展開
「エラン様は全属性持ちだから他の兄弟がボロボロにしたのを直すのがいい修行になってるのだよ。さ、やってごらん?」
アドル老師はさらっと言ったが、どうやって直してるのかも気になるな。
とりあえず言われるままに手に持っていた能力証を開いて持ち直すと今度はすっとスキンが出てきた。
大きさは140センチくらいだろうか。
そのサイズで三頭身くらいなので、まるで着ぐるみみたいだ。
能力証を見てみると下側には方向キーや決定などのボタンが表示されている。
まるでコントローラーのような配列だ。
上側には日本語で『展開』というボタンがひとつだけ黒バックに浮かんで見えた。
今度はそこにある気がするって訳ではなくしっかりボタンと文字が見える。
私はちょっと躊躇ったけれど、そっと展開ボタンを押した。
ーズオオオ…
悪寒がするように体から一気に何かが抜けていくような感覚がした。
特に体調に変化はないけど、ひとつ身震いをする頃には変化が目に見えてわかった。
能力証を中心にちょっと先まで薄紫の薄い膜のような立方体が広がっていったのだ。
それは地面の下にも及んでいるようだ。
エラン様とアドル老師をすり抜けていって下がっていたライザと兵士の少し前で止まった。
すると能力証の上に浮かんでいたスキンはカサっという感じの軽い音がして、地面に降り立った。
その後薄紫に見えていた膜は透明になり、ほぼどこが境かわからなくなった。
「空間魔法か?!いや結界魔法?!」
エラン様は膜が体をすり抜けていって少しビックリしていた。
アドル老師もキョロキョロとあたりを見回している。
私が能力証に目を戻すとそこには懐かしい光景があった。
まさにサンドボックスだ。
土のエフェクトの上に木が立っている。
これはオーク?樫か?
あたりには草が生えていて、地面に窪みがある。
実際のものと比べるとかなりデフォルメはされていて分量的にも小さい気がする。
でもクレーターのような窪みはしっかり窪みとして表現されている。
まるであの緑のモブが爆発したような地面の穴。
下部にはスロットと右端に箱のマークが表示され、左上にハートマークと肉マークのパラメーター。
これは中国のやつの方が近いな。
やっぱり最後によくやってたからそっちのがベースになっちゃったのかも。
とりあえず、木をとってみよう。
サンドボックスの基本、木を採ろう。
私は方向キーを押す。
するとスキンが膝がないようなぎこちない歩きでスーっと一本の木に近づいて行った。
その木に照準をあわせて決定キーを長押しする。
ーカリカリカリカリ
スキンが木を掻くような仕草をしてスキンから音がなる。
木からではないな。
そして、現実の木はスキンから伝染するように紫の煙のような光がモヤモヤっと移り、下から一メートルから2メートル強あたりまでを覆った。
ーポコン
その音と共に画面上の木の幹はなくなり、スロットに樫の原木が追加された。
現実の幹は少し薄い白い煙に覆われるような感じでどうなってるのか見えない状態だ。
続けて上の方の幹も取る。
ーカリカリカリカリ…ポコン
今度はその上もとりたいのでスキンを切り株の上に立たせた。
自然と指が動いていたが、現実に見えてるスキンは幹を覆っていた煙に突っ込んだ。
煙は特に動くことなくスキンを包んでいた。
少し驚いたけれど、画面上では普通に木をとれそうだ。
ーカリカリカリカリ…ポコン
ーカリカリカリカリ…ポコン
ーカリカリカリカリ…ポコン
そこまでいくと幹はなくなった。
そして、足元の切り株も取る。
そして降りて見ると五個の樫の原木がスロットに入っている。
現実の木は葉を残して幹がすべて白い靄に覆われていた。
どうやらとろうとしてるときは紫の靄でとり終えると白い靄になるみたい。
それよりもこれ、そこに幹や枝がなければ葉は重力で落ちてくるはずなんだけど、落ちてこないな。
どういう状態なんだろう。
うーんうーんと考えてると「カサ」っと音がした。見ると白い靄から伝染したように葉のあった一メートル四方ほどの空間が白い靄に置換されている。
他のところも見ると紫の靄が少しずつ広がっているのがわかる。
全部終わるには時間がかかりそうだけど。
画面上には苗木のエフェクトがくるくる回って落ちていた。
現実ではなにもないように見えるのに!
スキンを動かしてその場にいくとポコンと音がしてスロットに樫の苗木が入った。
おー苗木もちゃんとあるんだ。




