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能力の名はサンドボックス  作者: soumamumu
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貴族の婚約

上に戻るとエラン様が地下にあった物の件は人に話さないように…と釘を刺された。

一応領主に話してみてから決めるそうだ。

金庫の中についても預からせてほしいとのこと。

「いいですよ。金庫の中身全部持ってってください。」

「え?!全部いいの?結構な金額になるよ?」

「え?でもトルー鉱石とか『ブラマイ』してたらそれなりに取れそうですし…」

「ぶらまい?」

「あー、効率的な鉱石の掘り方のことなんですけど…」

私は思わず前世の記憶のまま話してしまった。

ブラマイはブランチマイニングの略。

やり方は色々あるけど、高さ約11で枝のように掘る方法。

この世界では高さを固定すると取れるものが変わりそうだからもうちょっと複雑だけど、たぶんやり方はそんなに変えなくてもいいだろう。

ただ、場所は選ばないとコンバートした後で崩落しそうなので、本格的にやるなら別の場所を探したほうがいいかもなぁ。

そういえば、地下に空間あったから洞窟探索の方が効率はいいかもしれない。

「元々、ここのものはあくまで管理はしていたけれど買い手がついたら何か財産があってもすべて買い手に譲渡する手筈になってたんだよ。あくまで所有者不在で預かりになってたんだ。だから正式に君やトールゲン商会の所有になるということで話は進んでたんだけど、あの金庫の前室…あの部屋には秘匿物品が多すぎる。だからそれとそれに関する物品は預からせてほしい。一部金庫にもあったからね。」

あれ?金庫にそんなものあったっけ?

「とりあえず、父上と一回確認して、そういうものだけ回収させてほしい。他は自由にしていいから。」

そうとうやばいものでもあったんだろうか。

そういえば、裸の宝飾品を見て怪訝な顔してたな。

あれかも…

うーん、わからない。

「わかりました。…でも、ほんとに全部持ってってもらってもいいんですよ。領の資金の足しにしてもらってもいいですし、寄付って形でも。」

私がそう言うとエラン様は笑った。

「ほんとセイラちゃんは欲がないね。」

「別に欲がないわけじゃないです。私が欲しいのは私が好きな人達が笑ってる未来ですし、あえて言うなら美味しいものが食べたいです!」

そう言ったらエラン様がケタケタ笑っていた。

食べ物重要でしょう?


その後、エラン様はフィーを護衛に置いて一時城へ戻っていった。

5の鐘は鳴っていたから6と半の鐘までには戻ると言っていた。

 その間私は裏庭の方でまた植物類の管理と倉庫整理をするとマコトちゃんを倉庫の地下への道を通って以前ルオロンがいた洞窟に向かわせた。

フィーはどうやら倉庫の屋根の上に陣取ったようだ。


マコトちゃんがトルードアを通って地下洞窟へ入るととりあえずそのあたりに松明を焚いた。

近いところにはルオロンはいないようだ。

あたりを見回すと、黄色く光っている鉱石がそれなりにあって、青い光がちらほら見える。

それ以外にも光が当たると金色や銀色の物が見える。

結構近場で取れそうだ。

気をつけながらそれらを掘った。

洞窟の形状は長細くて左は少し手前から右は奥側に進んでいる。

わかる範囲で表すと“イ”の縦棒が私の掘った階段部分だ。

その右側に向かって進みつつ松明を設置しながら鉱石類を掘った。

しばらく行くと広い空間に少し出たあと左側に折れてくねくね上がって下ってという道が続いた。

その間も見かけた鉱石は掘っていたら手持ちがいっぱいになって戻った。

どうもトルー鉱石を掘るとそのあたりにアミュティリス石がまとまって取れてしまう。


他の鉱石もそれぞれまとまって取れる。

今の所トルー鉱石、アミュティリス石、石炭、鉄、金、銀、銅、が取れる。

そして、このあたりを掘ってて気がついたのだが、時々普通の岩石表記のところを掘ると鉛や亜鉛、黄鉄鉱などなど聞いたことはあるが利用法がわからない他の鉱物が時々出るのがわかった。


表記上はただの岩石だけど、実際に見ると鉱石の山なのかもしれない。


地球では実際どうなのだろうか。

トルー鉱石はそもそも地球には無いもののようだし、そもそも理が違うのか?


戻る頃には日が傾きかけていたので、倉庫を整理してのんびり植物類が育つのを見て過ごした。


倉庫増やさないと行けないかな…


と思ってたところで、エラン様が戻ってきた。

エラン様の話ではアレッサンドロ様に話を通して確認するまで数日掛かりそうだとのこと。

というのも明日は闇曜日だから休みなんだそうだ。

なるほど、そういえば明日は私の誕生日です。

「ところで、明日は予定あるの?」

とエラン様が笑顔で聞いてくる。

「特にありませんが、家族と過ごす予定ですよ。いつも誰かの誕生日の日はメリーさんが腕を振るってくれるので、夕飯が少し豪華なんです。」

と、言っても私の記憶を巡らすと新鮮な鳥の丸焼きや季節の果物がたくさん並ぶという印象だ。

私の誕生日はガランと早生のりんごが並ぶこともある。

あんまりりんごは美味しくないけどね。

遠い地域から取り寄せた他の柑橘やプラムのようなものが並ぶこともあるけど、流通次第。

「そうか…」

エラン様は少し残念そうだ。


 その後、私を送るために馬に乗っている間何か考え事をしていた。

は!

そうか、いわば婚約を決めた男女の誕生日ってあまーいイベントがあるものなのか!

って、まだ10歳だよ?


家についた頃、厩舎では兄が馬の世話をしていた。

ドンは満足そうに水を飲んでいる。

「ただいまー、兄様!」

私が兄に向かって笑いかけると兄はよしよしと頭を撫でる。

「おかえりー。エラン様、ありがとうございます。」

「いえ、遅くなりましてすみません。あの…その…」

私と兄様がエラン様を見送ろうと並んで立つとエラン様が何か言いにくそうにしていた。

「明日…なんですが…」

なんだかもじもじとしたエラン様、子供らしくて可愛い。

「あぁ、セイラの誕生日ですね。母さまとカエラが大したもてなしはできないかもしれないけれど、招待したいと言ってましたよ。貴族の礼儀は把握しきってないですが、これを…」

そう言って兄は馬具を置いてある台に置かれたバックから比較的上等な白い布に包まれた何かをエラン様に手渡した。

エラン様は黙って受け取るとその中を確認した。

中には赤い紐が巻かれた手のひら大の木札が入っていた。

それを見たエラン様の目が潤んでいる。

なんか意味ありげなんだか…

「失礼します。」

その中を取って裏を確認すると台のところに行き開いてる場所で布を折ったりくるくる巻いたりし出した。

何をしてるのかと遠目に覗いた頃には何かが完成したようで、それを手に乗せて兄に見せてきた。

「明日、花をいただきに参ります、とお伝え下さい。」

「かしこまりました。」

兄はそれをそっと受け取るとエラン様は赤い紐が巻かれ結ばれた木札を胸ポケットに入れて、軽く会釈した。

その後エラン様は颯爽と馬に乗って去っていった。


「兄様、今のなんですか?」

「正式に婚約をするための嫁側の貴族の礼儀らしいよ。」

ほう…。

兄の手の中にはバラのような花を模した白い布がある。

可愛い。

「さ、崩さないように戻らなければ…」

兄はそれをそっと運び家に入って姉と母に告げていた。

後で姉に意味を聞いた。


姉は詳しい意味は知らないらしいが、貴族間では婚約の話が持ち上がると了承の証として女性側の家族が男性を誕生日とか始まりと終わりの日とかの記念日の晩餐に招待する。

白い布に招待状となる木札を赤い紐でぐるぐる巻にした状態で包んで渡し、了承した場合白い布で花を模して折ったものを相手方の家族に渡す。

家族は晩餐の男性の席の机に置いて歓迎する。

その際、その布の花を崩さないように置くのが礼儀らしい。

そして、婿となる本人は自分の折った花を解き持ち帰る。

それまでに崩れてしまった場合は縁起が悪いとして、その晩餐は延期されるらしい。

場合によってはそれでその婚約がなかったことにされることもあるらしい。


 姉は明日使ううちでも上等な小さめの皿にその白い布の花を置いた。

食堂の飾り棚には両親が気に入っていた帝都のお土産らしいよくわからないブロンズのオブジェがあったけど、姉はそれをどっかにやると皿ごとエラン様が折った布の花を置いた。

姉はえらく満足げだったけど、両親は複雑そうだった。

あのオブジェはなんか思い出補正でもかかってるんだろうな。


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