イケオジとイケメン
それにしてもライザはアドル老師の侍女なのではなかったか?
領主とかエラン様の侍女は?
そんなことを考えてると領主は詰襟のジャケットを脱いでいた。
「暑い!」
ジャケットをライザに放り投げた。
「父上!」
エラン様が珍しく厳しい顔で親を逆に叱った。
「私は領民とは近くいたいとおもっている!故にこんな畏まった服は式典だけで良いのだ!」
領主様は顔が緩んでいるのが私にもわかる。
こんな性格だったのか。
「そんな領主が他にいますか!これだから兄様達もあぁなるのです!」
あぁとはどういうことでしょう?
そういえば、林をボロボロにしたのは兄達だと言っていたな。
やんちゃなんだろうけども。
威厳ない感じ?
「別に良いではないか。多少遊びが好きなだけだろ?」
「多少ではありません!」
二人のやり取りを見た姉が表面は取り繕っているが驚いてるのが伝わってきた。
多少面識はあってもチラ見程度だったんだろうな。
「ゥオッホン…アレッサンドロ様、エラン様。セイラさんはともかくカエラさんの前ですよ。」
見かねたアドル老師が二人を諌めた。
なぜ私はともかくと括った?
領主とエラン様は姉様を見て姿勢はただし、大人しくなった。
「すまないが、小一時間ほど話したら馬車を用意して返すので先に戻ってはくれないだろうか?」
カエラに向かってそう言ったのはアドル老師だった。
「あの、一緒には帰れないのでしょうか?」
一抹の不安を覗かせる姉様にエラン様が笑顔を向けた。
「ちょっと細かく話したいことがあるだけだから、すぐに帰れるよ。なんなら別室を用意するからお茶でも飲んでいくといい。」
エラン様はそこまでいうとライザに目配せをした。
「畏まりました。多分な配慮痛み入ります。」
カエラはほっとした気持ちと不敬だったかもしれないという気持ちを持っているのか少し緊張した笑顔を見せた。
たぶんエラン様は気にしてないと思うけど。
ライザはエラン様の目配せを受けて先に扉のとこへ行き開けると他の侍女になにやら話をしてその侍女が去っていった。
その後ライザがカエラを連れて出ていきまた別の侍女に引き継がせるとライザは戻ってきた。
「彼女にはいわない方がいいのか?」
しばらくして口を開いたのは領主だった。
「自分の妹が高度文明のあった別世界の前世を持ってたらビックリするし、どうしたらいいか困惑するでしょう。」
アドル老師の口調はかなり砕けたものになってる。
アドル老師は領主に庇護されていると思ってたけどちょっと違うのかな。
「そういうものか。」
領主は納得したようなしてないような表情だった。
「さて、セイラさん、今後のことだけど、セイラさんはまず能力の把握と制御に勤めてほしいんだ。で、ある程度わかったら定期的に我々に知らせてほしい。あと、君の能力の強度を調べて等級をつけなければならない。おそらく3級以上になると思う。なんなら1級でもおかしくない。」
エラン様が少し険しい顔でいう。
等級とはなんぞや?
「他に同じ能力はないから特級だと思うよ。」
アドル老師がそう言うとエラン様と領主様がアドル老師を見た後に私を見つめた。
イケオジとイケメンのダブルパンチだ。
冷や汗がとまらない。
「話を聞くと確かに特級だろうな。確定特級には国王陛下への謁見が必要だがあまり事を急がない方がいいか。認定特級ならばこの領内だけですませられる。あまり多くのものに知られて下手に利用されても困る。」
何がなにやらだ。
私が目を回しているとアドル老師が気がついた。
「等級ってのは主に魔術師の強さの事を言うよ。」
その後に続けて説明した。
この世界には貴族として家の階級は上級、中級、下級とあるが伯爵とか男爵とかの爵位はない。
貴族として名乗るには魔法が使える術者であること、もしくは一親等内に術者がいることが条件となる。
また、術者には等級が与えられ個別に国王、もしくは領主一族によって測定される。
その測定にメジャーと能力証は欠かせない。
能力証表面にはレベルとかHPやMPみたいなものは表示されないが、測定値は記録されており、国王や領主の管理をする側の一族は閲覧が可能だそうだ。
その機械を作ったのがアドル老師だという情報が唐突に挟まれた。
そして、その測定結果を見て、どの等級に値するかを領主一家で話し合いで決めるのだそうだ。
とは言ってもメジャーの測定が基本となるため他のものとの差異がある能力を考慮して上げるかどうかそのままの数値の等級にするか決まるらしい。
細かいことは王家や領主一家までしか知らされていない。
等級は1~9級までで、大分すると1~3が上級、4~6が中級、7~9が下級だ。
貴族でも魔法がほぼ使えない子が産まれることがあるそうだが、その場合は10級と言われる。
ちなみに庶民は魔法がほぼ使えないので10級となる。
めったに貴族の家としての階級は変わらないのだけれど、当主、もしくは大多数の等級に大きな変動があると貴族の位が下がるもしくは上がることもある。
貴族はその等級によって仕事が変わる。
上級であればや領主より直々に地方を任されることもあるし、軍の指揮官になったり、領主の城で管理職として働いたり皇帝に推薦されて帝都で働いたり重要な役職につくことができる。
魔力が多いのに管理職なんだなと思った。
だが、この世界には結構魔獣や魔法戦争が多いらしく、大規模な結界を敷けたり威力の高い広域攻撃や遠距離攻撃の魔法が使えるのは魔力の高い者なので前線でなくても戦えるというのが大きいそうだ。
なるほど。
つまり前線にいるのはもちろん雑兵ということになる。
指揮官は死んではいけないのだ。
納得だ。
ちなみにセイラが可能性のある、特級は膨大な魔力量だったり、全属性や多属性持ち、もしくは領地や国家を1人で揺るがしかねない能力、もしくは莫大な影響をもたらす能力を持つものを特級とするらしい。
特級は能力によっては戦争に投入されないこともある。
能力が特殊すぎるため戦争には使えないこともあるが。
ちなみにコアナキア領では特級は今のとこ5人。
領主アレッサンドロ、アドル老師、エラン様、そしてアレッサンドロの二人目の息子のレヴェントン、四番目の娘のプリメーラだけだそうだ。
それ全てを聞いて大体納得はできた。
でもひとつどうでもいいかもしれないが気になることがある。
私は意を決して声をあげた。
「あの、もしかして、アレッサンドロ様のお子さん達の名前、アドル老師が付けてませんか?」
「え?!なんでわかったの?!」
答えたのはアレッサンドロだった。
当のアドル老師は目をそらした。
だってエランもレヴェントンもプリメーラも地球での車の名前だもん。




