スキン
とりあえず、このイケメンの言う通りにしよう。
再び能力証を持ってサンドボックスゲームをやってた時を思い出す。
すると今度はもっとすんなりと紫の光を纏って、指先が暖かくなる。
何となく能力証の無機質な黒にコントローラーがある気がしてそこを押す。
すると紫に漂ってた煙のようなものが能力証の上にぐるぐると回り始めた。再び同じあたりをタップするとその煙が50センチくらいの人のような形というと簡素すぎる棒人間のようなものが現れた。
白紫のモヤモヤだけど、腕や足だなという突起を感じる。
「「おおー!」」
白紫のモヤモヤから淡く回りに霧散している分もある気がするけどそこにとどまっているのがわかる。
私は方向キーを押すように指を軽く動かすと膝はないかのような動きをしてモヤモヤが歩く動作をする。
その場で。
私が上側の画面を左から右にスライドするとモヤモヤがくるくると回った。
まさにサンドボックスのスキンのような動きをするけど、見た目は全然違う。
「セイラちゃんのなかでは、もう、こういうものってイメージがあるんだね。本来素の状態の能力証ではここまではできないからセイラちゃんの素養だろうねぇ。」
アドル老師は腕を組んでそのモヤモヤを見ながら言った。
「え?そうなんですか?そんな力ないとおもってたけど。魔法の授業では水滴しか出せなかったし。」
だってセイラの力では魔法の講習で全然何もできなかった。
誠子だって平々凡々な地味な女だった。
「特殊な能力を持つ人は何かのきっかけで急に力が使えることがあるんだよ。なにより闇属性の人は精霊の恩恵を受けにくいから普通の魔力発現がしにくい。一方僕みたいな光属性の人間は精霊の恩恵を受けやすい代わりにオーソドックスな魔法しか使えないし、消費魔力が多く制御がしにくい。」
エラン様は苦笑いしていた。
イケメンはなにしてもイケメンだなぁ。
それにしても光属性とかどんだけイケメンなんだよ。
あー、語彙力崩壊してイケメンしか出てこない!
「なんとなくどう使ってるかわかったから使いやすいように作ろうか。」
アドル老師がそういうので能力証を差し出す。するとフワッとモヤモヤしたヒトガタが能力証を通り私の中に戻ってくる感じがした。
アドル老師は手袋をした手で受け取った。
私は空になった手のひらを眺める。
なんだろう?消耗した感じはなく、手を長く伸ばして戻したような感覚だ。
「やはりあまり消耗はしてないようだね。あのヒトガタの魔素の塊もほぼ戻ってる。しかもポーション飲んでるから逆に最初より魔力量は多そうに見える。」
エラン様は私を真剣な面持ちで見ている。
恥ずかしいから見ないで!…とは言えない。
「つまり、死の危険はないと言うことですかね。」
「それは大丈夫そうだね。あの塊をそのまま失っても回復はするだろう」
エラン様の言葉にほっとする。
と同時に何かワクワクしてきた。
何が出きるんだろう。
一方アドル老師は工具箱から金箔よりも厚みのある金の薄い板と能力証の表面と同じような黒い板を取り出した。
それを机に置いて、紙を取り出すとそこに羽ペンでなにやら色々書いている。
魔方陣のようだ。
いくつも書いてる。
うーん、うーんと唸りながら二枚目の紙を取り出してまた書き出した。
「お食事の用意ができました」
甲高くて可愛らしい声が左側のドアの向こうから聞こえた。
ライザだな。
「ごめん、二人は先に食べてて」
アドル老師は三枚目の紙を取り出しながら我々を見ないで言う。
エラン様はため息をついて私を隣室へ導いた。
ライザは侍女なので別室で食べているのか、私はイケメンと二人きり向い合わせで味のしない料理をいただいた。
たぶん家で食べるよりは味は濃いめで美味しかったと思うけどね。




