普通ではない子供
ついに私の番が来た。
ドキドキ。
ワクワク。
私は木札を渡す。
「そちらへ」
老師に魔方陣で囲われた椅子に座らさせられ、兵士が板をセットする。
老師が水晶玉に手を置いた。
淡く水晶玉が光だした。
そこまでは他の子と同じだ。
でも、水晶玉の光が強弱を繰り返す。
まるで切れかけの蛍光灯のようだ。
そして、他の子のときはなかった兆候で黒で書かれた魔方陣が紫にひかり始めた。
それを見た老師はハッとしてすぐに水晶玉から手を離した。
すると魔方陣も水晶玉もスーっと光が落ち着く。
老師と兵士が目配せをして兵士が板を引き抜くと眉をしかめて老師にそれを渡した。
老師は板のたくさん入った箱を持った女性に耳打ちをし、次に兵士にも耳打ちをした。
なに?
え?
前世のせい?
闇曜日のせい?
ちょっとイレギュラーが起こってるみたいなんだけど。
私は冷や汗をかいていた。
兵士のお兄さんが、近寄ってきた。
からだがこわばる。
周りの先生や子供達もざわざわとし始めた。
「君、ちょっとその席で待っててくれるかな?」
お兄さんはにこやかに右側一番前の席を指差した。
左側にはあの赤髪の伯爵子息が座ってる。
手に汗握りながらうなずき、指定された席に座った。
ミレーナ先生が眉をしかめながら前にいた生徒達に何か言伝てすると私の席の左に座る。
あたかもよくあることという冷静な素振りを見せているけれど、私にはわかる。
ミレーナ先生が少し緊張しているのが。
我がサレンナ校の他の子達はさっさと部屋から出ていった。
皆どこ行ったのだろう。
さっきの部屋かな。
私とミレーナ先生が座ると何事もなかったように女性が棚の一番下の引き出しをまるっと持って来た。
老師はローブのポケットに私に使った板と箱に入れた木札をとってしまい女性が持ってきた箱の中から兵士が水晶玉を取り出し、スタンドにはまってる水晶玉と差し替えた。
女性はそれを見届けるまもなく箱を棚に戻しまた板の入った箱を持ってきた。
水晶玉、あんなにあっさり取れるものだったのか。
兵士は使った方の水晶玉を老師に渡すと女性が持つ箱からまた板を出しスタンドにセットした。
老師がポケットに水晶玉もしまいながら次の子供を席に座らせる。
違う学校の子だけど、緊張してるのがわかる。
今度は普通に光って普通に終わったようだ。
老師の表情が少し緩んだように思う。
その子供もほっとしたのか嬉しそうに兵士から板をもらっていた。
そして、三列目、二列目に並んだ子が捌けていくと、最後に伯爵子息と私と大人だけが残った。
他の生徒と先生が全員が出ていったところで老師は貴族の子息に声をかけた。
「さ、シェゾール様もこちらへ」
シェゾール様はムスッとした顔でベンチから椅子に移動する。
あとは他の子達と変わらなかった。
普通に光ってカシャって音と共に終わった。
「シェゾール様、これで能力証交付はつつがなく終わりましたので、お帰りいただいて構いませんよ。」
老師がそう言うとシェゾール様は眉を潜めて私を見た。
ひぃぃ!
にらまないでよ!
「そこの平民は終わってないようだが?」
シェゾール様は無礼にも私をビシッと指差して言った。
いや、まぁ私は身分下ですし、しょうがないですよねぇ。
「そうですね。少々トラブルがありましたので、別で能力証を交付いたします。シェゾール様には関係なき儀にございます。」
丁寧に言っているが、老師はこの件には関わってくれるなと言ってるんだろうな。
顔はにこやかだけど目が笑ってない。
「気になって昼飯にも行けんわ!その娘の件が終わるまで俺もここにいるぞ。私はエンパーダ家の者だからな!最後までいるつもりだ!」
おーっと、わかってて老師の意図を汲まない気だな。
私はどう立ち回ればいいのか。
いや、従う他ないのだけれど。
「そうですか。」
老師はため息をつくと私の前に来て腰を屈めて目線をあわせてくれた。
「お嬢ちゃんの名前は?」
優しげにそう問う。
さっき木札で確認してたよね?
「セイラ・トールゲンと申します。」
その名を聞いて、老師が少しニコッとした。
その後チラッとミレーナ先生を見てまた続ける。
「サレンナ校のトールゲンと言えば、トールゲン商会の娘さんかな?」
「あ、はい。そうです。」
老師、うちのこと知ってるのか。
老師はほっと一息はいた。
なんで?
「曜日は何かな?」
確認なの?なんなの?
「闇です。」
「フム、ちょっと見させてもらってよいかな?」
そう言って老師は私の両手を握る。
なんか暖かい感覚が老師の手から伝わってくる。
体の中をそれが通っていく感覚がしてしばらくすると老師は手を離した。
ちょっと嬉しそうな困ったような複雑な顔をしている。
「これは城じゃないと無理だな。ミレーナ殿、付き添いを頼む。他の子らは帰した方がよいだろ。」
すっくと背を伸ばした老師はミレーナ先生を見た。
「かしこまりました。」
ミレーナ先生は立ち上がり老師とシェゾール様に会釈をすると足早に部屋を出ていった。
一人にさせられた!
「どういうことだ?平民なのに城のメジャーを使うのか?」
今、日本語というか外来語のメジャーって言ったよね。
シェゾール様は少しイライラしてるように見える。
「稀にいるのですよ。特に闇曜日生まれの子は魔力とは違った特殊な才能を持つ子も産まれるので、最初の発現訓練でも見つからないことがあります。」
闇曜日という言葉を聞いた辺りからシェゾール様の表情は柔いだ。
「なるほど、闇か。なら致し方ないな。」
さっきから闇、闇ってほんとなんなの?
平民の間ではよくわからないやり取りだ。
シェゾール様はひとつうなずくと立ち上がった。
「さて、腹が減った。私は一足先に帰る。」
そう言うとさっさと部屋を出ていってしまった。
老師は会釈をして扉がしまりきるのを見ると一息吐いて私の隣に座った。
「あー、お貴族様にも困ったもんだ。」
え?
すごく、キャラ変わってません?
「老師、気を抜きすぎです。」
女性が色々片付けながら突っ込んだ。
声初めて聞いたけど、クールな雰囲気とは裏腹にアニメ声なのね。
「大丈夫でしょ。ね、セイラちゃん。
『というか、君、前世日本人でしょ?』」
後半日本語なんだが。
私は開いた口が塞がらなかった。




