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能力の名はサンドボックス  作者: soumamumu
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誕生日は婚約晩餐

翌朝、家の周りはバタバタしていた。

領主からの使者が来たからだ。

正式に婚約とベレファ邸の譲渡が決まったらしい。

仕事が速いな。


というか、アレッサンドロ様は本当にこの婚約に賛成なのかな?

ただの商家の娘なんだけど。


流石に使者が来たため従業員やご近所さんには知られてしまった。


そして、私が姉に呼ばれてお下がりだけど見栄えのする服を選んでいたときにアリンとネイとイルカがやってきた。

「「「領主の息子と結婚ってどういうこと!?」」」

第一声がそれだった。

「あぁ!その前に誕生日おめでとう!はい、これ!みんなで集めた花束ね!」

とアリンが興奮しながら花束を押し付けてきた。


赤白黄色きれいだな。


「「おめでとう」」

ネイとイルカがちょっと不機嫌そうに祝ってくる。

「そんなことより、結婚なんて本当!?」

とネイは少し怒ってる気がする。

珍しい。

何でも話せる仲だったから隠してたことを怒ってるのかな。

「なんで…まだ10歳なのに…」

イルカは少し悲しそうだ。

「しかも領主の息子なんてすごい玉の輿ね」

とアリンだけは素直に私の門出を喜んでくれてる。

ネイはアリンの言葉を聞いてハッとしたあと悲しそうな顔になった。

「本当は結婚したくない…とかない?」

ネイは私の顔色を伺っているが一番切羽詰まったような顔をしている。


「ううん、大丈夫だよ。実は色々あってね。」


私は3人に前世のことは省いて特殊な能力に目覚めて、エラン様と出会って領主と契約することになったこと、

そこからエラン様との婚約がトントン拍子に決まったことを告げた。

「何か利用されてたりとかはしない?大丈夫?」

喜んでくれていたアリンも心配してくれた。

その心配に関してはネイもイルカも一緒だったみたい。

「大丈夫だと思う。エラン様はすごくよくしてくれるよ。それにめちゃくちゃイケメンだしね。」

そう言うとネイがショックを受けたような顔をしていた。

なんでだろ?

イルカはそれなら仕方ないですね…と寂しがっているが納得はしたらしい。

「好き…なの…?」

ネイが震えるような声で聞いてきた。

「うーん。好きといえば好きかな。」

それを聞いた途端ネイは部屋を飛び出していった。

「あー…やっぱりそうだったのか…」

そういったのはアリンだった。

やっぱりとは?

私が頭に疑問符を並べているとアリンはため息を吐いて説明し始めた。

「たぶんネイ本人も気がついてなかったけど、ネイはセイラのこと女の子として好きだったんだよ。」


「えええ!!?」


全然気が付かなかった…。

イルカはなんとなく気がついていたみたいで、本当のお姉様になるかもと思ってたのに…なんてことを言っていた。

追いかけなくていいかと聞いたらイルカは私が慰めておくので気にしないでくださいと帰っていった。


その後残ったアリンは姉と一緒になって私の服や宝飾品を選んでくれた。

すごく楽しそうだった。


マネキンと化した私は午前中いっぱい二人にもてあそばれた。


そのタイミングでアリンは家業ではなく服飾関係の工房に就職が決まったと聞いた。

というのもアリンの家は糸を作る麻のような植物も作っている家で、そこから織物に興味を持ったらしい。

糸を下ろす先の工房で試しにやったら筋が良かったらしい。

あと、その工房で織り機の調子が悪いことを見抜いてすぐに治すことが出来たとかで気に入られたそうな。


ついでに言えば、その工房、卸先はトールゲン商会のみである。

まぁ、つまり工房はうちから目と鼻の先にあったりするわけだ。

家業じゃない人も生まれ育った場所から遠くに仕事を見つけることは滅多にないんだよね。


その後、アリンは帰り、昼食を食べると今度は両親とメリーさんは食材を商会倉庫に確認し取りに行くことになり、私と兄と姉は部屋の飾り付けをした。

みんなからもらった花は野の花で素朴だったので廊下の花瓶にちょこんと飾り、食卓の中央にはバラのようなダリヤのような豪華に見える赤い花を飾った。

確かサリナとか言ったかな。

たぶんこの世界特有の花なんだろうな。

貴族の結婚や婚約時の晩餐のテーブルクロスやカトラリーは白を貴重としたもので、赤の花などで差し色をするのが習わしらしいけど、配色が日本ぽいなって思った。

まぁ、赤の割合のが少ないんだけど、懐かしくて仕方なかった。


ちなみにそういう貴族の習わしに従えたのはカエラが貴族の服飾関係を手掛けていたからだ。

倉庫にはすぐに貴族に答えられるように常に白いテーブルクロスなどが用意されていたし、赤い花は季節ごとに用意できるように農家を確保しているらしい。

その農家の中にはネイの家も含まれていた。

ネイの家は別に花専門の農家ではないのだけど、秋頃に葉が赤くなる木が生えている。

紅葉みたいに色が緑から赤に変化するんだけど、形はハート型のアンスリュウムみたいな葉っぱで可愛い木だ。

秋は花じゃなくてその赤い葉を飾るらしい。

それもおしゃれだね。


そして、すっかりそのあたりの装飾を終えた頃にはメリーさんは両親に手伝ってもらい料理の腕を振るっていた。

細々とした料理が並び揃ってきたところで姉がそっと飾り棚からエラン様の布の花の乗った皿を机に置いた。

場所はお誕生日席。

いつも父が座っているところだ。

たぶんここがこの世界の上座。

「セイラは今日はここね。えーと、こっちが父様で…母様で兄様で…私…」

と全員がそこに立って姉の話を聞いている。

「俺はここな…緊張する。」

と父が呟くとみんなが緊張してるのかうなずいた。

私も伝染して緊張してきた。

「でも今日はエラン様だけですよね?」

私がそう言うと姉はキッと擬音がつきそうな勢いで睨んできた。

「確かにエラン様だけだけど、表向き正式な場ということになるわ。しかも婚約晩餐よ!一度ある貴族の裏方として厨房から覗いたことがあるのだけど、もう緊張感がすごくて…」

その姉の言葉に両親はすくみあがっている。

「ほんとに大丈夫か?うちは商家だし、セイラはお転婆だし…」

父は顔色が悪く呟く。

お転婆は余計だよ。

それに前世を思い出したのでお転婆は少しなりを潜めてるからご安心ください。

「でも、断るのもおこがましいしねぇ。本当にアレッサンドロ様はこんな娘で良いと思っているのか…」

そういったのは父よりは肝が座ってるのか多少は緊張はしているがバッチリ化粧をしてる母だ。

ほんとにね。

アレッサンドロ様には一度会ったけどいいのかな?


―チリンチリーン!


その時だった。

玄関の呼び鈴が鳴った。

まだ約束の時間にはかなり早い。


と思ってたら玄関に対応に出たメリーさんが食卓に飛び込んできた。

「ア…アレ…!アレッサンドロ様!…領主様!領主様が!」

私がその声に素早く動いて玄関に向かう。


まさにアレッサンドロ様がそこにいるではないですか!


「ど!どうされたんですか!?」

私は思わず声が出てしまった。

「いやー、ごめんね。どうしてもって言うから婚約晩餐の前にご挨拶に…」

と言ったのはアレッサンドロ様の後ろに隠れてたアドル老師だった。

「アドル老師まで!?」

「いや、そんなに驚かれるとは思ってなくてごめんね。一応息子の婚約者と家族に挨拶もしないのはいけないなと思ってね。」

とアレッサンドロ様。

めっちゃヘラヘラ笑ってるんだが。

これが領主か…。

この領大丈夫か?


とりあえず、アレッサンドロ様とアドル老師を応接間に通し、メリーさんにお茶を入れてもらった。

こちら側は両親と私が座り、兄姉は後ろに立っている。


アレッサンドロ様とアドル老師は向かいに並んで座っている。


「えー、この度は娘さんをアレッサンドロの息子、エラン様の婚約者として迎えることができることを喜ばしく思います。」

とはじめの言葉を言ったのはアドル老師だった。

なんか緊張してる?

私は思わず吹きそうになって横を向いた。


「『笑わないでよー。こっちも名付け親みたいなものだから緊張してるんだよ』」

アドル老師はコソコソと苦笑いして日本語で話してきた。

ちなみにアドル老師は私の目の前にいる。

ローテーブルはそんなに大きくないので乗り出せば耳打ちできる距離だ。

「『すみません。』」

私も苦笑いで謝った。

「ふたりともコソコソ話してないでよ。」

アレッサンドロ様が少しふてくされてこっちを見ていた。

「「失礼しました。」」

私とアドル老師は居住まいを正した。

後ろの方で姉がよくそんなリラックスできるわねとぼそっと呟いた。

なんででしょう…私も不思議です。

誠子の時は上司の前では萎縮しっぱなしだったんだけどな。

「さて、この度はセイラちゃんとエランの婚約を了承していただき、とても感謝しています。」

と、アレッサンドロ様が言った途端両親はリアクションしないように気をつけていたようだが驚いていた。

「実はここだけの話だが諸事情により、領民の誰でもいいからエランの魔力と釣り合う女性を探していたのです。15になるまでに見つからなければちょっと面倒なことになるところだったので、本当に感謝しています。ありがとうございます!」

領主にしては本当に気さくな人だが、うちの両親に頭を下げるとは思わなかった。

両親はというと少し驚きすぎて顔を白くしている。

何が起こっているのかわからないというような表情だ。

それにしても15までに見つからなかったら面倒なことにってどういうことだろ?

「それで、エランの誕生日なんだが、来月末なので、それまでに既成事実…じゃなくて、一緒に住めるようにすすめて欲しいのです。娘さんはまだ10歳なので一緒に寝食を共にして仲睦まじいということが内外に示せればそれで構わないので誰か保護者が一緒で構わないんです。お願いします。」

アレッサンドロ様は深く頭を下げた。

なぜ領主をここまでさせるのか。

どんな事情があるんだろう。

両親はお互いに目を見合わせた。

「アレッサンドロ様、頭をお上げください。領主であるあなたがこんなしがない商人にそこまでへりくだらないでください。娘の件はそれで構いません。一緒に住まわせていただけるのであればカエラをお連れください。とは言っても仕事で行ったり来たりするとは思いますが彼女はちょうど貴族向けの商材を扱っておりますし、ちょうどよいと思います。」

父は緊張しつつも真面目に答えた。

「ありがとう!ほんとにありがとうございます。」

アレッサンドロ様は本当に嬉しそうに笑顔で感謝の言葉を述べていた。

それを見た両親はアレッサンドロ様に笑顔を返した。

「ではセイラさんと保護者としてカエラさんがベレファ邸に住まれるということで少々話をしても良いですか?」

アドル老師が少し緊張を解いて両親に言うと二人と心配そうに見ていた兄が後ろ髪引かれながら出ていった。



「それにしても、なぜわざわざいらしたのですか?婚約晩餐に招待させて頂いたのですからセイラの婚約は追々正式に書類を交わせば良いだけですのに…」

姉は両親が座っていた席についたタイミングで疑問に思っていたことを口にした。

どうやら姉も緊張は少し解けたようだ。

「あぁ、そうですね。それは私から説明しましょう。」

アドル老師のその言葉でアレッサンドロ様はちょっとバツが悪いような顔をした。


なんかやらかしたんだな、この人。


明日は一日お休みさせてください。

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