第001話
新連載です
まったり更新
時は近未来、ロボティクスが発達した世界に転生した俺は、10歳の誕生日に相棒ロボット、バディロイドをプレゼントされた。
前世持ちの影響で遠慮をする子供な俺を心配しての事だった。
断じて友達が居なくて心配されたわけでは無い……と思いたい。
バディロイドは学校でも6人に1人が持っている玩具だ。
大人でも持っている人がいるらしい。
大きいお友達と言うのはこの世界でも健在なようだ。
──そう思っていたんだが、どうもこのバディロイド、思った以上に凄い事に気が付いた。
なんというか、人工知能とは思えないくらい、人間臭い。
寝坊すると、頭に洗面器(偶に中身入り)を落とされるし、美術館でも自分なりの感性を持ち、俺と感想を共有したがる。
ちなみに俺のバディロイド“アーティ”は明るい色使いが好きなようで、構図にも楽しそうな、躍動感があるものが好きであるらしい。
気になってバディロイドを持っているクラスメイトにも聞いてみたら、彼のバディロイドはゲームが好きらしく、特に対戦ゲームでは友達なくすレベルで煽ってくるらしい。
──どんなAIだ。
そんな感じでバディロイドにはそれぞれ個性と言うものがあるらしい。
前世の記憶に引っ張られていたが、この世界のAIはかなり高度なようだ。
そんなに高度ならば、と、変な気を起こしてしまった俺は、自らの最大の秘密“異世界からの転生者である”という、荒唐無稽な事実を雑談がてら話してみた。
どうせ玩具だ。
誰かに話すことも無いだろうから、心配もないだろう。
『なるほど、つまりヒロシは自分を転生者だと言うのですね』
女性の声に聞こえる機械音声でそう俺に話しかけてきたのは、誕生日に俺に送られた件のバディロイド【アーティ】だ。
外見はどう見ても白い小型ドローン。
ちょっと角が丸いデザインで、一見可愛らしくもある。
喋るとセンサーが明滅するのが少し面白い。
理解を示そうとしているところもちょっと意外だった。
『もう一度言ってください』攻撃をされるものだと思ってたし。
「そうだね。
ま、信じなくても良いよ」
『前世での年齢は?』
「25歳。
どこにでもいる経理担当のサラリーマン」
『お堅い職業ですね』
「まぁね」
『検証が必要です。
今から高等程度の問題を出します。
数学は得意ですか?』
少々挑発的な物言いのような気がする。
──AIが挑発? まさかね。
とはいえ、出された問題をサクッと解いたらドヤってみるかな?
「得意だぞ?
この世界は前世とそんなに違わないし、それなりに出来ると思うよ」
サビついてなきゃね。
『ではいきます』
そういうと、アーティはアイカメラから問題を投影して俺に見せる。
プロジェクターとしても機能するのか、そのカメラ。
どんなトンデモ技術なんだろう。
そんな事を考えながら、俺はアーティに出された問題を解いていく。
高等学校程度と言っていたが、実際に出されたのは中学相当だ。
それに難なく答えていくと、徐々に問題が難しくなる。
どうやら、俺の一世一代の告白は信じてもらえなかったようだ。
ちょっとセンチメンタルジャーニーな気持ちになったので、本気で取り組もう。
大体いつものテスト程度の問題数をこなした答案をカメラに捉えながらアーティは言う
『全問正解です。
最終問題は大学入試問題を出しましたが、少しつかえただけで、解いてしまいましたね。
正直、認めたくありませんが、数学は発想と解法の蓄積です。
普通10歳でそんな問題は解けませんので、貴方の言うことを信じる事にします。
──とても不本意ですが』
バディロイドは機械音声なのに、少し悔しさをにじませた声色だと思ったのは気のせいだろうか。
どちらにしろ気分がいい。
俺は、今世紀最大のドヤ顔をドローン相手に決めていた。
表情もないのに、声も上げずにセンサーを明滅させる姿は、何故か俺の目にはドローンが地団駄を踏んでいるように見えたのだった。
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