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第4話・フラメンコの思い出話

 ドンキといえば、バレエになじみのない人は某激安店を思い出す。しかし、バレエ好きはバレエの「ドン・キホーテ」 を思い出す。

 さてドンキの動画を見ていたら、かなりの確率で横のおすすめ動画にフラメンコが出てきます。元々スペインが舞台なので、バレエと同じ洋舞ジャンルのフラメンコも出てくるのでしょう。私は一時そのフラメンコに傾倒していました。

 フラメンコの曲で有名なものはセビジャーナスでしょう。スペインのセビリアという地名から発祥されたと言われるフラメンコの曲と踊りの名前です。フラメンコを踊る人、習っている人は全員がこの曲を知っているはずです。そして踊れるはずです。

 

 懐かしや、私はフラメンコを習っていた時期は、バレエをやめていた時期です。率直に言えば、バレエによる人間関係がいやになってやめました。レッスンの楽しみよりも、あの人を含むグループがどうにも苦手……すでに大人バレエだったので、自分の給料で稼いだお金でやっているが、人間関係で我慢してまでバレエを続けることもないよねとやめました。ほんと、若い時の方が個人的なことで進退が決められましたね、今の私にしたらとても贅沢に思えます。

 きっかけはどうあれ、フラメンコに魅入られてよかったと思っています。フラメンコはスペイン舞踊とひとくくりにされがちですが、独特のものがあります。バレエとフラメンコは個性と伝統があわさっているという意味では同等で二大洋舞ジャンルだと思っています。

 フラメンコは女性の場合は、ロングスカートを大きく翻しながら踊る。くつを踏み鳴らしながら。どちらかというと骨太で時には野性的。胸元を強調し、広がるスカート、力強い視線、大きなイヤリングに髪飾り、女性という性を目一杯強調しながらも、私は私という強い個性と激情を感じさせる。独特の手の動きは、うねうねとして見えるが、時には切り付けるように見える。頭上から斜めに切り下げたり、切り上げる動作にまっすぐに前を見据える視線、時には高圧的。時には哀愁と帯びて。

 フラメンコは唯我独尊的で、クラシックバレエのよくあるストーリー、運命に流されたが王子さまに助けられてハッピーエンドという童話的なものとは一線を介する。バレエとまったく違う。女性一人、広場でぽつんと踊っていてもカッコイー的な印象。スペイン人ダンサーのお顔は、ホリが深いのであの大きな目はただでさえ、眼力が強いのにその上に真黒なアイラインをぐりぐりに描いて舞台で踊られるとハンパないオーラが出ます。日本人には出せない迫力があります。

 男性にエスコートされているようにみえるクラシックバレエと、男性と同等に、時に踊り比べで挑戦してみえるフラメンコ。もう印象も全く違いますね。いや、バレエだってゼンツァーノあたりで踊り比べ的な振り付けもあるけど、あれもキャッキャウフフ的でほほえましいものだし、フラメンコで相手方の男性を蹴り飛ばす勢いの振り付けと全く違う。


 フラメンコシューズはあの軽やかな、時には重いステップを踏むために、シューズの裏には釘がうってあります。とん、と軽く足をあげて床につけるともうリズムになっている。あの魔法のようなステップを私もやってみたいとがんばりました。

 入門で基本のステップを教えてもらい、一番最初にセビジャーナスを半年かかって覚える。週に一度だけなので、なかなか先へすすまない。それでもセビジャーナスの基本の五曲さえ踊ればあとは二人で踊ったり、四人で輪になって踊ったりと、踊りのバリエーションが広がる。これまた楽しいものです。ついでもっと先へすすむとアレグリアス、ブレリアなどの複雑な振り付けになっていく。そのうちに発表会や、先生の公演のモブ、先生の先生、スペイン人プロとの練習会クルシージョといいますと段階を踏みました。お衣裳は誂えると高価なので、全部貸衣装でがんばり結構良い思い出になっています。

 レッスンには、あのまとわりつくような、しっとりとした音楽、時には力強い音楽を奏でるフラメンコギターの存在もかかせません。バレエ専属のバレエピアニストと同じくフラメンコスタジオ専属のフラメンコギター弾きもかかせないものです。

 ただしレッスン中では、音楽にあわせているつもりでも、一人だけステップを間違えたりして……バレエでもそんなことをしたなあ、と間違えてもすまし顔でとりあえず踊り続ける。フラメンコでも劣等生でしたよ。それでもまじめに通っていました。

 今でも時間に余裕ができればフラメンコもまた入門からやり直したいです。

 先生から一緒にスペインに踊りに行こうと言われたこともあったのですが、仕事があり長期は絶対無理で断りました。本当はお金がなかった。今でもだけど、あれはあれであれも人生の分かれ目だったのかも……本当に仕事ばっかりしていたなあ、と、悔やんでいます。フランス、ロシア同様私はスペインも行ったことがないのでこれも死ぬまでには一度は行こうと思っています。



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