ベレファ邸ファーム
ベレファ邸に着くと門がしまっていることに気がついて呆然としていたら後ろからルーさんが現れ鍵を受け取った。
なんだ、ちゃんと忘れてなかったのね。
―ガチャ
私が門の鍵を開けようとしてすこし違う様子に驚いた。
誰かがここの鍵穴に油をさしといてくれたらしい。
錆は多少あるけれどかなり調子は良くなっている。
誰だろ…エラン様かな?
中に入るとやはりすこし違和感がある。
草原のようになっていた屋敷までの芝生に轍ができている。
屋敷に向かって行くうちに何か音が聞こえてきた。
メェメェとかモーとか聞こえる。
はっ!
家畜がいる!
私は私が作った玄関のドアを開け中に入り通り抜けて裏庭に行こうとしてギョッとした。
屋敷のエントランスにたくさんの家具が詰め込まれていた。
左側、右側で違う家具がある。
右はベットやソファなど、
左は棚や机や椅子などだ。
そして、エントランスに入ってすぐの場所に花瓶を置くような少し高い机のようなものかあり、そこに小さめの木札を発見した。
[セイラちゃんへ
朝はやく来すぎちゃったかな?二弾目があるので、また来ます。
アドルより]
と、日本語で書いであった。
見た目に似合わず丸文字なんだか。
別に誰かに見られたらまずいという文言ではなさそうだけど、誰かはわかりやすい。
それにしても、家具はまだいいって言っといたんだけど、遅かったかな?
それとも、エラン様の分?
まぁ、ベットは二脚だし、私以外の荷物ってことなのかも…
姉様も一緒に住むことになりそうだから二脚じゃ足りないしね。
というか、こんなに急いで用意するってそんなに焦ってるの?
そういえば、エラン様の誕生日って来月の月末って言ってたけどいつなんだろ…。
光曜日のはずだから22日かな?
その前だと15だから月末というと変な感じだし。
私はそんなことを考えながら裏庭に向かった。
裏庭の家畜の放牧場にしようとしていたところには羊と牛がそれぞれ区切られて入れられている。
一番手前に鶏が元からいて、その向こうの柵越しに羊が6頭、牛が4頭いる。
羊は顔が黒くて毛が白いタイプの羊だが、地球より大きい気がする。
一方牛は茶色くてこれまたちょっと大きい。
私が小さいから大きく見えるのかな?
それはともかくあまりに嬉しくて真っ先に能力証を開いた。
結界を開くと羊と牛は少しピクっとして固まったあと普通に動き出した。
この能力をどう感じているのだろう?
人間でもゾワッとするというから違和感には気づいているのだろうが…。
画面を見るとどのサンドボックスゲームとも違った羊と牛だった。
羊は白いもこもこに黒目が少し低い位置に描かれていて可愛い。
牛も体は大きくて茶色いけど低い位置に黒目がある。
可愛い年賀状のイラストとして使えるフォルムだ。
カーワイイー!
さて…
仕事するか。
倉庫から麦を多めに取ってきて、マコトちゃんの手に持たせると羊と牛が画面上はいい勢いでよってきたが現実ではフラフラ~っとなにかに操作されるように近づいてきた。
それぞれの羊や牛がある程度の距離を保つところで静止した。
そして、羊に小麦をあげる。
サンドボックスゲームだと羊なら羊、牛なら牛同士に小麦を上げるとハートマークが飛び交い繁殖状態になり、ポコンっとそれぞれの子供一匹がすぐに誕生する。
方法は一匹に麦を上げるとハートが飛び交うのでその間にもう一匹にもあげるとキスするように向かい合って、その間に子供が産まれるわけだが…
現実ではちょっと違っていた。
画面上はゲームと同じようにエフェクトが出るが、リアルではその二頭の周囲に白いモヤがかかり、一瞬紫のモヤにボヤーっと変わった後白にボヤーっと戻った。
中がどうなっているかは見えない。
チリンと音がして画面上にこれまた可愛い小さい羊が誕生した。
リアルではモヤが薄れていき二頭の体だろう部分だけ薄い白いモヤが抜けきらず、それに加えて二頭の間にはもっと濃いモヤの何かがある。
これ、子羊?
私は画面上はゲームとかわらないので他の羊にもあげた。
6頭全員モヤに包まれたところで4頭いる牛もやってみた。
こちらも画面上は可愛い牛が生まれて、リアルでは二頭分の濃い白いモヤが残る。
そこまで終えて羊の方を見ると最初に番わせた二頭のモヤがなくなっていた。
鶏の繁殖したときもこうだったかな。
鶏はリアルの状態をあまり見ないでやっていたから気が付かなかった。
鶏も可愛くデフォルメはされていたけどね。
まるでこの能力証に出てくるモブは私がこう見えたら可愛いのにな…という見た目で出てくる。
あ、そういうことなのか…
私の理想や願望でそう見えるようになっているのかも。
リアルでは変わらないのだから。
考え込んでいると大人の羊はみなモヤが消えていた。
でもみんな虚ろに立ち尽くしている。
ためしにマコトちゃんの持っているものを小麦から斧に変えると様子を伺うようにしてマコトちゃんと距離を取ろうと逃げていった。
また小麦に持ち変えるとまた虚ろに近づいてくる。
怖!
ちなみにその間も濃いモヤは生まれた場所に留まり続けていた。
私は試しにコンバートしてみる。
するとそのあたりにいた羊や牛は何があったのか覚えていないかのように様子を伺った後草を食べ始めた。
そして肝心の濃いもやは…
濃いモヤは晴れて子羊が寝ていた。
ちゃんと子羊がいる。
子牛もいる。
でも寝てる。
死んでいるのではないと思う。
胸のあたりが動いているから息はしているようだ。
もう一度能力証で展開をすると成獣の羊と牛はビクッとして様子を伺っている。
そして子羊と子牛は白い靄に包まれた。
うーん。
なんとなく、とても怖い能力だな。
でも羊毛も牛の毛皮もほしいしなぁ。
羊毛の方はいいとして牛は殺さなきゃいけない。
なんだか怖い力だなと思いながら、まだ殺さないし…と言い聞かせて繁殖を続けた。
どうやら繁殖後数分待つとモヤが消えてまた繁殖できるらしい。
パイオニア版のゲームでも再び繁殖するには5分とかかかり、子が成長しきるには20分ほどかかるという設定だったはずだ。
途中で畑の小麦も取っては植えて、家畜にあげた。
4の鐘が鳴る、正午ごろまでと思って作業をしていたけれど増えすぎて狭そうになったので鐘がなる前にやめ、他の作業をしつつ子たちが育つのを待った。
現実的にはこれ以上になったらストレスとか踏まれて死ぬ子がでそうだしね。。
大体数えると羊は25頭くらい。牛は15頭くらいかな?
そして、鉄でハサミを作り羊毛を刈った。
子羊もいるからそんなに取れないけど、草は結構育っていたからそこそこ取れる。
ある程度刈り取ったところで、一度コンバートしてみた。
子羊の表示だったものは寝ているが、成獣になったものは普通に起きてウロウロしていた。
え…っと…
成獣が倍以上になってるんだけど、違和感はない。
これなんか世界の理を壊してない?
大丈夫?
元々の牛の一頭のおしりのあたりに少し色の薄いクリーム色のハートっぽいブチがあったんだけど、よく見るとそれと同じブチが4頭ほどいる。
他の牛や羊のそれぞれ特徴を見ても同じようなのが数頭ずついるように見える。
もしかして、クローン…
番から新たに生まれてるのではなく、どちらかのクローンが産まれるのかな?
クローン羊ドリー…
誕生当初は人間に適用も可能ということで倫理的に問題視されていた。
私がまさかその局面に立とうとは…
でもたしかクローンって一卵性双生児のようなもので、環境なんかの外的要因で大人になると全く別人になってしまうらしい。
でも、羊と牛…だしね…。
人には適応…しないよね?




