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能力の名はサンドボックス  作者: soumamumu
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あとちょっとのワクワク

 停留所にはもう一代馬車が停まっていて、そこにはミレーナ先生と数人の生徒がいた。クラスの子もいたけど、その子はそんなに話したことはない。

確か農家の子だから手伝いとかであんまり学校には来てなかった。

「おはようございます、先生」

「おはよう、セイラさん。まだ時間ではないですが、全員集まりましたのでもう向かいましょうか。」

おっと、私が最後だったのか。

私が周回馬車から学校の馬車に乗り換えるとミレーナ先生も馬車に乗り込んだ。

御者台に乗っているのは用務員のような雑用をするおじさんだ。

名前はたしかダンさん。

「ダンさんお願いします。」

ミレーナ先生がそう言うと、ダンさんはうなずいて手綱をひいて馬車が動き出した。

向かう先は三の壁の門だ。

三の壁の門200メートルほど手前に学校があり、その前に周回馬車の停留所がある。

停留所と学校は向かい合わせになっていて、円形の広場になっている。

バスでいうロータリーのような形だと言える。

手前側に外への道、門側に城下町へ向かう道がある。

門の10メートル手前くらいから石畳になっている。

もちろんアスファルトのようなものはないから石畳か砂利や土の道なのだが。

だから馬車を変えたとて道がまともになったとてガタガタなのは変わらなかった。

すぐに門が迫ってきた。

馬車はゆっくり動いていたのでその徐行のまますすむ。

三の門は一応門番はいるが、怪しい人でなければ停められることはない。

「あ、ミレーナさん。今日の昼飯一緒にどうですか?」

馬車はそのまま通りすぎようとしたところで門番の一人が先生に話しかけた。

いきなりデートの誘いとは。

仕事しろ、仕事。

特に他の門番は注意する素振りもなく、その様子を伺っている。

「申し訳ございません。予定が入らないとも限りませんし。」

ミレーナは無表情にそういうとダンさんも特に馬車を停めるつもりもなく進む。

すると門番はそれにあわせて街に一緒についてこようとする。

「この人数ならすぐに終わりますよ。昼までに帰ってこれたら是非お願いしますよ!」

「わかりました。帰ってこられたらということで。」

ミレーナ先生は気がなさそうだけど、別にいやがってるようには見えない。

それを聞いた門番はガッツポーズを取りながら門に戻っていった。

「あいつはミレーナ先生にぞっこんですな。もう三年もずっとあんなだ。応えてやったらどうです?」

「私は結婚する気はありませんので。」

ダンさんとミレーナ先生が小声で話してるが、馬車の生徒には聞こえている。

どうやら門番の青年がミレーナ先生を想っていて、ミレーナ先生は断っているのは生徒も知ってることらしい。

私は門の方にはあまり行かないけど、門での二人のやり取りについてはなんとなく聞いたことはあるかも。

セイラはあまり色恋に興味がないから記憶にある程度だ。

なぜ、結婚する気がないのだろう。

確かミレーナ先生は20代後半とかだったはずだ。

表情には感情というものをあまり感じない。

美人だが無表情なので生徒からはちょっと怖がられている。

馬車に乗ってる生徒は全部で7人、そのうち三人の女子が顔を見合わせていた。ちなみに女子四人、男子三人だ。

男子の方は街の様子を眺めて目をキラキラさせていた。

三人とも農家の子だ。

女子二人も農家、もう一人は村の商店の子で、残りの一人は私。

商店の子は三の門の外でも有名な美味しいと噂の大衆食堂の子だったと思う。

一人の男の子以外は別のクラスの子だからなんとなくしか覚えてない。

クラスは地域ごとで持ち上がりだからなぁ。


そんなことを考えていたら、今度は二の壁の門についた。

今度はしっかり停まる。

「サレンナ校のミレーナです。生徒の能力証交付で来ました。」

「聞いてる。生徒は7人だな。通れ」

そういえばうちの学校の正式名称ははコアナキア・サレンナ一般学校だったかな。

一般ってのは農家や商人の子が行く学校。

まれに下級貴族もお金の問題で通うこともある。

中級や上級貴族は貴族学校に通い、魔法の才能や魔法に準ずる特殊な才能のある人は魔術学校に通う。

とは言え魔術学校に通えるのは基本的には貴族の中の一握りなんだとか。

一般市民から魔術学校に行く人など特例中の特例で、セイラの記憶の限りはない。


ミレーナ先生が通行証を見せて許可されると二の壁の門もあっさりと通れたが、二の門の中は初めて入る。

中は貴族街のはずだ。

門の中に入ると、一度空は見える広場があるものの二の門にくっついた形で建物があり、その中に入っていく。

アーケードのような建物に覆われた道の奥が明るく開けているから建物の中を通っていくと貴族街なのかも。

でも貴族街が見える前に馬車は停まる。

「そんなにここに来る機会はないかもしれないけれど、公の手続きはここでできるわよ。みんな覚えておいてね。」

ミレーナ先生はそう言いながら馬車を降りる。私も含めて生徒がぞろぞろと馬車を降りる。

皆が馬車を降りたのを確認したダンさんはいつもそうしてるのだろうか、徐行でUターンすると門と建物の間の広場に馬車を停めているのが見えたところでミレーナ先生に促されて建物の中に入る。

そういえば、私たちの馬車以外にもちょっと豪華な馬車とか、いろんな馬車があったな。

そう簡単に貴族街にははいれないということか?

建物の中は明り取りに窓は大きく開かれているものの薄暗い。

魔法のある世界の公的な建物とはいえ、前世の日本に比べたらやっぱり電気がないのは大きく、ほぼランプや太陽光を利用している。

石造りの建物の装飾はそれなりにされているが質素だなという感想になってしまう。

しかも窓のガラスは歪んでいるのはこっちの世界では普通みたい。

昭和のガラスみたいな感じ。

最も一般庶民の家にはガラスの窓はあまりない。

板の窓を開けたり閉めたりしている。

三の壁の中の商店やレストランはガラス窓が普通だから、普及率から考えるにちょっと高い程度なのかも。

「早いな」

辺りをキョロキョロ見回してると、背の高い焦げ茶の髪の男性がミレーナ先生に声をかけてた。

腰に剣を下げていて、学ランのような紺色の詰め襟の服を来ていた。

制服なのかな?

「今日の生徒は馬車通学が多くて早めに来てたのよ。」

「なるほどな。今日はこっちの部屋はダメだ。あちらへ」

その男性が廊下を戻る方の扉を指差すとそれを確認してミレーナ先生は少し不機嫌な顔をして男性を見た。

「よくあることだろ?」

「わかってる。」

そう言うと先生は踵を返し少し戻ると扉を三回ノックしてすぐに開けた。

中にはいかにも庶民ぽい服装の同じ年齢と思われる子供が10人前後と引率だろう男女一人ずつの二人の大人がいた。

「ミレーナ。久しぶり~」

女性の方が手を振ってニコニコしてる。

「ミレーナ様、おはようございます」

男性の方は恭しく挨拶してる。

ミレーナ先生は私たちに楽にしてなさいと言うとその二人の方へ寄って行って談笑している。

いや、ミレーナ先生は笑ってないけど。

中に入って様子を見ると椅子もなにもない部屋だった。

前についていた子達は地べたに座ったり壁に寄りかかっておしゃべりしていた。緊張してる人は少ないけれど、興奮してるような雰囲気はある。


しばらくすると続々と子供と引率の大人が入ってきた。

どうやら一応みんな先生なのかな?

とりあえず、先生たちの近くの壁に寄りかかって休む。

先生たちは集まって何やら話している。

談笑してたと思ったら、ちょっと真面目な面持ちで話をし始めた。

「隣にいるのエンパーダ家の子息らしいですよ」

「あー、あの…。」

「素養がなかったのか…」

「でなければエンパーダ家の血をついでいるのにこちらには来ないだろう。」

エンパーダ家とか血とか素養ってなんだろう。

と思ってたらさっきの詰め襟の男性が入ってきた。

「皆、移動してくれ」

それだけを言うと、開け放たれた扉の脇に立ったのでそれぞれの先生たちが子供たちを呼び部屋の外に出ていく。

私もミレーナ先生の後について出た。


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