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能力の名はサンドボックス  作者: soumamumu
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金銭感覚

城の近くの厩舎に直接馬を繋ぎに行くとすぐに厩舎番が出てきて流れるように馬を預けると私はエラン様にエスコートされ城へ向かった。

そんなに距離はないけど、歩いていると後ろから駆け足で誰かが来た。

エラン様が私の位置から一瞬その人の間に入ったけれど、すぐにどいた。

来たのはアドル老師とライザだったようだ。


「そろそろ来るかなと待ってたんだよね。」

「アドル老師、おはようございます。」

「おはよう。アミュティリス石の買い取り同席していいよね?」

挨拶は私達にしたようだけど同席の件はエラン様を見ていった。

そのエラン様は少し苦笑いをしてうなずいた。

「来ると思ってましたよ。」

それを聞いて老師が歩きながらというような仕草をして少しゆったりと話しながら歩き出した。

「だって久しぶりじゃない?大物の買い取りは!」

「そうですね、いつぶりか…一年くらい前ですかね。」

「小物はちょくちょくあるけど、大アミュティリス硬貨になるような大きさはあまりないもんね。」

大アミュティリス硬貨とは?

アミュティリス石って貨幣になるのか。

私が不思議な顔をしていると、アドル老師が気がついた。

「アミュティリス石は金貨の上の貨幣として使われているんだよ。小アミュティリス硬貨は大きな取引で貴族や大棚の商家で使われるけど、大は主に領主間とかでしか使われないから、証書のような役割があるよ。イメージ的には『100万円』くらいの価値かな…。あれ?日本の『100万円』って言うほど大金ではない気がするね。」

アドル老師は思い出すように話している。

「確かに、『100万』って大金だけど…『私の年収が400万くらいだったしなぁ…』」

「『400万?少なくない?』」

「『アラサー女子の総合職なんてそんなもんですよ。』」

「『そうなのか…まぁともかく、文明が発達してる割に紙の入手が難しく、紙幣がまだないので、全部硬貨だからね。アミュティリス硬貨は持ち運びしやすいように作られたみたいだよ。』」

「『持ち運びですか。確かに遠いとこまで行くとなると持ち物が増えますしね。嵩張らない方がいい。』」

「『小金貨100枚や大金貨20枚よりはアミュティリス硬貨一枚のが旅は楽だからね。アミュティリス硬貨はそれぞれ発行された領の名と番号がふられるし、貨幣でないアミュティリス石の買い取りは領主の城でしかしてはいけない決まりになってるから、盗まれた場合使うことができない。あと、その信用度を上げるために基本的に市井には広まらないように制限をかけている。』」

「『へぇ…だから証書のようなものって言ったんですね。』」

「『まぁ、そもそも大アミュティリスが発行できるほどのアミュティリス石があんまり出てこないからね。だからセイラちゃんは大金持ちだよね。』」

私とアドル老師が日本語で笑っているとエラン様が羨ましそうにアドル老師の向こうから覗いてきていた。

意外とかまってちゃんだよなぁ。

だからと言って話に口を挟むわけでもなく何話してるのかな?って顔をする。


かわいいイケメンだ。


「アミュティリス硬貨について話してたんですよ。日本では成人して働いていたのでその時の金銭感覚と擦り合せしてました。」

エラン様がなるほどとニコリとしたところで城の扉のところに着いた。

着くとすぐに門番が扉を開いてくれた。


中に入ると以前と特に変わりはなかったけれど、向かう場所は違った。

一階の奥のメジャーがあるところに向かう途中の右側の部屋に通された。

入り口から随分近いな。

中に入ると役所のロビーを少し狭くしたような雰囲気で、部屋の真ん中あたりに腰辺りの高さのカウンターがある。

その上には何やら魔法陣が書かれた機械が置かれており、その周りに筆記用具なんかもある。

カウンターの壁側には木札が積まれている。

エラン様がその魔法陣の前あたりに向かい、声をかけた。

「誰かいるか?」

そのカウンターの向こうには椅子が数脚あるが誰もいなく、その代わりに奥の右端にドアがある。


ーガチャ…


そのドアが開かれ出てきたのは妖艶な雰囲気のある美人な女性だった。

年齢がわからない。

シックな紫のワンピースを着ている。

うん、ドレスというよりはワンピースかな。


黒に近い紫の髪に濃いグレーの瞳だ。

艶やな紫の髪はクルクルと縦巻きロールを少し崩したような感じにウェーブしているがキューティクルが輝いている。

特に縛ったりはしていないが髪飾りをつけている。


この世界の人達は稀に石鹸で髪を洗ったりするが、シャンプーはないので髪がギシギシなのだ。

私も髪はギシギシだ。


そういえば、エラン様や貴族の人達は髪きれいだな。

いい匂いするし精油かなんか使ってるのかも。


と、私がその女性の美しさに感嘆していると横にいたエラン様の喉がなった。

「ノエミ様、失礼しました。あの…まさかですが、今日の鑑定は…」

エラン様、少し緊張してる?

「ふふ…エラン、隠さずとも良いのに。今日は特別に私が担当させていただきます。そちらが、例の二人目の契約者の少女ですね。」

エラン様から私に注がれた視線が鋭い。

顔は笑っているけれど目は私を品定めするような視線を送ってくる。

どんな立場の人かわからなくて…どうしましょう!

私が冷や汗を流しているとアドル老師が耳打ちしてくれた。

「『領主の3番目の奥さんのノエミ様だよ。エラン様の義母だね。仲が悪いわけではないけど、観察眼のスキルですぐ嘘がバレるから皆、話すときに気を使ってる。』」

ってことは偉い人じゃん!


「えっと、お初にお目にかかります。セイラ・トールゲンと申します。」

私は緊張して拙いカーテシーをして自己紹介した。

「あらあら、ごめんなさいね。私はノエミ・ルムルムナ、先程アドル老師から聞いたかもしれないけれどアレッサンドロの3番目の妻よ。エランは血は繋がってないけれど、本当の息子だと思ってるの。エランのことよろしくね。」

ノエミ様はカーテシーを軽く返してニコリと笑って話してくれた。

なんだ、別に怖い人ではないのか。


それにしてもエランのことよろしくとは?

「あの、エラン様には本当に良くしていただいています。お世話になっております。ありがとうございます。」

私は思わずペコペコと頭を下げた。

「あらあら、アドル老師と同じ仕草…ふふ。」

ノエミ様はペコペコ会釈する私を見てクスクス笑っていた。

恥ずかしい。

日本人の癖って恐ろしいな。


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