鑑定結果はいかに?
「ノエミ様、こちらを見ていただけますか?」
エラン様がそう言うとノエミ様は我に返って立ち上がりこちらに近づいてきた。
…と共に顔色が悪い。
少し血の気が引いて白い。
貧血かな?
アミュティリス石に近づけば近づくほどノエミ様の瞳から気力を感じなくなった。
すぐ近くまで行くと、アミュティリス石を見ているというよりは虚空を見つめるように虚ろだった。
「あの、大丈夫ですか?」
私が思わず声をかけるとこちらを向いて呟いた。
「…どうなってるの?」
私が首を傾げるとエラン様が答えた。
「それはアミュティリス石がこんなにあることに…ですか?それとも…」
「全部よ!?あの結界は完璧だし、結界の中にさらに自分を守る結界がある。
魔力の塊の人形が出した魔力の物体が結界が無くなるとちゃんと触れられる物質になる。
そして、その箱!得体がしれない。
私のよくわからない力を感じる。
そして、おそらく、それはその力のほんの一部なのよ…ありえない…アミュティリス石をこんなに収納できるなんて…」
ノエミ様は早口でまくし立てた。
それと共にだんだん顔色が戻ってきて最終頬を染めてアミュティリス石を見つめていた。
「…美しい…」
なんかこの反応デジャブ…
「ノエミ様はセスの母方の叔母に当たるんだよ。」
とエラン様がボソッと耳打ちした。
なるほどー。
遺伝て怖い。
「ノエミ様、鑑定をお願いします。」
「あ!…そうね。鑑定しましょうね。」
ノエミ様は目をキラキラさせたまま助手の男性に荷物を持ってこさせると手袋とルーペを取り出し石を一つ一つ見つめていた。
助手に何か伝えると助手は手のひら大くらいの木札に何やら書き込んで並べ直された石の前に置いていった。
一通り石と木札がセットにされると、今度はバックの中から天秤を取り出した。
手で吊り下げるタイプで、助手が持ち上げると皿の均等が取れた。
それを確認すると一度机に皿を乗せた。
そこに分銅なのか金属の塊を片方に乗せる。
そしてもう片方にアミュティリス石を乗せる。
少し浮かして見ると一向に石が浮かないくらい、全然石の方が重い。
それを見て一番大きな分銅を乗せた。
そこからどんどん分銅は増えていった。
試行錯誤してどうやら分銅とアミュティリス石が釣り合うところを見つけたようだが、見た感じ分銅の量がエグい。
分銅箱の一番大きいのから2つが乗ってる。
「…えっと…」
ノエミ様が苦笑いしながら分銅を何度か数えている。
この世界の重さの単位はよくわからないけど、一般的な硬いパン一つの大きさが大体決まってるから、パン一つを作れる小麦の量がよく重さの基準にされる。
あとは銅貨の重さとかで見たりね。
でも、パンは店によって違うこともあるし、銅貨も重さが違う気がする。
錆びて重くなっていたり、すり減ったり、そもそも製造時点で失敗したのかな?ってのもあったりする。
それだけ文化が未発達ってことなんだろうか…。
「これで、1ウィール64オノールですね。しかも最上級品質です。」
「なんと!それで1ウィール以上もあるのか?そんな大きさのアミュティリス石は献上ものだぞ。」
「そうですね。最初に見たときから献上ものだとは思ってましたけどね」
ノエミ様は少し顔色が悪いが、それを聞いたマルティーナ様は逆に興奮して紅潮している。
そんなにすごいものなのか?
献上ものって皇帝に献上するってことかな?
「『あの、ウィールとかオノールって日本だとどのくらいの重さですか?』」
私はアドル老師に耳打ちした。
「『あぁ、1ウィールは250グラム1オノールは2.5グラム。
つまり100オノールで1ウィールになる。おそらく基準はウィールなんだけど、小銅貨の重さがその100分の1の重さに設定されてて1オノールになってるのかな。
小銅貨って1セントくらいの重さってことだね。個体差はあるけど。』」
「『それスキルでわかったんですか?』」
「『うん、理解するっていうスキルだから自分の前世の知識と照らし合わせてくれるんだよね。』」
「『便利ですね』」
「『まぁね。でもセイラちゃんの力のほうが影響大きそうだね』」
アドル老師はハハハッと気軽な感じで笑っている。
ってことは410グラムってことか…。
…え?結構な量だね。
500より小さめのペットボトルとかあったけど、そのくらいの重さくらいかな。
なるほど。
私達のやり取りを横目でみながらノエミ様は木札にペンを滑らせたあと、次々とアミュティリス石の重さを測る。
2個目からは重さを言わずにどんどん木札に記入していったし、最後の頃には分銅はあまり降ろさなかった。
左から始めて右端まで重さを測りきったノエミ様の顔色は血の気がすっかり引いていた。
申し訳ない。
「終わりました。はじめのものから164オノール、145、176、167、132、191、156、118となりました。いずれも最上級品質です。」
ノエミ様の表情は真顔で声は少し弱い。
つまり死んだような目だった。
ほんとごめんなさい。
全体的に数値が100から200の間ということは、スキルで認識する量が250グラム以上ってことなのかな。
この世界で言う1ウィール以上になると認識されて、2ウィールになると2つに分けられるのかも。
「そんな…すべて献上級…なんて…」
さっきまで大興奮だったマルティーナ様の顔が真っ青だった。
「この城が買えてしまえますわね…」
そう呟いたのはリリー様だった。
不安そうな表情に見えるものの、特にリリー様は顔色を変えずに言った。
「リ!…リリー!?」
マルティーナ様がリリー様の口元を手で覆った。
確かに目がくらむほどの額になりそうだけど、喩えではなさそうだな。
リリー様もマルティーナ様も正直なお方なんだろうな。
ノエミ様は表情を作っているのか少し微笑して白っぽい顔で私に目線を合わせた。
「申し訳ございません。すべてを今買い取ることは我が領では難しいようです。一番良いものを一つ、大金貨、もしくはそれ相当の物、土地、待遇として交換させていただくということでよろしいでしょうか?それ以外は追々ということで…」
目つきが少々鋭い。
「あ、はい!あの無理なさらないでください。別に金銭的に困ってるわけではありませんし、安全な場所に閉まっておけますしね。」
私はその眼力に押されたわけではないが、そう答えるとノエミ様がほっとした様子だった。
後ろのマルティーナ様とリリー様もほっとしている。
アドル老師とエラン様は私がそのようなことを言うと思ってたんだろうな。
静かにニヤニヤ笑ってる。
ちょっと恥ずかしくて視線をそらした。
信用されてるんだな。
その後ノエミ様が提示したのは191オノールのものを764枚の大金貨相当に交換ということだった。
額がでかすぎて実感がわかない。
まって大金貨って5万円くらいの価値だったよね…
えっと…3820万円くらいか…
3000万!?
家買えるじゃん!?
頭がパンクしそうだったので私がアドル老師とエラン様を見るとアドル老師が私に近づいてきてこう言った。
「『あの郊外の屋敷、ベレファ邸をもらったら?』」
私がアドル老師を見るといたずらっ子っぽい表情を老人の顔に貼り付けていた。
思惑通りっぽすぎて嫌だけど、言うとおりにしておくか。
「あの、郊外にあるベレファ邸はおいくらでしょうか?」
「ベレファ邸?あのようないわく付き買うものなどほとんどおりませんので値段はなんとも…。アレッサンドロに確認すれば良いと申すでしょうが、本当によろしいのですか?」
「あ、はい。あとちょっと羊とかの家畜もほしいんですけど…」
それにしても曰くってなんだ。
事故物件か?
現世ではホラー好きだったから興味はあるんだけど…。
「ベレファ邸の件が片づけば家畜はすぐに手配できるかと思います。では確認してお返事させていただきます。こちらのアミュティリス石は先にお預かりしてもよろしいでしょうか?我々で大切に保管させていただきます。」
「はい。」
そんなやり取りをすると助手の男性がサラサラとインクで木札に何かを書き記し、ノエミ様が左の親指に付けていた指輪を取り木札に押し付けた。
まるで焼印のように木札に黒い焦げが付いた。
「こちらは仮の証書です。ノエミ様の魔力の印が押されていますので安心してお待ち下さい。」
魔力の印とは?
「ではマルティーナ様、リリー様手続きしなければなりませんので失礼いたします。」
「毎度、毎度済まないな。ノエミ。」
「いえ…。では。」
マルティーナ様はニコリと笑ってノエミ様を見送るとノエミ様もニコリと笑って去っていった。
よかった。
無事買い取りはしてもらえそうだね。
他のものまで出さなくてよかったや。
さて、アミュティリス石と出したものを回収っと。
私は展開してすべてをサッと撤去してコンバートした。




