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能力の名はサンドボックス  作者: soumamumu
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日本語表記の能力証

とりあえず、落ち着こうかと老師が言って、侍女が持っている箱に板を納めた。

私は箱に近づいて覗くともう一枚にはセイラの整った顔が写し出されている。

そして、もう一枚は日本語しか見えない。

私はまず、日本語だということに驚いた。

これこっちの世界の人読めないじゃん。

老師に耳打ちをする。

「『これ日本語しかないんですか?』」

「『そんなことはないよ。この能力証は元々スマートフォンをイメージして作ったから。』」


え?


どうりでなんか既視感があったわけだ。


「『ほら僕のはこんな感じ。』」

そう言って老師は首に下げていた自身の能力証を取り出して下から上にスライドして見せた。

まんまスマホじゃん!


そこには日本語のスキルとこっちのサイファ語のスキルがずらーっと書かれていた。


「『庶民向けのはスキルの数が制限されてるダウンサイジング版で、ただ能力を表記してるだけなんだよね。コスパがいいんだよ。で貴族向けには魔力コントロールパネルとかも搭載したりカスタム出きるようになってる。スマホは折ったりしないけどさ、やっぱり折り畳みって画面がむき出しじゃなくてよかったよね。』」

そういいながら老師は能力証を本のような方向にパカパカして見せた。

「『あの、出てますよ。折り畳みできる二窓のスマホ、まさにこんな感じ』」

私はアドル老師の能力証を指差した。

「『ほんと!?じゃあ、僕の想像は正しかったんだな』」

どうだろう?出てるけど使ってる人を見たことない。

これから増えるかもしれないし、廃れるかもしれないし、違うデバイスが出るかも。

とは言えなかった。


「あの…この文字はどこの文字なんでしょう?」

そう言ったのはミレーナ先生だった。

老師と話してるうちに侍女と兵士とミレーナ先生が触りはしないものの能力証を覗き込んでいた。

侍女の方はなんとなく気がついているような素振りだが口を開かない。

「あぁ、それは私たちの魂の故郷の言葉さ。彼女は私と魂の里が同じようだね。精霊に愛されると稀にそういうことが起こる。」

老師はうまいこと言ったと思う。

正確ではないが嘘ではない。

「セイラさんがアドル老師と同じように精霊に愛されているのですか?」

ミレーナ先生がちょっと目を輝かせて聞いた。

あらら?こんな乙女のような顔は始めてみました。

「いかにも」

老師がウンウンと頷いて言うとミレーナ先生が私の手を握った。

「よかったですね。」

少し微笑んでいるミレーナ先生はとても綺麗だった。


「アドル老師。どうされたのですか?」


私たち五人以外の声がした。ミレーナ先生の影でよく見えない。

「エラン様」

アドル老師が軽く会釈をする。

貴族的なボウアンドスクレープではない。

その声でミレーナ先生はハッとして手を離し、彼の方に向き直り華麗な所作でカーテシーをした。


「ご機嫌麗しゅう、エラン様。」

その所作を見て私もやらなきゃと先生を真似てやってみた。

うーん、怪しいな。おかしいとこないか?


「これは、ミレーナではないか。久しいな。なぜここにいるのだ?確かそなたはサレンナ校の教諭になったのではなかったか?」


私はミレーナ先生がカーテシーをやめたので、やっと解放され声の主を見る。

なんと美しい男の子だろうか。

まだ子供と言えるかもしれないが十分に色気を放つ少年だ。

髪の色は水色が入ったような銀髪。

瞳は青に近い紫だ。

すみれ色というところか。

この世界でも紫の目は珍しい。

地球でもいるにはいるらしいが、おかしな髪の色をしてる人がそこそこいるこちらでも珍しい瞳の色だ。

服装はその髪と瞳の色にあわせたのか薄いグレーの詰襟に濃い紫のマントをしている。

帯剣してるので王子さま感がハンパない。


「はい。現在はサレンナ校の教師をしております。本日は能力証交付がありまして、少々特別な子を連れてきたのです。」

ミレーナ先生は私をチラッと見るので私もチラッと見返した。

「なるほど、それでメジャーを使いに来たのだな?合点がいった。」

ニコッと笑うエラン様はとても美しい。

で、あなただれ?とは聞けません。

多分身分が高いお方だとオーラでわかる。

「ところでエラン様、今は授業の時間では?」

アドル老師が気さくな感じで問いかける。

この身分が高そうなエラン様と同等のような口調だ。

「あぁ、歴史の試験があったのだが、あっという間に終わってしまったので少々昼食前に散歩しようと思ってな。」

エラン様は苦笑いで答える。

嘘ではなさそうだ。

「相変わらずの天才ぶりですな。次期領主となられたらさぞ力を発揮できるでしょうに残念です。」

「冗談でもそんなことは父や兄達の前ではいわんでくれよ?私は今の気楽な立場の方がいい。」

ほうほう、ってことはやはりエラン様は領主の息子ということか。

まぁ、領主の城だしな、ここ。

とは言え兄が何人かいて、領主候補としては下位だってことだね。

「して、そちらの娘はどのような力を持っていたのだ?」

エラン様が少しワクワクという擬音が付きそうな顔でこちらを見てきた。

純粋な興味なのか?


あー

やめてー!

そんな美しいお目目で見られたら溶けちまうー!


「エラン様、まだメジャーで記録しただけですので確認は加工後ですね。」

そういえば、誰も素手では触ってなかったところを見るとここから何かするんだろうな、あの板。

というか、二つにわかれてるから、あれをくっつけてパカパカにするんだろうな。

「そうか。では私が加工してやろうか?」

食い下がりがハンパない。

なんだこのグイグイは。

見た目に反する。

「いや、それは私に任せてください。」

アドル老師が真剣に言う。

エラン様がちょっとシュンとして肩を落とした。

とても残念そうだ。

「この子は同郷で能力は私並みに特殊です。通常の加工ではダメでしょう。エラン様はこの事態を知っておくべき人物ですので見学であれば構いません。いえ、むしろついてきて頂きたい。」

え?ちょっと待って、この日本語バリバリのスマホ…じゃなくて能力証を見せてもいいってこと?

ということはアドル老師は最初から領主一家には私のことを報告するつもりだったってことかな?

そう考えてエラン様を見ると驚いたように私を見る。


だから、そんなにみないでー!

美しすぎる~。


エラン様は再びアドル老師と目を合わせなにやらアイコンタクトをしたあとまた私を見た。

「お嬢さん、名前は?…いや、私から名乗らねばな。私はエラン・ユグレスト・コアナキア。我が風の精霊に誓ってそなたを保護しよう。」


なにそれ、なにそれ、なにそれ。


ちょ

かっこよすぎるんですけど?


顔が赤くなって来た。

ここまでだんまりを決め込んできたが、今こそその時!

「わ、私は…」

声が裏返る!

ひとつ咳払いをして深呼吸。

その間エラン様はニコッと笑った。

私もニヘラと笑い返して声を振り絞る。

「私はセイラ・トールゲンです。トールゲン商会長の次女にあたります。」

それを聞いたエラン様は少し安心したように肩を落とした。

「そなたが、カエラ殿の妹君だったか。それはよかった。カエラ殿であれば簡単にはそなたを他所にかっさらわれることはあるまい。」


ひぇ

かっさらわれることはあるまいって簡単に言ったけど、私そんな危うい状況なの?


私が不安に駆られてアドル老師を見るとそれを察したのかニヤリと笑った。

おいおい、この状況を楽しんでないか?

「それほど心配しなくてもいい。真っ先にばれそうなシェゾール様はもう興味を失っただろうし、考えの長く続く方ではない。それに短気だが騎士道に反することはしない。」

エラン様はアドル老師のその言葉に続いて残念そうに呟いた。

「あぁ、シェゾール殿は二の門行きだったか。頑張ってはいたんだがな。」

エラン様からそういう言葉が出るってことはそんなに心配しなくてもいいのかな。

あとは一般市民とシェゾール様のお付きの人たちから漏れて怪しまれるってことは心配か。

「ところで他の者が来る前にここから離れた方がよいだろうな。まだ昼前とは言え、気が急いているものがよく早めに来る。」

エラン様が苦笑いして言った。

アドル老師はひとつうなずくと侍女に片付けるように促し、箱をさっきの扉の向こうに持っていくと、中の木箱だけ持って戻ってきた。

扉の外でアドル老師が箱を受け取ると侍女はポケットから先ほどの預かっていた鍵を出し、戸締まりをした。

侍女は鍵を老師に戻し、代わりに箱を受け取った。

「さぁ、行こう。」

アドル老師が先頭に城から出る。


どこ行くの?


もう自分のことなのに着いていくしかないのがもどかしい。


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