学校へ行こう
木から落ちて頭を打ち、前世の記憶を取り戻した私は数日家から出してもらえなかった。
あの後ネイの両親が私の親に謝りに来たけど、私の親は私にげんこつするくらいで特にネイのことを責めたりはしなかった。
いや、頭打ってるのにゲンコツはどうなの?
日本じゃ虐待だよ。
まぁ、本気で叱るとき以外は手を出さない親なので、セイラはしっかり親として信頼はしていたみたい。
母親は私がおてんば過ぎて手を焼いていたみたいで、「二、三日は家から出ちゃ行けませんよ」と言って素直に従った時は逆に怪訝な顔してたけど。
四日目で、やっと静養と言う名の謹慎からあけて、とりあえずアリンとネイに会いに行こうとおもったけど、母から今日から学校に行きなさいと言われた。
そう、10歳になった年までは学校がある。
この世界のこのサイファ帝国では6歳から10歳までは学校に無料で行ける。
貧困だとかど田舎でない限り子供が学校に行くのは普通だ。
まぁ、金持ちは家庭教師だけどな。
一応、無料で給食がついてくるだけで、日本の学校のような親の義務は存在しない。
農家の子なんかは時期になると勝手に休んで畑の手伝いをしてる。
無料で行ける学校は身分差はなくランダムにクラス分けされるけど、金を積んでもっと上級の教育も受けることができるが、基本は国の中枢だけだ。
ここは地方都市のはずれの小さな集落なので、子供はそこそこいるが、学校は一つしかない。
いや、一つあるだけマシなのかな。
とりあえず、セイラの記憶に従って荷物をまとめると家を出た。
学校はそこそこ距離があるので、馬車で行く。
と言っても町を周回している乗り合い馬車なので、コミュニティバスのようなものと思って貰えればいいかな。
しかも魔力で動く車が開発はされているがそれは帝都の金持ちなんかしか乗れないものなので足の太い馬のような生き物が引く馬車だ。
誠子の意識とセイラの意識で同調して馬と認識しているので馬なんだろう。
馬車の集合場所につくとアリンとネイがいた。
そう、この二人は同じ集合場所仲間で同年代だから仲良くならないわけがない。
他にはネイの三つ下の妹がいる。
ネイ自身は私の一学年下で9歳になったばかりだからその妹は今年入学したばかりの6才だ。
名前はイルカだ。
海の生き物っぽい名前だけど、この世界にはイルカという名前の海の生き物はいない…と思う。
セイラは海というものを見たことはないが、海の噂に大きい哺乳類っぽい生き物の話はあまり聞かないし、知識としてはない。
いるかもしれないけど、知らないし、同じ名前じゃないと思う。
「おはよう!」
「おはよう。イルカ、今日はご機嫌だね」
一番に私に気がついてイルカが挨拶してきた。
ニコニコしながら「よかったー」とちょっと顔を赤らめて小さい声で言った。
今までのセイラは気がついてなかったけど、これはセイラに憧れてる反応かもしれない。
“お姉さま"って言われそうな雰囲気。
何故?
とりあえず、気が付かなかったことにしよう。
「「おはよー」」
私が微妙な気持ちでイルカを見ていると、続いてアリンとネイが挨拶してきた。
「イルカ、ちょっと風邪気味だったから母さんに怪我してる上に風邪うつしちゃいけないってセイラの見舞いに行けなくてすごい寂しがってたんだよ」
ネイがイルカについて説明するとさらに顔を赤らめた。
イルカは普段はあまり喋らない子だ。
セイラの記憶では…
まぁ、好きだから恥ずかしくて喋られないだけで他の友達とか家族にはどうなのかはわからないかな。
なんだか自分のことなのにすごく他人事…というか妹のことのような感覚というか。
私一人っ子だったし。
セイラは三人兄弟の末っ子だけどね。
イルカの好意に関してはとりあえず、様子見としよう。
子供の体におばちゃんの意識ではアンバランスなので、どう振る舞うか悩みどころだ。
とりあえず、セイラっぽくなるべく相槌をうつ程度につとめよう。
「私も寂しかったよ、皆に会えなくて。イルカ、風邪はもういいの?」
私は苦笑いしながら言ったら、アリンは少し変な顔してたけど、ネイとイルカは似た顔でニッコリ笑った。
「もう大丈夫」とイルカはもじもじしながら言った。
アリンは勘がいいから、違和感に気づいたかも。
どこがどう違ったかな…。
「セイラこそ大丈夫?なんか、大人しくて調子狂っちゃう。」
アリンが私の顔を覗き込んで様子を伺ってくる。
赤みの強い栗色の瞳をジッと向けてくるアリンにちょっと尻込みした。
アリンって田舎っぽい素朴な雰囲気あるけど意外と美人なんだよね。
異世界から転生したのを思い出したってことはいくらなんでもぶっ飛んでてバレないだろうけど、変に心配されたくはないなぁ。
「いやぁ、流石にもうすぐ能力証貰えて大人の仲間入りするってのに木から落ちて怪我するなんてダサいなと思って…反省したんだよね。」
「そう!やっと反省してくれたのね!いつもネイが振り回されてばっかたったし、よかった!」
アリンは満面の笑みでなかなか酷いことを言う。
怪我したのはセイラなのにネイの心配?。
「ネイの心配じゃん!」
と一応つっこんでおいた。
するとアリンもネイもイルカもケラケラと楽しそうに笑っている。
あぁ、いつもこんな感じだったのかな。
私はあまり自分からは話を振らない程度に話をしながら馬車に揺られて学校に向かった。




