マネー マネー マネー
一応毎日の馬車代くらいのお小遣いはもらっているけど微々たるものだ。
大体馬車が一度乗ると小銅貨5枚くらい。普通のパン一つ分…
普通のパンって言ってもコッペパンくらいの大きさのパサパサの硬いパンなんだけど。
それが、日本円だと50円くらいの感じなのかな。
もらえるのは月小銀貨2枚くらい…
あれ?馬車毎日は乗れないな。
小銅貨10が大銅貨1枚で大体100円、大銅貨10枚が小銀貨一枚で大体千円くらいの感覚。
一往復で大銅貨一枚必要なんだけど、20日分くらいしかないや。
まぁ、周回馬車は通学証明があれば無料で乗れるんだけどね。
普段乗ってるときの御者は私達が学生だってわかってるから聞きもしないし、領主から最低限の給料を貰っているらしい。
で、たまに乗ってくる村人なんかからもらう運賃はそのまま御者の懐に入る。
とは言っても馬の背話代とか馬車の整備費もあるから裕福な仕事ではないみたいだけど、最低限保証されているから農家よりは良いとされている。
最初の頃、御者の人には物珍しさからアリンとネイで質問攻めにした気がする。
色々聞いたけど、そこは割愛する。
ってなわけで、私は滅多にお小遣いを使わないので溜まっているのだけど、ほぼ何もお金を持たずに学校に来る子もいるので、そこそこお金は持っているのだ。
今も小銀貨一枚分くらいはバックに入れている。
そんなそこそこ裕福な私でもこれからの生活でもっと必要になるかもしれないので、もらえるものならもらっておきたいよね。
私は色々頭の中で考えていたらクッキーがいつの間にか無くなっていた。
しまった。
また無意識に食べてしまった。
前世の名残で、流し込むように食べるクセがついてる。
前世では仕事が忙しくて味わって食べる余裕なんかなかったから。
気をつけよう。
でも口の中の美味しい風味を最後に味わえたし、まぁいいとしよう。
そこからエラン様は再び外に仕事に行き、私は裏庭で作業をした。
アドル老師はその結界に出たり入ったりモヤを観察したり屋敷を見て回ったりしていた。
一回コンバートした頃に屋敷全体を何かの魔法が覆って水に包まれたようになり、終わる頃にはまるっきり煤が消えていた。
たぶん浄化魔法を使ったんだろうな。
そういえば、ここ、庭の整理が終わったら、どうするんだろう?
そんなこんなで、私は裏庭の残り3分の2もあっという間に終わらせた。
時刻は6の鐘、16時過ぎになった頃だった。
最終コンバートをし、倉庫に行き荷物整理をしてたけど、足りなくなってちょっと拡張した。
とにかく木材ばっかりだ。
別にご丁寧に全部とっておかなくてもいいのかもしれないけど、実際の世界ならばいくらでも利用価値はあるのかもしれないと捨てられずにいる。
だって木材でだって売れるし、木のボールでも木炭でも売れるし、椅子とか机も作れるしね。
ガッポガッポだよ。
笑いが止まらないレベルで。
ということで、とりあえず、みんな倉庫に保管っと。
整理を終えたら今度は木のボールをいくつか作り、砂糖を取り出した。
表側に行き、チェストにそれらを入れておいた。
そういえば、後で姉様にもあげなきゃなとサトウキビから作ってマコトちゃんにも持たせておいた。
ついでにアミュティリス石とトルー鉱石もチェストに入れておく。
これいくら位になるのか確認したい。
「アドル老師!」
私は姿の見えないアドル老師を呼んだ。
外からでは反応はない。
屋敷の中に入り横道を入り、何度か呼びかけをすると返事が返ってきた。
「今いくよー!外で待っててー!」
私はそれを聞いて外に出て、表側で一セットだけボールに砂糖を出したものを用意した頃にアドル老師は戻ってきた。
「すまない。思ったよりも屋敷が広くて色々見てたんだよ。お…」
アドル老師は来るや否や目が砂糖に釘付けになった。
「すごい白いねぇ。いや、日本だと『上白糖』は当たり前だったけど、こっちでこんなに白いのはないからびっくりしたよ。これは値が貼るねぇ。」
と、言いながら懐をガサガサと弄りローブの内ポケットから小さな巾着を出した。
この国では紙幣はないから全部硬貨だ。
大体の人が財布は巾着か、バックの内ポケットなんかにちょこっと入れるような感じだ。
中にはそこに入れてるの?っていう肌着の中に入れ込んでいる人も見かける。
よくあるのはベルトの内側に隠しポケットをつけている人がいるのだ。
大きな犯罪は少ないけど、スリなんかは結構いるらしい。
アドル老師は机にドサッと巾着を置くと不用心に硬貨をそこに出し始めた。
「こんなもんかな?」
そう言って並べられたのは小金貨1枚と大銀貨1枚だった。
ちなみに銀貨と金貨は銅貨と違う計算になる。
小銀貨5枚で大銀貨1枚 大銀貨2枚で小金貨1枚、小金貨5枚で大金貨1枚になる。
大銀貨と大金貨は硬貨が嵩張ったり取り出すのが面倒なので小銀貨と小金貨が作られた数十年後に考案されたということを聞いたことがある。
日本円と比較するとこんな感じになるかな。
あくまで感覚だけどね。
小銅貨 10円くらい
大銅貨 100円くらい
小銀貨 千円くらい
大銀貨 5千円くらい
小金貨 一万円くらい
大金貨 5万円くらい
ちなみにこれ以上の硬貨も存在するらしいけど、庶民には触れることも滅多にないので覚えなくても良いと学校では教えてくれなかった。
というのも教師が見たことないというので。
そりゃこの単位で行くと1枚10万円とか百万円とかの硬貨ってことだもんね。
ところでなんで砂糖一山に小金貨1枚と大銀貨1枚も出してるのかな?
「あの、多すぎません?私の感覚では小金貨って『一万円』くらいで、大銀貨は『五千円』くらいの感覚なんですけど。」
「ぼくも同じ感覚だよ。」
「…」
待て待て、同じ感覚でなぜ1万5千円も500グラムほどの上白糖に払うのだ!
私は硬貨を見ながら固まった。
「セイラちゃんはこっちの市井で砂糖を見たことある?」
そういえば無いかも…。
「こっちの砂糖はこのくらいの量で黒砂糖のような色味で、大銀貨1枚分くらいだからね。まぁ、つまり『五千円』くらいなわけだけど。こんな真っ白な砂糖はこの国には存在しないんだよ。」
「存在しない?」
「南の国ならもしかしたらあるのかもしれないけど、この国に入ってくるのはみんな『黒砂糖』だね。見たことない人からしたら『上白糖』は相当価値があるものだと思うよ。3倍くらいと見ていいと思う。あとこの木のボールもきれいに作られているから小銀貨1枚程度の価値はあると思うから、それをプラスしてもいい。」
そう言って小銀貨一枚をコトっとそこに置いた。
日本だと価値が逆転する。
日本だと上白糖500グラムが約200円程度だけど、木のボールは案外高い。
とは言っても千円くらいだったと思うから木のボールの方が正常か。
まぁ、市井で買うと木の皿は大銅貨数枚で買える値段だ。
田舎の庶民は自分で作ったりもするし、それを売ったりして小遣い稼ぎをする人も多い。
それより高いのは蔓や木の皮で作ったカゴやザルなんかだ。
それもそんなには高くないが、行っても小銀貨一枚程度。
普段着る服は小銀貨2、3枚程度で、庶民の小綺麗な正装のような服はそこから小金貨一枚程度。
私の服は 上が大銀貨一枚、下が、大銀貨一枚と小銀貨ニ枚くらいだ。
母曰く、紺に染めると高くつくとか。
藍染と同じで、防虫効果があるんだって。
シャツの方が作るのはめんどくさそうだけど、スカートのが高い。
まぁ、それはともかく上白糖にそんな価値があったとは。
どうりで、メリーさんが変な顔してたわけだ。
「あの、ボール代はいいので…それと小金貨一枚でいいです。」
「まぁ、ボール代はいいとして、これは受け取って。」
私の前に小金貨と大銀貨がスライドされて来た。
「『いやいや…』」
「『いやいやいや…』」
私とアドル老師は笑顔で大銀貨を押し付けあっていた。
「何してるの?」
その時、エラン様が横からヒョコッと現れた。
びっくりして手を引いた瞬間にアドル老師は私の前に大銀貨を置いて、素早く巾着をしまった。
やられた。
「あ、砂糖の値段交渉?この精製された砂糖でこの量なら小金貨2枚くらいかな」
そういったのはエラン様だった。
「えぇ!?」
私はびっくりした。
アドル老師よりも高くつけた。
「僕は1と半小金貨とつけました。」
「私は小金貨1枚でも高いかと」
「えー!アドル老師はともかくセイラちゃん安すぎだよ。ほんとに商人の子?」
う!
商人の子って言ったって、砂糖はうちではあまり扱ってないしほとんど見たことなかったからわからないよ!
しかも前世で砂糖は普通に手に入るし。
物価は結構上下激しいし、文化の違いや品質でもかなり物の値段は変わる。
「と、とにかく、今日は間取ってアドル老師の値段でいいとします。」
私はちょっと赤面しつつ硬貨をバックに入れた。
思い出したけど、アミュティリス石とトルー鉱石も値段見てもらいたかったんだよね。
私はチェストからそれぞれひとつずつ取り出してきた。
「アミュティリス石とトルー鉱石っていくら位ですか?ここにあるんですけど、確認したくて。」
私は顕現する前にキューブを持ったまま二人に聞いた。
「うーん、質と量によるからなぁ。
トルー鉱石は小銅貨くらいのサイズで小銀貨一枚とかで安いけど、アミュティリス石は同じくらいのサイズでそこそこの質なら大金貨二枚分くらいだね。」
答えたのはエラン様だ。
「だ!大金貨2枚!?」
私は目をひん剥いて驚いた。
私は大金貨を見たことがない。
日本円で5万くらいってことは10万くらいか。
私は親に貯めてた小銀貨を増えすぎたから小金貨に変えてもらったことが一度だけある。
それが数ヶ月前のことだ。
子供といえど、市井でおやつにパンや果物や飲み物を買うこともあるので、そんなに貯めているわけではないが、たぶん他の子供より金持ちだ。
セイラは金使いは荒い方ではなかったけど…まぁ、他の子におごることもあったけども。
それでももうすぐ10歳だけど両替してないのを含めても小金貨2枚程度が全財産かな。
つまり2万円くらいってことか。
果たしてアミュティリス石はどれくらいの量が出るやら…
私はそっとアミュティリス石とトルー鉱石のキューブを机に置いた。
ブルっと震えて跳ねるとそれぞれ顕現した。
トルー鉱石は拳より大きい淡い黄色が入った白い石だ。
宝石とかって言うよりはきれいな石って言う感じ。
長石とか石英とかに近い感じがする。
アミュティリス石は長いところが私の人指し指くらいの長さの淡く青白い石だ。
水晶のような結晶ではなく、どっちかって言うとオパールのような石に見える。
結構大きい。
まだ空は明るいがほのかに光っているように見える。
しかも揺らめいている。
すごく綺麗。
「キレー!」
「「でかい!」」
私が感嘆の声をあげたのとほぼ同時にエラン様とアドル老師からも感嘆の声があがったが、反応が違った。
こっちの世界にも丁寧じゃない“大きい”を示す言葉があるんだけど、エラン様でさえそれを口にした。
ちょっと下品な言葉使いなんだけどなぁ。
あ、エラン様、ハッとして口を塞いだ。




