鼻のいい領主
そこまで聞いたところで時の鐘が鳴った。
すでに6つ鳴らされたから16時だ。
「さて、そろそろ帰さないとあのお姉さんが心配するだろうな。」
アレッサンドロ様がそう言ってライザに目配せをする。
「だが、君の能力を見るのに時間がない。今日は闇曜日だから…明日からだな。君の学校にエランを派遣しよう。」
はい!?
今なんと?
「学校に?むしろもう能力証交付がされたものであれば休みが多くてもおかしくはないし城に呼んだ方が良いのでは?」
そう言ったのはアドル老師だった。
確かに能力証交付後は職業訓練期間なので、めっきり学校に来なくなる人も多い。
その後アレッサンドロ様とエラン様が黙った。
そして、エラン様が静かに冷たい目で口を開いた。
「…城の出入りが多いと目をつけられるかもしれない。」
何だろう?
誰に目をつけられるって?
「南の…か?」
そう言ったのはアドル老師だった。
アドル老師も厳しい目をしてエラン様を見た。
「だからこんだけ人払いしてるのか。」
アドル老師が言う。
人払い?
人払いって偉い人が敵陣のスパイや情報が漏れるのを気にしてよく会話をするときにするあれですよね?
「それについてはまた後程な。エランは商業協会にもよく行くし、アドルの助言で教育関係も手掛けてる。表向きは視察ということにしておこう。それにまだ14だしな。一般学校をすぐに見学したいと我が儘を言ったと通そうと思う。まぁ、学校では極力目立たないようにな。」
アレッサンドロは至極真面目な顔で言った。
「父上、せめて普段通りの学校を見たいので抜き打ちの視察をする、ということにしてください。」
エランは恥ずかしそうに冷や汗をかいている。
「エランは我が儘は五歳で卒業してる。むしろアレッサンドロ様の方が我が儘だと思いますよ。」
アドル老師は丁寧語を使うがアレッサンドロに対してお小言を言える立場なのだな。
「そうか?まぁ、いいや。書類関係は今作らせてるから明日の午後にでもエランが行くと思う。待ち合わせに使う程度だがな…えっと…サレンナだったな?近くに塀に囲われた林があったろう。あそこを自由に使って良い。あの場所は昔ある一族が使ってたが焼失して以来縁起が悪いと誰の手にも渡らず我々の管理するところとなってる。周りに影響がでないように塀周りだけは定期的に手入れはしているが中はどうなってるかわからん。」
アレッサンドロ様は喋りながら立ち上がり執務机の引き出しから木札と鍵を取り出した。
それをエラン様に渡した。
「ある程度手入れしてしまって構わないと言うことですね。むしろ手入れしてみろ…のが正しいですか?」
エラン様はアレッサンドロ様に対してニヤリと笑いかけた。
アレッサンドロ様も同様に似た顔で笑った。
あぁ、親子なんだな。
というか整地するの私か。
「ところでお前ら、ずっと気になってたんだが服からおいしそうな匂いしてるな」
最後にアレッサンドロ様の言葉でニンニクのことを思い出した。
口臭は大丈夫だったみたいだけど、服の匂いはどうにもならなかったらしい。
焼き肉ではなくステーキだったんだが、ダメか。
アレッサンドロ様、鼻がいいな。




