第37話・膝の水
しばらくレッスンに来ない人から聞いた話。膝が痛くて水を抜いてもらったそうだ。膝に水がたまる、という表現はよく聞く。プロの人もメンテナンスで医師に水を抜いてもらったと話しておられたこともある。結構あるあるのだ。逆に水を入れてもらった話も聞く。だから今回は膝にまつわる話にします。
① ●●● 水を抜く ●●●
元々何らかの理由で膝を痛めるというのは、超大雑把に分けて軟骨がすり減ったかか半月板を傷つけることが多い。半月板は膝の中にある軟骨の事です。
そうなると、滑膜に炎症が起きて関節液が防御のために多量に造られる。体内への吸収も追いつかず水が膝の中にたまってくる。水は関節液のこと。それがたまると膝が腫れて、曲げづらい、重いといった症状がでてくる ⇒ バレエが踊りにくい、技量低下となります。病名は滑膜炎、関節水腫といいます。
この状態になると定期的に水を抜かないといけません。放っておくと水のせいで物理的に関節内部の圧力が高まります。圧迫されて血流が悪くなり、膝の曲げ伸ばしをするたびに痛みます。それが怖くて膝を動かさなくなると、筋肉が衰えたり血流がさらに悪くなったりします。すると、ますます関節が不安定になり、ますます水が増えるという悪循環になります。
膝の酷使はいけないが、放っておいてもダメ。その兼ね合いはやはりスポーツ整形外科医によく相談して決めないといけません。
② ●●● 水を入れる ●●●
逆に膝にきしみが出るために水をいれることもある。水といっても普通の水ではなくヒアルロン酸注射であることが多い。ヒアルロン酸は元々関節液の成分でもあります。関節と関節の間を滑らかにする目的なので体外からそれを補うのは自然なこと。痛みがあるのは、炎症が起きている。その場合は抑えるためにステロイドも添付することも。いずれも定期的にするならば、スポーツ医学に精通した整形外科医にまかせるしかない。
関節液がらみでは、このどちらかですね。関節液は多すぎても少なすぎてもダメ。その度合いは自分ではわからない。整形外科で造影してもらい、判断してもらうしかありません。鎮痛剤の使用は数パターンあって有効ですが、根本的な治療にはならないので、結局は長期的に治療方針をたててくれる医師と話し合うしかありません。
早期治療がいいのは、もちろんなので、医師の選択は重要です。しかし、患者が有名なアスリートでない、もしくは紹介状など持たないならば、
① 患者の気持ちを理解してくれて
② 優しくて思いやりがあって
③ 治療方針などの説明を嫌がらない医師を探しておくべきでしょう。
スポーツ医を標榜する著名な医師でも私のようなアマチュア相手なら「バレエをやめたら治る」 とほざくのもいますので。
バレエは二本の足を駆使して踊るものなので、とても大事です。足のトラブルはそれこそ星の数ほどありますが、踊れないことほど恐ろしいものはありません。
でも仮に切断という事態になっても今は良い義肢もあるし、踊れる人は踊っています。海外でも国内でも杖持参でレッスンに参加している人を見かけました。こういうのは受け入れする先生の度量の大きさも必要かと。
足、膝、つま先、バレエは身体のすべてが大事。どこが欠けても困るが、仮にそうなってもバレエはどこでも踊れるよ、そういいたくてUPしました。頑張ろうね。