能力の可能性
その後もサクサクと伐採して裏庭の奥側の壁が見えてきた。
結構広いぞ。
表の倍くらいあるのでは?
向こうまで行ったところで畑が範囲外になっていることに気がついた。
コンバートはされてはいたけど、また範囲内に入ると水も枯れてないし、勝手に消えていることもないので、特に問題は起きてないみたい。
あまり範囲に縛られないでやろうかなと思う。
範囲に入ったときに育つくらいでもう十分蓄えたし。
ということで、畑は気がついたときに回収する程度で放置の方向でガンガン伐採と動物の回収をした。
鶏は柵の中へ、他は無慈悲にもアイテムになってもらった。
ごめんよ。
4回鐘がなって12時だとわかる頃には裏庭の3分の1くらいは作業が完了した。
どうやら屋敷の端は裏庭側に少し飛び出していてコの字と言うより飛び出しは少ないので上から見たら大括弧のような形かもしれない。
そして、やっぱり庭はかなり広いかも。
それに表側より森のようになってる
もう木ばっか採ってるの飽きてきた。
あ、でも、新しい木とか花もあった。
それぞれの木は苗木がみんな落ちてくれたからいざ、重要な木でも大丈夫。
あと、きのこと種のような物も2つほど見つけた。
裏側はかなり鬱蒼としてたから表に比べてもジャングルのようになっていた。
と言っても高い木が少なかったのは幸いだ。
疲れてコンバートした後裏庭側の椅子に腰掛けて、メリーさんにもらった包を開けた。
昨日のようにパンとドライフルーツとお茶っ葉が入ってる。
エラン様を待つか?
別に水筒は持ってるからお茶を入れなくてもいいんだけど。
なかなか来ないので一回表に向かったが、それでも来ないので、椅子に座ってパンを一口、二口と食べ始めたところでエラン様が来た。
「遅くなってごめんね。」
そう駆け寄ってきたエラン様の後ろにはアドル老師がいた。
「やあ、セイラちゃん。調子はどう?」
すごく軽そうな感じで話しかけてきた。
相変わらずだなぁ。
前世どんな人物だったのか気になる。
「順調ですよ。ちょっと疲れてきましたけど。色々わかってきたし、紙とか砂糖が作れたのがかなり収穫ですね。」
「そっか、そっか。いい感じだね。僕もそこいいかな?」
「はい、どうぞ。」
アドル老師は私が能力で作った椅子を引き座って、手に持っていた片手で軽く持てる程度の籠を机に置いた。。
アドル老師は斜め前の席に座り、その横、つまり私の正面にエラン様がニコニコと座った。
「アドル老師、その椅子と机もセイラさんが作ったんですよ。」
エラン様が自慢気に言った。
「え?」
アドル老師が本気でびっくりしてた。
椅子から立ち上がりまじまじと見ていた。
「『こんなのあったの?
サンドボックスゲームって立方体のブロックとか階段とか半分のブロックくらいじゃなかったっけ?』」
「『あー、たぶん亡くなってから新しく出てきたゲームの方にはあったんですよ。
そっくりなのが。』」
「『…方には?ということは混じってるの?』」
アドル老師は椅子に手をかけ立ち尽くして私を見ている。
真剣な眼差しで。
「『混じってますし、この世界に順応するようにアレンジもされてます。もしかしたら…』」
私は一つの仮説を考えていたけれど、だとしたら本当に自由過ぎて、この能力は世界のバランスを崩すのではないかという懸念から言葉にはできなかった。
「『実はセイラちゃんの知識や要求に応じているってこと?』」
アドル老師は真剣に聞いてきた。
私はその老いてもきれいな深い緑の瞳を見つめて静かに頷いた。
その私達の雰囲気を見てエラン様がしばらく声を発せなかった。
「あの、何かまずいことでも?」
「あー」
「えーと」
エラン様が遠慮がちに聞いたけれど、私達はなんと答えたらいいのかわからなかった。
私自身はこの力を封印してもいいのだけれど、契約してしまった手前そうはいかない。
どこまで提供していいのか、どこまで情報を開示していいのかもわからない。
私はまたアドル老師を見た。
やっとアドル老師が口を開いた。
「可能性の話なんだけど…大抵のものは作れるんじゃないかという話をしてました。」
はっきりと明言しなかった。
「大抵のもの…」
エラン様は笑顔のまま固まった。
「そう、大抵のもの」
アドル老師はそれにつられてにっこり笑っている。
わかるよ、エラン様の気持ち。
ざっくり過ぎて、どこまでかさっぱりわからないよね。
まだまだわからないことがたくさんの能力、私自身がしっかりしないと行けないのかもしれない。
「それのどこが、問題なのかわからないんだけど、父上と話した結果、セイラさんから買い取る物品は基本的にコアナキア家で一元管理することになりました。基本的には窓口は私です。価値がわからないものに関してはアドル老師かカエラ殿と相談するように…とのことです。」
「姉様と?」
「はい。まだ話したりしてないんですか?ご家族にはそろそろ話した方が良い気がします。前世の件も含めると色々混乱が生じそうですが、どのくらい話すかはセイラさんに任せます。」
エラン様は微笑みを向けながら私に言った。
家族に話すのか…どう話すか…。
「わかりました。」
私は手に持ったままだった残りのパンを無意識で口に運んだ。
手からパンが無くなったところでハッとした。
「あ、ご飯食べました?」
私が焦って二人に言うと二人はクスクスと笑った。
「ごめん、ライザが用意してくれてたから食べてきたよ。これ、セイラちゃんにってもらったよ。」
エラン様がそう言ってアドル老師の持っていたカゴからハンカチのような包を差し出してきた。
受け取り開けると中にはクッキーが入っていた。
また作ったのかな。
「ありがとうございます。」
そう言ってからクッキーを口にすると昨日よりふんわりとした香りがしていた。
バターが入ってるのかな?
あとハーブっぽい匂いもする。
美味しい。
「ライザが工夫して色々やってくれてるから助かるよ。それで、砂糖をセイラちゃんから買ってこいと言われたのだけど、ある?」
聞いたのはアドル老師だった。
「ありますけど、いいんですか?普通に売って。」
私はアドル老師から視線を外し、エラン様に確認した。
「アドル老師はうちの家族みたいなものだから構わないよ。それにライザのレシピはうちの食卓にも、後々の領内の人々の食事に関わってくるから協力してあげてほしい。」
「わかりました。ところでライザさんって何者ですか?」
ほんと優秀すぎない?
侍女として料理人として。
「うーん、まぁ、私の親戚であり、代々うちに仕えている家の子って感じかな。」
「そうなんですか」
なんか奥歯に何か挟まったような言い方をされたので知らないほうがいいことなのかな。
とりあえず、砂糖とボールを出さなきゃね。
「今すぐのほうがいいですか?」
「午後いっぱいちょっと見学させてほしいから、その後で構わないよ。金額は市井のものの1.5倍くらいでいいかな?」
「え?タダでもいいんですけど。」
「いや、僕が払わないわけに行かないからね。」
「わかりました。」
まぁ、もらえるものは貰っておこう。




