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1.最初の接触(Salut)

ある人は言った。

 無駄なことだ、と。


ある人は言った。

 余計なことだ、と。


ある人は言った。

 ありがとう、と。


***


「最悪だ…」


 少年がこの地に降り立ち、最初に嘆いた言葉であった。


 西暦2×××年。世界は何度か世界大戦を行った後だ。

 大勢の犠牲者が出て、多くの国が滅んだ。それは途上国や小国に限らない。

 少年が誤って降りたこの土地も、以前は先進国とされていた国であったのだ。

 

 大戦の切掛けは、この国が原因の一つでもあった。

 悪霊――鬼――少年の国では『Légion』と呼んでいた――となるのが、東アジアの東洋人が多かったためだ。理性の無い暴徒化した彼らを斃すという「正義」の名のもとに、この大地に再び爆弾は落とされた。

 国は文字通り、いくつにも物理的に別れ、人々も国を捨てて散り散りとなる。

 もうこの国の名前を憶えている若い世代は居ないのかもしれない。

 少年がこの地を知っていたのは、母方の遠い親戚が、正にその捨てた人であったから。


 少年は再び辺りを見渡した。ぐるりと一回転(ピケ)するが、一つに結んでいた髪が遠心力で大きく振られるため、よろめきながら止まる。そして再び大きな溜息を吐いた。


「ああ、あれは絶対『Fuji』だよな…どう見てもHōeiだ」


 聞かされていた山の特徴とその美しさ。

 だが、お目にかかりたくはなかった。


 この地は穢れている。


 それが、世界の共通認識であったからだ。勿論、大戦で落とされた爆弾のせいではない。

 『悪霊(Légion)』が多く発生した土地の一つだ。だからきっと、『吸血鬼(vampire)』や『食人鬼(zombi)』も、ここからは発生したのだと、みんな言う。


「まあ、それは違うと思うんだけど」


 少年は独り言を続けた。

 その時であった。


「ううん、アレは『Fuji』で合っているよ?」


 彼の背後から、突然声を掛けられた。

 先ほど、一周辺りを見回したのに、少年は全く別の人間の存在には気が付かなかった。

 まさか――本当に――『悪霊(Légion)』!?


 少年が真っ青な顔をしながら、慌てて振り返ると、そこに居たのは悪霊(Légion)ではない。

 金髪翠眼の絶世の美と言っても差し支えない程の、美しい子供が立っていた。


「こんにちは。わたしは『ミドル』。君は、なぜこの地に居るの?」


「……それはこっちの台詞だ。この呪われた地に、なんで人が居る」


「呪われた地? ……ああ、『門』が開いたから?」


「『門』?」


 美しい子供の笑顔に、何故か少年は反感を抱いてしまった。自分よりも明らかに年下であるのに、その態度と対応がまるで遥か大人のように感じたからか。否、この地に自分以外の人が降り立っていたことが信じられなかったのだろう。しかし、子供から考えもしない(門という)単語が飛び出し、話を続けてしまった。


「そう『門』。最初に開いたのは五百年以上前――その『門』は開いた人の命と引き換えに閉じられたのだけれど、開いたことにより…この地はとくに『門』が開きやすい環境となった。わたしは、その『門』たちを閉じるために、世界を旅しているんだ。それで、なぜ君は、こんなところに居るんだい? French?」

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