収穫祭へ向けて
翌朝、エラン様はいつものように迎えに来た。
しかも少し早く来た。
学校に寄るから乗り合い馬車のつもりだったんだけど。
しかも服装は平民の格好ではなく貴族っぽいラフな格好だ。
白いシャツに紺の長めのベストを付け、ベストと同じ色の乗馬ズボンをはいていた。
平民の格好のときは結構ダボダボなズボンだったけど、貴族の服って比較的ピッチリしてるから馬に乗りにくそうだなとは思ってたんだよね。
スカートはスカートでまたがるときに引っかかるしひらひらするからお尻の下にスカートをひくか抑えてないと心配になる。
私が乗馬ズボンだな…と見てるとエラン様が苦笑いして言った。
「セイラちゃんも馬乗りづらいよね。明日からは馬車を用意させるよ。」
「あ、いえ、構いませんよ。なれてきたので。」
慣れてきたってどんないいわけだと思うけど、スカートでの乗り方に慣れてきたのは確かだ。
「実は明日からしばらく私が迎えに来れないかもしれないから…。」
迎えにわざわざ来てもらうのは申し訳ないな…と乗り合い馬車で行けると笑顔で言ったら、私の護衛も兼ねてるからと馬車でなくとも送迎だけは譲らなかった。
少し緊張の色が見える。
何かあった?
そんなやり取りの後で馬に乗せてもらった。
学校にはついたが、道を変えて学校の裏の林側に降ろされた。
「ルー、いるか」
私が降りたところでエラン様が林に向かって喋りかけた。
「はい、こちらに」
そう言って出てきたのはヨーに似た顔の女性だった。
ヨーは栗毛、フィーも焦げ茶の髪で地味だったが、このルーという女性も少し薄めの栗毛色の髪をしている。
顔は比較的美人だと思うけど、濃さはない。
兄弟?
「頼むな」
エラン様はそう言うとそのまま去ってしまった。
なんだか焦っているようだった。
「はじめまして。セイラ様、ルーと申します。アレッサンドロ様からセイラ様付きの護衛として任命されました。本日より任務につかさせていただきます。影より見守らさせていただきますので、気にせずお過ごしくださいませ。では…」
ルーさんはほぼ早口と言っていい口調でまくし立てたあと、消えた。
きっと木の上とかなんだろうけど、まるでかき消えたように移動したのでかなりビックリした。
ヨーさんよりすごそうな気がする。
「よろしくおねがいします。」
どこにいるかわからないルーさんだが、聞こえるだろうと普通に喋る程度の声をかけると学校に向かった。
そして、迷わず生徒指導室へ向かう。
クラスは囲まれそうなのでよらなかった。
「あら?セイラさん、どうされたんですか?」
生徒指導室にノックをして入るとすでにミレーナ先生がいた。
どうやら何か書類仕事をしていたのかたくさんの木札に囲まれていた。
「すみません。お忙しいところ。収穫祭についてなんですが詳細を知りたくて」
「あぁ、そうでしたね。それぞれ他の二人にはすでにお伝えしたのですが、…えっと…ここに…」
そう言ってミレーナ先生はある木札を棚から取り出そうとした。
だが棚の他の木札が引っかかってなかなか出てこない。
早く植物紙を広めたい。
ギュウギュウに詰まっていたらしく他のものを左右に押して隙間を作るとやっと出てきた。
それを手渡された。
「基本的には自主練になりますがそこに書かれた日が全体練習があるのでできれば参加してください。あと、衣装は貸出になりますので早いうちに書かれている衣料品店に行ってくださいね。その木札を持っていけば対応してもらえるはずです。何か質問はありますか?」
あれ?私やるって言ったっけ?
「あの、私が参加すると誰かから聞きました?」
「セスティリス様から聞きましたよ?見事な舞だったと言ってました。」
なるほど…って、え?セスさんと直接話したの?
「セスティリス・ジュールベルさんですか?」
なんで?
あれ?そういえばミレーナ先生って貴族に知り合い多いのかな?エラン様とも知り合いだったけど…うーん。
「あぁ、話してませんでしたね。」
私が不思議な顔をしてたのに気がついたようだ。
「私は貴族の出ですが、諸事情によりこちらで働かせてもらっているのですよ。ですから貴族との連絡役は私がさせていただいてます。」
え?貴族の出?
いや、なら納得かも。
「そうなのですね。」
それ以上事情を聞くのはなんとなく憚られたので私はお礼を言うとそそくさと部屋を出てしまった。
諸事情ってなんだろな。
でも聞けない。
でも気になるー。
私は校舎を出たところのトルー鉱石のハマった四角い石に腰掛けた。
それが儀式で光を放つ石なのは知ってるんだけど、前からよく座って待ったり休憩したりしてたから気がついたら座ってしまっていた。
そこで、木札を読んだ。
全体練習は5月13、17、22、24、26日と書かれており27日に予行演習、28日に本番だ。
あれ?ってことは本番は闇曜日なんだ。
あとは、衣料品店は3の壁内の店だ。
そこそこの規模のお店で結婚式とか葬式とかの貸衣装や中古の服も扱ってたはず。
私は行ったことないんだけどね。
先に面倒事は片付けておくか。
私は立ち上がると学校の表の門を出て歩き出した。




