領主の城
それから、私はアドル老師と一緒の馬車に同乗させてもらって城に向かった。
もちろんミレーナ先生や女性も一緒に乗っていたから話すことは他愛もなく、窓から見える貴族街のあの辺りは誰それの家で庭が綺麗だとか…そんな会話だった。
そういえば、紺色のワンピースのアニメ声の女性は老師の付き人だとか。
若く見えるけどももう10年近く身の回りの世話をしてるらしい。
そんなこんなで10分くらいで一の門についた。
一の門の中は領主一家や王族の血を継いだ上級貴族の住んでる地域だったはずだ。
大きいとはいえ今は王族の血を継いだ人が王領じゃなくてここにいるのだろうか?
一の門内に入れるのは貴族や高級商人やそこで働く者たちくらいだ。
トールゲン商会は最近入れるようになったばかりだった気がする。
姉の努力の賜物だ。
「アドル老師殿、そちらは?」
一の門の門番が扉を開け、老師と私を確認すると怪訝な顔をして見せた。
「通常の測定器では測れない子でな。メジャーを使わせてほしい。私の能力で力を見たのだが特に出所が怪しいところはないが、特殊能力持ちのようでな。」
「なるほど、かしこまりました。少々お待ちください。」
アドル老師が説明すると門番は静かに馬車の扉をしめた。
ここまでの間ミレーナ先生はほぼ相づちくらいしかしてなかったが、やっと口を開く気になったようだ。
「あの、セイラさんはどのような能力があると見えたのでしょう?」
おそらく私の心配をしてくれている。
少し不安そうだ。
「なに、そんなに問題になるようなことはなかろう。私が見る限りはこの国の得になるようなことやも知れぬ。いや、そうともなるとミレーナ殿の不安もあながち間違いではないが。」
アドル老師は苦笑いしながら私を見た。
どういう意味よ。
ミレーナ先生はまだ不安そうにして、私を見た。
冷静を勤めているが、きっと私より不安なんだろうな。
この同郷の老人が私を無下には扱わないだろうと思ったら私自身、不安はそう無いのだけど。
「お通りください。」
そんなこんなで数分の後に外から門番の声が聞こえて、馬車は再び動き出した。
ついに一の壁の中だ。
一の壁の中は緑豊かだった。
というか綺麗に植林された木がずらーと道路沿いに並んでいる。
その脇には林があり、その向こうにはお屋敷がいくつかある。
道が真ん中にまっすぐ続いた先が城なのはわかるが、他の屋敷への道はよくわからない。
そして、10分ほど走ると城に着いた。
城の扉の前には広場があり、右側奥に厩舎小屋がチラッとだけ見えて、広場から道が何本も延びていた。
おそらくその先が他の屋敷なんだろうな。
馬車が停まり外からあの兵士が馬車の扉を開け足場を出すと侍女が先に出てアドル老師の手をエスコートした。
さすがに段差は少し足元が危うくなってるらしい。
ミレーナ先生に促されて私はそれに続いて出た。
全員が降りると流れるように兵士は足場と扉を戻し、御者が手綱をひいて馬車は去っていった。
といっても右側の厩舎小屋の辺りに向かっているようだ。
私たちは広場からすぐに門に向かった。
ほんの数歩だ
。
「アドル老師、一の門からの知らせは来ております。」
城門の兵士がそう言って手をあげると城の扉が開いた。
おおー、城だー。
日本の城とは違うなぁ。
なんていうの?夢の国の城みたいなのを想像してたけど、それともちょっと違うかな。
どっちかっていうとドイツの堅牢な城っぽい感じというか。
あえて名前をあげるならハイデルベルク城っぽい感じ。
私が記憶にあるのは古いけど、この城は建ってからそんなに経ってないかも。
王城じゃなくて領主の城だからこんな感じなのかな?
私が目をキラキラさせて城をみてるとニコニコしながらアドル老師がボソッと耳元で言った。
「『RPGっぽいよね』」
その呟きとアドルの見た目のギャップに笑ってしまった。
きっと、久しぶりに会った日本人で嬉しいのだろうな。
計算からいうと、精神年齢は100越えてるはずなんだけどな。




