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第20話・バレエと摂食障害 ☆

 バレエはどうしても見た目問題というのがでてくる。やせていて当然というイメージがついてまわる。そのため、大人バレエでは本当はやりたいけれど、肥っているからやめておくと言う人もいるでしょう。肥っていても踊れますけどね。

 未成年ならばバレエをやっているというイメージにそうように努力すべきと思ったり。周囲が「もうちょっと、やせたら?」 と指摘することも多いかと思います。バレエならそれは当たり前で、そう思うこと自体は悪いことではありません。ただ行き過ぎると問題になります。今回は未成年のダイエットをこじらせて摂食障害まで行った人の話です。


 無茶な自己流ダイエットを繰り返す人がいます。食事を極端に減らすとやはり健康を損ねます。長期にわたると、いいことは一つもない。成長期なのに栄養失調まで行くとバレエどころではなくなる。ダイエット自体はよくある話ですが、行き過ぎるのもよくない……というわけです。みんな健康がどれほど大事なものかわかってない。

 まずは、摂食障害ってなんですか、という人のためにウィキペディアの一部から引用します。

 ↓ ↓ ↓

摂食障害(せっしょくしょうがい、英: Eating disorder ; ED)は、食行動の重篤な障害を呈する精神障害の一種である ……中略…… 患者の極端な食事制限や、過度な量の食事の摂取などを伴い、それによって患者の健康に様々な問題が引き起こされる。主に拒食症と過食症の総称である。人間関係の問題などの心理的なストレスが原因となる場合が多い。

 ↑ ↑ ↑


 バレエ生徒の場合、先生から体型を指摘されたか、もしくは自分で鏡を見て「私の足が太い」 と自主的にダイエット開始というパターンが多いかと思います。甘いものや揚げ物を控えてカロリーを減らすぐらいならば、ダイエットの範疇に入る。私もしています。

 しかし、

 ↓ ↓ ↓

 食べた後、毎度トイレに直行して吐くレベルになると摂食「障害」 と名称がつく。

 ↑ ↑ ↑


 指導者や先輩から言われてそこまでいくようになるのは、もともとまじめな子が多いと思う。きっかけは、いろいろなパターンが多いが、食べると罪悪感が湧いてくる。で、吐く。すっきりしたらおなかがすいて爆食。また吐くの繰り返しになります。

 どちらかというと裕福な家庭のお子さんがなるイメージがあります。飢餓感がないせいでしょう。ある著名なお嬢さん学校でそういう子が多いと聞いたこともあります。

 例えば、ある子はバレエ教室の先輩と何かで言い争いになり、「ブタのくせに」 と言われたことがきっかけでなりました。中学生。思春期の子供は繊細です。過食嘔吐を繰り返し、頬はこけ、目にはクマを作り、手足は棒状になってもまだ痩せたいという。親は子を病院に無理やり連れていく。医師から「精神科に入院しますか」 と重々しく聞かれ、はじめてその子は己がどういう状態にあるかを理解したようです。自己肯定感が皆無に近いのがわかり、家族面接を重ねて身体的には回復しました。家族面接が出てくるのは、その思考に至るまでの精神的な成長過程も治療対象になることが多いからです。彼女はあのまま放っておいていたら死んでいました。摂食障害は緩慢な自殺ともいわれるのがわかります。

 摂食障害が問題視されるのは、過食と拒食の振幅の幅が広がり、時には命にかかわることがあるのに、体重を三十キロ切っても、もっとやせなきゃと思うようになる。それ以外の思考ができないのが病的です。死にますよ、と注意しても聞かない。そこまでいかなくても生理が来なくなると、後で不妊になる確率も大きくなります。どんな理由であれ、共通しているのは「やせているほうがキレイ、幸せ」 という思考です。

 有名な実話をします。南太平洋にあるフィジーという国は昔はテレビがなかった。しかし、一般家庭にテレビが導入され欧米の番組を視聴するようになると、ダイエットがはやりました。やりすぎて病的な摂食障害患者が出現しました……それまではフィジーは太っていると美人とされていたのに、テレビがきっかけで美に対する価値観が劇変したわけです。

 バレエをやっている子供の摂食障害もこれに似ている。「やせたらバレエがうまくなる」「やせないとバレエができない」「肥っていると嗤われる」という強迫観念があります。周囲から安易に「やせろ」 と言われる。逆に親からは「食べろ」 と言われる。

 バレエをやっている子供にとっては真逆のことを言うどちらも絶対的な存在です。バレエの指導者や先輩、友人から外見を貶められるとパニックになります。何よりも大好きなバレエをやる資格がないと思い込んでしまいます。隠れて食べ吐きをし、生育状況、環境によってはもっと深刻な精神状況に陥ります。食べ物はありがたいと思って感謝して食べるべきです。食べることは生きること。踊る以前の常識です。そういう常識的かつ、もったいないという思考を保つ余裕もない。

 バレエブログをのぞいてみますと、バレエの先生で食べ物をアップされる人も多いですが、みなさんしっかりと食べておられます。そしてムリなく体を動かす。私も数度ですがプロの人と会食した時も、大丈夫か、と思うほど食べていました。でも細い。彼女たちの筋肉はすごくしっかりしている。肥らないのは舞台が失敗が許されず集中して動くからでしょうとおっしゃっていました。いつも舞台のことを考えている。失敗が許されぬストレスが常にある状態でも、平気でないと何年もプロとして踊ることができないのがわかる。

 食べたらあとで速攻でトイレにこもり、のどに手をつっこんで吐かなきゃという人は、体と精神の鍛え方が根本的に間違っています。バレエは外見も重視されるのは、確かですが基礎体力がないとバレエが続けられぬ。体力がなくなった状態では、上手にならぬ。

 過食嘔吐する子供の年齢が低いほど、周囲の大人の責任は重い。やせさせたいと思うならば、子供でも理解と納得ができるアドバイスをすべき。良い指導者や先輩ほど、まだ発展途上中の少女の心を比較したり傷つけるようなものの言い方は、なさらないはずです。


 私ですか? 私は体型以前に覚えが悪すぎて相手にされないタイプでした。外見は下半身デブで太ももが太い子でした。レッスン後のアイスクリームやパンを楽しみにする子でした。大人バレエでは、年下の先生から面と向かって「お願いですからやせてください」 と言われたことがあります。舞台のコールドで出てほしかったようです。子供時代よりも開き直っていますので「ムリ」 と言いましたです。

 そんなでもまだ私はバレエが好きです。食べるのも好き。それなりに幸せに暮らしていますですよ。バレエを上手になりたければ、やせなきゃという思い込みも間違いではないですが、健康を損ねるところまでいくとバレエが下手になるばかりです。

 バレエが下手になったり、踊れなくなる方が怖いでしょう。先ほどのプロを見習い、過分に食べたらその分踊ると決める。明日にしよう、明日から頑張る、は、なしです。レッスン場や家で、できないところとダメなところを一つ一つつぶしていったら、バレコンで入賞でき、プロの道につながりますよ。きっとね。

 ネットの隅っこで私はいつも応援していますよ。だからみなさん、ご飯はしっかりと食べてくださいね。それではまたね。







(著者追記・摂食障害情報センターによると思春期の女子では五十人に一人がこれだといいます。さらに、摂食障害の予後に関する調査では、「摂食障害が持続している」と答えた人が三十六%、死亡七%。実に四割近く習慣づいて治らない。受診しない予備軍も含めればもっと人数が多いはずです。日本摂食障害学会もあり、認知行動療法などの啓蒙もされています。興味のある方はHPへ行ってください。

摂食障害センター  http://www.sessyokusyogai.com/

日本摂食障害学会  http://www.jsed.org/.



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