文化の差
「おー、屋敷がよく見えるようになったね。」
やっとエラン様が帰ってきたのは作物の回収を終え、水を貯めていた溝と穴を埋めている最中だった。
エラン様が入ってきて気がついたのだけど、結界内に新たに人が入ってくるとゾクッとする。
つまり人の気配を感じる。
どうやらフィーは結界に入らないように避けて動いてるんだろうな。
「こうやって見ると広いですね。」
私はそう言いながらコンバートを押した。
結界が収縮してエラン様から私の順で身震いをして笑った。
「お疲れ様。ちょっと甘いものでも食べる?」
エラン様はそう言って、麻布の包みをバックから取り出して開けた。
中にはクッキーのようなものが入っている。
クッキーだよね?
「昨日砂糖貰ったでしょ?あれライザにあげたんだよ。そしたら今日作ったみたいでね。1度報告に父上のところに行った帰りにアドル老師の家にまた寄ったらくれたんだ。あぁ、あとこれもあげるね。」
そう言ってエラン様がバックから棒を出した。
鉛筆だ!
「ありがとうございます!」
嬉々として受け取った。
日本で使っていた物より少し太く四角で、角が取れた程度にヤスってあり、質素なニスを塗っただけの木の棒だけど、ちゃんと芯は黒鉛のようだ。
ご丁寧に削ってくれているのですぐ使える。
私は紙をしまったチェストを探した。
どれだっけ。
チェストとタンスが交互に並んでいて、右から木材・石類・食べ物・花と種・苗木、間4つはなくて一番左にその他…全部で縦長のチェストが10並んでいる。
現実に見るとそれはもう壁だ。
確かその他に入れたはず。
私は一番左の樫のタンスを探す。
…あった。
22個作ったから2つを出そう。
あと…木のボウルとー
砂糖は右から3番目だったな、
砂糖一つ。
私は回収したキューブのうち紙とボウルをまず机に置いて、確認してからボウルの中に砂糖のキューブを落とした。
―ザザザ…
砂糖結構あるな。
確かグラニュー糖買ったときあれが500グラムだったから…
うん、500グラムなんじゃないか?
この世界の単位ってなんだろうグラムではないのよね。
「あの、重さの単位ってわかります?」
なんだこの質問。
言ってるこっちがわけわからない。
「単位?重さだとウィールかな?麦を一つのパンにするのに必要な量が1ウィール。」
ふぁー!
単位さえアバウトだとは!!
「そ、そうですか。」
なるほど
いろんなものが目分量だから料理もなかなか発展しないのでは?
とりあえず、砂糖は保留で。
私は椅子に腰掛けた。
エラン様も向かいに腰掛け、クッキーを食べ始めた。
それよりも
紙だ紙。
私はおそらくA4の紙に能力証にメモした内容を書き写した。
もちろん日本語でね。
紙は貴重だから小さく書いた。
「す、すごい。エンピツって筆記具と植物の紙は相性がいいの?こんなに細かく書けるんだね。砂糖と一緒にアドル老師にあげちゃったよ。」
クッキーを一つ食べきったエラン様がかなり驚いている。
それもそうだろう。
羊皮紙の時代に急にコピー用紙のようなサラッサラの真っ平らに見える紙はないからねぇ。
「よければ一枚あげますね。」
私はもう一枚をエラン様にあげたその手でそのままクッキーを貰った。
「ほんと!?ありがとう」
「いえ、これいただきます。」
エラン様が紙に喜んでいる前で私はライザのクッキーを口に含む。
ほんのりとした甘さが優しいクッキーだ。
紛れもなく、これは美味しい。
砂糖は偉大だな。
「素晴らしい。」
「うん、素晴らしい。」
私が砂糖がしっかり入ってるクッキーを褒めたあとにエラン様が続いたけれど、たぶんエラン様は紙のことを言ってるよね。
エラン様、食欲は強いけど、知識欲のが強いんだな。




