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第17話・よくあがる足

 基本に戻ります。バレエといえば、チュチュ! トウシューズ! という人がいます。バレリーナといえば白鳥の衣裳を着てアラベスクのポーズという人も。正解です。

 しかし私の場合は、バレエらしいといえば、足で体を開くこと、と、思っています。今回はバレエの足の話です。

 バレエ的な理想の足と言えば人形のバービーちゃんの足です。上から下まですっきりとして凹凸がない。シンプル設計の足。バレエではプロになりたければ見た目も重要視されます。そういう足で踊りたければ、基礎の基礎、柔軟という地味な努力が日々要求されます。脂肪をつけず筋力をつける。しかしムキムキはあまり歓迎されない。結構そのバランスが難しい。今回は骨格と筋の話にポイントを絞ります。


 人間の足ですが、一人につき、たったの二本しかない。そしてその足を動かすにはどなたにも三つの重要な関節がモノをいいます。つまり

① 股関節 (足の付け根)

② 膝関節 (ひざ、足の上と足の下をわける節点)

③ 足首の関節、(下肢から足底、足指へつなげるもの)

 加えて細かい足の指の関節などもあるが、それをいうとキリがないので三つだけに絞って話をすすめます。

 足の関節は、どれをとっても歩行には外せないとても重要な部分です。もちろん踊る人にとってもです。今回はその当たり前の話から、バレエを踊るためにさらに意図的に一部を変化させないといけません。つきつめれば、外旋の話です。これはバレエを習う人ならだれでも知っている足一番、二番、四番、五番につながる話です。

 外旋させるというと堅苦しいですが、アンディオール、ターンアウトといえば聞いたことがあると思います。はじめて習う人が無理に足の一番、つまり足指を外側に向けようとすると、「足首の関節だけ」 を外側に向けます。三か所の関節をゆっくりと開くようにしないといけないのに、足首だけ開こうとする……そのまま踊るくせがついてしまうと、膝や股にも影響し足を痛める原因になりかねません。だから面倒でも基礎と柔軟を身体に覚えさせないといけないのです。

 それにはレッスン前に必ずゆっくりめの柔軟をします。できればレッスンがない日に自宅でも。子供ならばレッスンだけの柔軟でも元々体自体が柔らかいので角度が開いていきます。足を開くとはそういうことです。大人は骨も筋肉も固まっているので子供のようにいかず、九十度ぐらいをめざします。無理せずにそれでも十分踊って楽しめます。私もそうです。

 百二十度ぐらいでも股関節から足を外旋できるようになると、足が高くあげられるようになります。足は一番のままにして、すっと片足をあげると上手な人は九十度以上どころか耳まであげられる。百八十度もざら。時には二百七十度もまでも。それはなぜか。

 ↓ ↓ ↓

 股関節を「きちんと外旋させる」 と股関節から大たい骨の付け根の一部、大転子だいてんしと言われる骨がひっかからないから。

 ↑ ↑ ↑


 人間の骨の造りってなんと精巧で複雑なのものか。つまるところ、大転子は股関節用のひっかかりです。それをちょっと自分で細工し、訓練によって誰でも上にあげられるようになる。バレエをやっていると人間の骨や筋肉の複雑な絡み、その仕組み、その仕上がりがわかってくる。バレエの歴史は古いが、どのポーズもこうやってみよう、こうしたらもっときれいにみえるという先人の努力の積み重ねによる舞踊なのです。

 外旋に加え柔軟によって筋肉も最大限に伸ばす。それで片足を重力に逆らって上げ続ける。自分の足は重いです。それをもう一本しかない片足で支える。

 もちろん股関節の上にある腰椎ようつい胸椎きょうついも十分にしならせる。だから背中の柔軟も腹筋の強化も両方とも必要。下半身を外旋させたまま、上半身を前や後ろに倒す。横にも左右倒す。バレエには不可欠でバーレッスンにもこの動作は必ず入ります。

 人に見られることを想定するバレエは、余裕の微笑みも必要です。手のポーズもどこに置くか。足首にそえるかでポーズの印象も違ってくる。上半身をできるだけ伸ばし足だけをまっすぐに上に高くあげる。そのあげた足をまっすぐにするか、膝だけを曲げるか。それとも軸足を曲げるか。それに回転と跳躍を加えると無数のバリエーションができる。

 どこから見ても美しいポーズ。これを連続してやる。これがクラシックバレエ。

 

 大転子ですが、目で見た方が早い。横にして足の付け根の横のでっぱりですね。(イラストならば下記へ。ちなみにお商売用や何かの宣伝記事ではないのでご安心ください。大転子の場所がわかります

 ↓ ↓ ↓

  https://変形股関節症.com/36.html   


」」」」」」」」」」」」」


 ここで大転子にまつわる話。まず二十三種の筋肉とのかかわりがあります。ここからバレエの話とはずれます。面倒な人はここで読むのを終わってください。私が書きたいだけなので。

大殿筋(だいでんきん) ②中殿筋(ちゅうでんきん) ③小殿筋(しょうでんきん)

大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん) ⑤大腰筋(だいようきん)

小腰筋(しょうようきん) ⑦腸骨筋(ちょうこつきん)

大腿直筋(だいたいちょっきん) ⑨縫工筋(ほうこうきん)

梨状筋(りじょうきん) ⑪外閉鎖筋(がいへいさきん) ⑫内閉鎖筋(ないへいさきん)

上双子筋(じょうそうしきん) ⑭下双子筋(かそうしきん) ⑮大腿方形筋(だいたいほうけいきん)

長内転筋(だいたいほうけいきん) ⑰短内転筋(たんないてんきん) 

大内転筋(だいないてんきん) ⑲恥骨筋(ちこつきん) ⑳薄筋(はっきん)

半腱様筋(はんけんようきん) ㉒半膜様筋(はんまくようきん) ㉓大腿二頭筋(だいたいにとうきん)

 ……書き写すのが途中でつらくなった。私は三つの主要な足の関節のほかに大事な大転子につながる筋肉がこれだけあると言いたい。人間の骨と筋肉のつながりはとても複雑ですが、バレエはそれを上手に使ってポーズを取る。筋肉の名前なぞ何一つ知らなくても日々のレッスンで無理のないように体を動かす。毎日の柔軟と基礎の大事さも知ったうえで、骨と筋肉を作る食事にも気をつかう。そういうことがわかると、バレエは身体改造でも何でもない。人間の持つ肉体の行動様式をさらに飛躍させ、芸術に徹されたものという見方もできる。これが日ごろ私がクラシックバレエが素晴らしいという理由の一つです。







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