書斎にて
夕飯までの間、私はリビングや客間やキッチンをひたすら情報を探して歩き回った。
メリーさんには怪訝な顔をされて声をかけられたけど、物を失くしたから探してるけど気にしないでとごまかした。
メリーさんに一緒に探しましょうかと言われて焦ったけど、そこは適当にごまかした。
色々歩き回った結果、客間の裏にある書斎が一番情報がありそうだった。
書斎と言っても、重要な書類の羊皮紙は鍵つきの棚の中なので、最低限商売に必要な資料が木簡として棚に並べられているくらいだ。
そもそも家族が仕事していることはこっちの棟ではほとんどないので、たぶん、子供たちが勉強としてみられるように置いてくれているのだろう。
まぁ、本と呼べるようなものは見当たらないのだけど。
書斎の壁には周辺諸国の地図がかけらていて、ちょっと年季が入っている。
客間の地図より古い地図のようだ。
とりあえず、ちょっと地図を眺めてから棚の木札を左端の上から読んでいく。
「あら?セイラがこんなところにいるなんて珍しいね。」
一番上の棚を半分ほど読んだところで後ろから姉に声をかけられる。
姉は15歳で、家業を手伝っている。
名前はカエラ。
髪の色はセイラよりも暗いブロンドで瞳の色はヘーゼルだ。
自らすすんで、服飾関係の仕事に取り組んでいる。
作ってるわけではなくあくまで商人として良い工房とこのあたりのお貴族様との顔繋ぎといったところか。
家族で一番に3の城壁内に住みたいと言っている人だ。
貴族ほどではないけれど、良い服を着てアクセサリーもほどほどに身に付けている。
化粧は目尻と口に紅をつける程度だが、元々華やかな顔つきな上に色白なのでよく映える。
セイラはどちらかというと清楚な顔つきで、ガッツリ化粧をすると別人になるタイプかもしれない。
姉の今日の服は、グレーに近い水色のワンピースだ。
日本で見る水色に比べると発色はいまいちな気がするけど他の人たちに比べると上等な物を着てるのが一目でわかる。
髪は赤いリボンで一つに縛っている。
たしか父から誕生日に貰ったものだった気がする。
ベロアのような光沢がある。
絹なんだろうか。
絹ということは蚕か蚕のような糸を出す生き物がいるのか?
「どうしたの?まだ具合悪い?」
私が姉の服装や情報を考えながら眺めてたら怪しまれた。
いかんいかん。
「大丈夫だよ、姉さん。もうすぐ能力証もらうからうちの仕事の勉強しなきゃって思って姉さんの服装とか見てたの。」
「そう。これは大したものではないけど貴族相手に仕事をするともなると清潔感は必要だしね。でもあなたは服飾関係には向かなそうだから、兄さんの手伝いをした方がいいんじゃない?服は私が選んであげるから。」
「それもそうだね」
セイラは服のセンスはあまりないし、本人も興味はない。
むしろ食べることと体を動かすことが好きだ。
前世の私は食べることは好きだったけど、会社勤めのせいで運動不足だったなぁ。見事にポッチャリだった。
でもそれも気にならないほど仕事がハードで死にたいと思ってたけど、まさか異世界に転生するとは。
しかも、絶世とは言えないまでも、美少女だ。
せっかくなら着飾ってみたいな。
「姉さん、私クローゼットにこの服以外の女性らしい服ないんだけど、どう思う?」
カエラは書類を探しに来たみたいだけど、手を止めて私をまじまじと見た。
「素材はいいのにもったいないと思うわ。あなたがろくなものを着ないから母様がそれをしつらえてくれたのは知ってるけど、城下町の娘にしたって地味よね。」
「そっか。」
やっぱそうだよね。
前世地味子の私でも地味だと思う。
それなりに歳を重ねたから結婚式用のドレスやデート用のおしゃれ着くらいはもってた。
この世界でも白いブラウスに紺のスカートのセットしかもってないのは普通の女子ではないかもしれない。
いや、でも農家の子は古着とかあるものを着る感じの子も多いから、商家の娘としてはということなんだけど。
「あなたが欲しがらないから、あげてなかったけど、私のお下がりでよければ後で持っていってあげるわ。クローゼットがいっぱいになってきたから処分しようと思ってたし。」
「ほんと?ありがとう」
結構嬉しい。
カエラもちょっと嬉しそうに微笑んでいる。
カエラってこんな風に笑うんだ。
なんでだろ、今まであまり見たこと無かったなぁ。
「あなたと服飾の話ができるなんて嬉しいわ。せっかくの妹なのにってずっと思ってたのよ。」
「あ、ごめん」
「いつまで走り回ってるのかって心配したわ」
それは姉さんのせいだって。
いや、半分はセイラの負けず嫌いのせいだけど。
そういってカエラは必要な資料を持ち出すと部屋を出ていった。
左上の方にあったから読んだ木札だ。
たしか染料についての資料だったと思う。
そのあとも続きを読んでいった。




