はじめての力
「老師、それよりも今はセイラさんの能力証を仕上げてください。」
そう言ったのは今まで静かにニコニコしながら聞くだけだったエラン様だった。
「おっと、そうだった。で、『サンドボックス』というスキルはおそらくセイラちゃんの固有スキルかつ代表スキルだろうと思うのだけど、それを見てみないことにはよくわからないのだよね。そのまま『コントローラー』みたいにしていいのか、あくまで『外部デバイス』に繋ぐ機能を付ければいいのか」
「あの…私魔法というものを使ったことないのですけど…そのサンドボックスゲームをやるときはこうやってピコピコって感じでやってたんですけど」
私がスマホでゲームをする仕草をするとアドル老師はなにかを考えて能力証を手渡してきた。
アドル老師は手袋をしていたけれど、私は素手でさわっていいのかな?
私は手を差し出すとそこにそっと置かれた。
すると能力証は淡く光った。
光ってるかわからない程度だけれども、明らかに反応した。
私は能力証の蝶番をコンパクトのような形で開けた。
そういえば、こういう形のポータブルゲーム機あったよな。
能力証の方がもっと薄いけど。
「こういう感じで」
私はそのゲーム機を思い出しつつもスマホでゲームをする仕草をした。
能力証の表面はガラスのようなものでできている。
何でできてるんだろう。
プラスチックではないだろうし、ガラスにしてもこちらの世界でこのクオリティはすごい。
アリンの能力証は金属っぽかったけど、貴族用は違うのかな?
そんなことを考えつつも日本人だったときにやっていたサンドボックスゲームを思い出していた。
ホーム画面からワールドの選択画面に移行して選ぶと新規ワールドでは初期スポーン地点に立っている。
どんなワールドのどんな場所になるかはランダムだ。
一番有名なゲームだと村があったりしてその近くだとラッキーなんだよね。
中国のやつは村はないから人によってどういうバイオームがいいかは変わってくるけど、いくつかのバイオームの境目で大陸の海沿いがいいよね。
なーんて考えてたら体に違和感が。
暖かいかんじというかモヤモヤした感じが能力証に伝わっていく。
そして、能力証全体が淡く紫に光るとその光がモヤモヤと一メートルほどそこから煙のようにあがって霧散していく。
私はビックリしてそっと能力証をその場の机に置いた。
すると光は消えた。
「これは魔力でしょうかね。」
そう落ち着きながらも目をキラキラさせて言うエラン様。
「魔力の一種だろうが、魔力感知に引っ掛からないな。おそらく精霊の力は使ってないのだろう。本人の生命エネルギーのようなものか?」
そう言ったのはアドル老師だった。
ちょっと待って!
生命エネルギーって!?
「私、死んじゃうの!?」
私は思わず叫んでしまった。
二人はニコッとした。
「たぶん大丈夫だよ。」
とエラン様。
「これ飲んでごらん?」
そう言ってアドル老師がポケットから何か取り出した。
まるで栄養ドリンクのような大きさとサイズの筒状の陶器にコルクで栓がされている。
いぶかしげに受け取り栓を開け、匂いを嗅ぐ。
ハーブとかスパイスとか、まぁ言っちゃえば漢方薬の匂いがする。
怪しみながらもそれを飲んでみる。
味は飲めるかなって感じ。
葛根湯っぽい。
「『葛根湯』っぽいよね?こっちの世界ではポーションとしてあったものだよ。レシピは薬草いくつかまぜて、癒しの魔力をちょっと込めるだけなんだけど。どう?」
そう言われると確かにじんわり何か効いてるような?
「見た感じちょっとずつ回復してるから、命に関わらない程度の蓄積魔素を魔力として放出してるのかな。今効いてる状態だからもう一回やってごらん?」
エラン様は机に置いた能力証を指差して微笑んでいる。
目がキラーンって感じがする。
この人イケメンの影に隠れてマッドサイエンティストの素養があるのでは?




