早く諦めてくれよ父ちゃん。
閑話休題。
どちらにしろ輸送用の乗り物は必要だ。
それはマスト、残念ながらマスト。
と言うことでそんな気弱でセンチメンタルバスな俺の気持ちを込めてお手軽なバイクを作り上げたわけだが、
「どうしてスクーターが出来るかなぁ」
SF風な基地には場違いなバイク、いやスクーター、いやカ〇がちんまりと鎮座している。
モノホンよりボクセルゲーに出てきそうな直線的なデザイン(と言い張る勇気)の見た目をしている。
変則付きでブレーキだってあるし、ちゃんと曲がれる。
大型だと意外と小回りが効かないし。
下町みたいなマップにある小さな家が目的地だったこともあるし、裏道も行けそうな小さなバイクにしようとは思っていたのだ。
「……これが所謂一つの完成形なのだろうか」
「今のヒロシにはお似合いですよ」
「俺もちんまいって事っすかアーティさん」
「あと、もしかして出すけど、これ……私の新しい身体ですか?」
「その通りでございます」
「……どうしてこうなった」
なんだかテンションの低いアーティからギアストーンを外して、座席の○ブにセットする。
ここが一番安全そうだからここにしてみた。
タコメータがあるところはこけたとき、ギアストーンにダイレクトアタックしそうだしね。
「なんだか屈辱的に感じるのですが」
「考えない考えない。
そこがコアの収納場所としては一番安全なんだよね。
さて、試運転も兼ねて損失分取り返しに行くぞぉ」
「了解です。
イグニッション」
ブルンッ……というバイク独特な音は残念ながら出てこない。
タコメータの代わりに取り付けられたモニタが起動画面になり、アーティの顔が浮かぶだけ。
あ、一応電源ボタンも緑色に光っているか。
俺は自作したヘルメットを被りスクーターにまたがる。
「怪しさが増しましたね」
「ヘルメットオンマスクにマントだから仕方ないね」
「フルフェイスにすれば良いのに……」
「それだと面白くないでしょ。
さて、レッツらゴー!!」
「ハァ……ナビゲート開始します」




