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腐海  作者: 遠野麻子
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ざばぁ

 米田さんは夜食にカップ焼きそばを食べるのが習慣になっている。

 身体に悪いのは分かっているが、ネットゲームにネットサーフィンと遅くまで起きているので、夜中に小腹が空くのだ。


 その日も米田さんは遅くまでネットゲームを楽しんでいた。画面の向こうの仲間たちと、冒険に出かける。その日は自分たちのレベルより少し高めのダンジョンでボスに挑んでいた。米田さんの役割は前衛だ。剣を振るい、敵の攻撃を一身に受ける。それを仲間たちが援護してくれていた。


 米田さんは前衛という役割が好きだ。敵に目掛けて一目散に飛び込んで攻撃を放つ。おおざっぱなところのある米田さんは、ゲームを始めて間もない頃はよくそれで死んでいたが次第に操作にも慣れていった。

特攻型だよね、とゲーム仲間は米田さんのことをよくそう言う。


 日常生活でもそうだった。米田さんは大学でテニスのサークルに入っている。米田さんのプレイスタイルは攻撃型で、球にくらいついて力強いショットを返す。チャンスがあればすかさずスマッシュを狙っていた。


「『もうすぐだよ! riceさんがんばって!』」


 仲間のチャットが見えた。riceは米田さんのキャラクター名だ。「米田」の「米」を英語にしただけの単純な名前だ。

 攻撃を省火力に変えてスキルゲージを溜める。恐らく次に大きい攻撃を放てば倒すことができるだろう。数秒後、マックスになったスキルゲージを一気に攻撃に転換させた。


「『やったぁ!』」


「『倒せたね、すごい、すごい!』」


 画面の向こうの仲間たちと喜び合う。


 気がつけば、ゲームを始めてから2時間ほどが経っていた。小腹が空いた。


「『ちょっと夜食食ってくるよ』」


「『また焼きそば?』」


「『身体に悪いよー』」


 そんな仲間たちのチャットを確認し、米田さんは席を立った。

 ポットのお湯を注ぐ。散らかったテーブルの上を少し片付けた。


「そろそろかな」


 特に時計は見ていないので、大体の見当だ。20秒や30秒違ったところでたいしたことは無い。米田さんは容器を手に取り、キッチンに向かった。


――ざばぁ


 湯切り口からお湯が流れ出す。

 すると、するっと黒いものが流れ出るのが見えた。


「ん?」


 更にするする流れ出てくる。それは髪の毛のように見えた。


「髪の毛か? なんでだ?」


 するすると出続ける髪の毛。

 ぽこん、とシンクが鳴った。

 米田さんは排水溝のキャップを開け、ゴミ受けを確認した。


「あれ? なにもないな」


 そこには夕食の洗い物をした際に出た残飯のクズしか残っていなかった。


「・・・・・・」


 しばし考える米田さん。カップ麺の容器のふたを全部開けてみたが、髪の毛のようなものは一切入っていない。


「・・・・・・見なかったことにしよう・・・・・・」


 ソースをかけてよく混ぜて、いつもの通り食べた。


 その後も相変わらずカップ焼きそばを食べているが、同じ現象は起こっていない。

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