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第28話・一人だけ目立つということ


 主役の重圧ってどんなのだろう。その状態を何十年と続けている人いますね。注目されて当たり前の日常……プリマバレリーナに限らずドラマや芝居の主役……そこに私の知り得ぬ世界が存在する。

 少し前の話ですが、ある著名なバレリーナと一緒にレッスンする機会に恵まれました。するとその場にいる人たちのみならず、レッスン場外から注目されている。彼女はその視線に囲まれ堂々と踊る。センターレッスンでは当たり前のように最前列の真中に行く。

 私は目も悪いこともあって最初はそのバレリーナの存在に気づかなかった。あちらも、バーレッスン中、上も下も保温のためか着ぶくれされていた。というかオーラが皆無だった。レッスンメニューがすすみ、汗をかいて上着もパンツも脱いでレオタード一枚になったとたん後光が……いやもう眼福とはこういうことですね。

 プロなのに大人バレエの生徒にまじってまさかとは思いました。バレエの神様、ありがとう!

 しかしレッスン場なので私も黙ってみていました。周囲もです。誰も、きゃーとか言わない。だって舞台でなくレッスン場だから。

 彼女の横で踊っている人もおそらくプロだ。過不足なくきちんと踊れている。でもどうしても注意が彼女に向く。これは単純に顔を知られているからではないものを感じました。年齢からして彼女は今が一番の踊り盛り。薄いレオタード一枚で、ゆっくりテンポで基礎を踊っている。生まれつきの恵まれた体型に加えて自前の努力もあったろう。

 彼女自身は、見られながら踊ることが日常なので特段に意識はしていない。あくまでも自然体。周囲は彼女の存在を意識しつつ踊る。踊りつつも鏡越しで鑑賞。バレエレッスンは上手な人の踊りのくせを盗んで自分のものにするのも勉強だ。あとで常連さんに聞いたら、その人はバレエ団のオフの日にたまに来るという。

 このクラスを毎週できれば受けたいが距離の関係で無理。なので、今私は期間限定のバレエ天国にいると仮定して、彼女を見ていました。自分の順番が来るとあわてて我に返って踊る。それから隅に引っ込んでまた見る。バレエの神様、幸せをありがとう。

 クラシックバレエ、特に海外では実力次第だろうと思うので、そこで揉まれた経験が生きている。そりゃ、尋常でない主役オーラも出るよ……と思った貴重な経験でした。こればかりはコネなぞ関係ないから。

人に見られることで彼女はより輝くタイプではないかな。それと己を信じているということも。舞台上の失敗が許されぬ主役バレリーナとしてはそれが一番大事なことだろう。



」」」」


 以下は周囲のマナーの良さについての追記


 海外でのレッスンでプロダンサーがバレエクラスに来たときがあります。私はその人を知らなかったのですが、ファンらしき子がレッスン直前までそのダンサーからくっついて離れず至近距離で写真を撮っていました。明らかなマナー違反でした。でも周囲は誰もたしなめない。

 当のダンサーがどうするのかと見ていたら、最後まで根気よくその子のいうとおりに笑顔でポーズを取り一緒に映ってあげていました。我慢強い……レッスン前にストレッチはプロなら、やりたいだろうに。でもファンに向かって、拒否ができないだろうというのは感じる。このご時世、SNSに何を書かれるかわかったもんじゃない……ということを実際に観たものですから、日本はそういった類のマナーが行き届いていると思う。

 更衣室にいた日本人に彼女が誰かを教えてもらいました。バレリーナではなくショーダンサーだった。しかしあの神対応は忘れられない。そのダンサーがもし来日することがあれば、日本人ばかりのレッスン中は放っておかれるのでちょうどいいのではないかな……。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 久々に読ませていただきました 最新作のプロダンサーの方が一人紛れてレッスンしているシーン~バレエマンガを書く作者の書きたいシーンではないでしょうかね!?
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