第011話
ユニークモンスター──所謂レアポップなレアな敵。
今俺達を追ってきているのは、フィールド上に稀に出現する類のもので、その強さは、周囲の敵とは一線を画する。
レア敵は強敵。
この不文律は世界が変わっても変わらないものらしい。
見た目は蜘蛛型シルエットの大型重機だ。元は伐採用重機だったのか、クレーンではなく、チェーンソーを装備している。
それがキモい動きで、こちらに迫ってくるのは軽くホラゲ要素だ。
通常なら、マシンの速度に子供程度の足で勝てるわけがないのだが、ここは森の中。
木々のおかげでどうにかなっているのが現状だ。
ボカンボカンと景気よく地雷も爆発しているし、バランサーが働き、一瞬だけ動きが鈍くなっているのも俺達にとっては追い風だ。
そう地雷。
もちろん俺が仕掛けたモノじゃない。
トラップタワーと言うのをご存じだろうか?
敵の出現条件を特定して、故意に敵を沸かせて自動的に処理する事で素材なんかを集める方法だ。
要するにこの地雷は自動的に素材を集めるための装置なのだ。
──地雷を仕掛けたそいつにとっては。
ネットの受け売りだが、どうも地雷を仕掛けた奴はこう考えたそうな。
──森に敵が湧くならそこに地雷置けば素材取り放題じゃね?──
と。
そんで、相当数の地雷を勝手に森にばらまいた。
雑ぅ!!
もちろん二次災害が出た。
討伐クエストを受けていたプレイヤーが何人も地雷を踏んでリスポン。
何が起こっているのかわからず、ギルドも調査をしてやっと森中に地雷が仕掛けられている事を突き止めたそうだ。
笑えるのは、敵モブはちゃっかりその地雷を避けていた事。
ばら撒き損。
さらに仕掛けた奴は迷惑料として(ゲーム内で)膨大な借金を負わせられ、もうこのゲームをしていないという。
闇討ちされたっていう噂もあるが定かじゃない。
後に残ったのは地雷の残った森と、ギルドに常設されている報酬が少なく、マズ味と評判の地雷撤去依頼だけだそうな。
そんな背景が絡み、実のところ、背後のユニークモンスターはレア度が増していたりする。
特にドロップするレア装備はユニークだけあってこいつしか落とさず、コレクターに人気なのだとか。
本当に……本当になんでそんな奴を擦り付けるかなぁッ?!
なすりつけとは、所謂プレイヤーキラーの古典手法だ。
強い敵を釣って適当なプレイヤーになすりつける行為、相手は死ぬ。
所謂迷惑行為に該当するものなのだが、これが故意なのか事故なのかは正直判別が難しい。
今回もそうだ。
このユニークモンスターはレアな敵、ドロップ品はおいしい。
でも、何となく擦り付けてきた奴の顔が笑ってた気がするんだよ。
それが引っかかってどうしても擦り付けに思えてくるッ!!
今回、俺達は遠出をしたとはいえ、こんな死の森の中を突っ切ったりはしていない。
ホッホとランニングしながら整備された森にほど近い道路を移動していただけなのだ。
本来ならユニークモンスターどころか、通常の敵モブとも遭遇しないはずなのに……。
「また有り金全部溶かすのはいやじゃぁあああああッ!!」
「関節損耗率18%。
どうやら膝のオイル差しが足りなかったようです」
「リアルすぎぃいああああ」
こんな時に整備の甘い部分が出てくるとか、呪われてるのかッ?!
もう、中学生っぽいあいつらがどうして道に出てきたのかはどうでもいいッ!!
とにかく生き残る術を探さねば……ッ。