馬で城まで送迎
翌日、エラン様はいつもより少し遅くついた。
一人で来たようだ。
と言ってもそんなに遅くはなかったけれど。
なぜそれを特出して言うかというと、ネイに見られたかもしれないからだ。
ネイの家は停留所に行く道が2通りあって一つがアリンの家の前を通る方、もう一つはうちの前を通る方だ。
で、タイミングよくネイの家の方向から向かってくるのが一瞬見えたのだ。
ネイの緑の髪がね…。
目があったわけではなかったのだけど、馬には気がついただろうなぁ。
イルカはいなかったようだけど、影に隠れてたのかな。
あの子は臆病だからいつもと違う音がすると隠れる癖がある。
うちの周りの道沿いはうちに勤めてる商会の社員が住んでいる住居がそれなりにあるから結構ごちゃごちゃしてて物陰は結構ある。
あの小さなイルカてはパッと見どこに隠れたかは判断つかないなぁ。
いずれ能力についてはバレる日は来るだろうけども、すでに関係性が揺らぎそうな立場にいるな私は。
前世地味でブラック企業に勤めてたせいで、社会人になってからはあまり友達と遊ぶ機会は少なかった。
大切にしたいんだけどなぁ。
馬に乗りながら私は悶々としていた。
「どうかした?」
途中三の壁の関所を抜ける手前あたりで徐行してエラン様が聞いてきた。
「いえ、家を出るときに友人に見られた気がして…」
「そうか…。」
エラン様は言葉を発するかどうか考えているようだった。
頬は少し笑みを残しているが、複雑な表情をしている。
「気にしないでください。仲のいい友人だし、そのうち簡単に話さなきゃいけなくはなると思うので…」
「なんだか申し訳ないね。」
「いえ、私がこの世界に来てしまった影響なのでエラン様のせいではないですしね。」
その言葉を聞いたエラン様は苦笑いを返した。
その間も馬は歩いていたのでそこで、門番の前まで来た。
「エラン様…どうぞ!」
関所の番の者が見てすぐに顔パスで入れた。
なので、馬から降りることなく、徐行で進み、街の中は早足くらいのスピードで通行する。
三の壁内は案外馬や馬車が行き来しているので、我々が目立つことはそんなにない。
エラン様は壁通過後にバックから紺色のフード付きマントを出して私に被せていたので、エラン様本人もマントのフードを被った。
でも、エラン様、あなたのマント、目立つと思います。
鮮やかな紫色の高貴な色のマントだ。
そうそうつけてる人はいない。
そこまで目立たないかもしれないけれど、多少見られることはあった。
パカラパカラと馬を歩ませ、ニの壁についた。三の壁から城の門まではほぼ直線で大通りで繋がっている。
これでは簡単に城に入られてしまうと思われるかもしれないが、この世界は魔法があるので、どちらかというと早く兵を移動できる方が良いんだろうな。
まぁ、戦いにくわしくないからよくはわからないけど、空を飛ぶのは困難でも遠投魔法はあるから物理的な壁より魔法障壁とか結界のが重要になるのかもね。
ニの壁もやっぱり顔パスだ。
貴族街を進む。
貴族街はあまり人が出歩いていない。
家と家の間が広く、屋敷の庭が広いので人の気配がそもそもあまりしない。
時々馬車とすれ違う。
そして、一の壁の門に付くとさすがにエラン様も通行証のドッグタグのようなものを出したがほぼ顔パスのようだ。
「そちらの方は?」
私はフードを外そうとしたがエラン様が頭を優しくナデナデしながら「大切な人だ」と笑顔で言った。
ちなみに最近はずっと前に乗せられているからまるで抱きしめられているような体制だ。
あっついよー
「左様でございますか。」
何か兵士に生暖かい目で見られている。
ち、違います。
エラン様の大切な人というのは領主家にとっての契約者だという意味で!
と言えるわけもなく、口をモゴモゴと動かすだけだった。
そこからは門番の兵士に見守られつつ城へ向かった。
恥ずかしい。




