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第12話・海外のオープンクラス

 私はスポーツ関連全てが苦手です。身体を動かすのは月に数度のバレエレッスンだけという単純明快な人生。でも仕事と子育てがあって、趣味に専念できずそのまま年を取る。

 それでも出張や旅行のたびにその土地のバレエのオープンクラスに顔を出していました。現在介護も加わり旅行なぞとんでもないという状況で哀しいです。あれれ、何を書いているのやら。愚痴はやめて先へ進みましょう。 

 クラシックバレエは世界各地に愛好家がいます。野球やサッカーほど熱狂的な人はいないかもしれません。バレエファンがどこぞのフーリガンのように劇場を破壊したニュースは聞いたことないです。


 バレエは生身の人間が人間以外のモノを演じることが多い。例えば妖精や童話の世界の人物に扮して踊る……映画とはまた違う芸術の世界。だから勝ち負けからくる感情爆発はないに等しい。良い舞台だと知的な興奮と多幸感を覚える平和な世界観に浸れる。幸せになります。私のように観るだけでは我慢できず、わが身を使って踊りたがるのも少数いまして、気軽に触れるのがオープンクラスのレッスン。観光地で歩き回るのもそりゃ素敵ですが、下手ながらも、その土地に住むバレエファンと一緒にレッスンを楽しむのもたとえ言葉が通じなくとも良い思い出になります。


 一番最初に経験した海外のオープンクラスの話をします。この話は別のところでも書きましたが、某クラスレッスン後、同じく大人バレエの人から「あなたをどこかで見た。今はどこの舞台に出ているの?」 と聞かれました。私はびっくり。私はバレエ体型ではないのでバレリーナに間違えられることは決してない。どうもどこかのミュージカルの端役と間違えている。本気でおっしゃるので、いや、違うよというと、じゃあ、彼女があなたに似ているだけかな、と笑う。YESだよ。ほんと、海外のフレンドリーな人は、気軽に声をかける。こちらが言葉を理解しようが理解していないがとにかく話しかける。有り難い。流暢に現地の言葉でジョークで返せたらもっと楽しい思い出になるのですが、できないです。

 現地のバレエファンからこの国は好きかと真顔で聞かれ、大好きよと答えると嬉しそうに笑う。表現がストレート。で、私も笑いあう。社交的でない私でもこんな感じでやってます。ブロークンな会話でも私は現地の空気と共に思い返せる。そしてまた行きたいなあと思う。

 現在取り掛かってるのは親の介護と反抗期の子どものお世話と仕事だけ。今度いつ一人旅できるのだろうかと思う。また話がそれました。


 さて海外でも日本でもクラシックバレエに限らず、舞踊系のオープンクラスはすべて人口が集中する都会にあります。田舎には決してありません。そのため都会でしか暮らせないと言い切る人もいる。まさにその通り。人が集まらないところにはバレエ教室はできない。ましてや、オープンクラスは経営が成り立たない。

 しかし海外は日本よりも自由ですよ。治安などの安全性は確実に劣るが受講に関してはなんでもあり。

 服装も自由。年齢も制限がない。途中で参加も、途中で放棄もすべてが生徒次第。オープンクラスには先生の権限なんてありません。先生の持つ権限は授業の進め方と、参加した生徒が上手になるように注意することだけです。生徒側も先生との相性が悪いと思えば黙って次回から参加しないでいい。自由すぎる。

 オープンクラスの先生方はプロの履歴を持っている人ばかりです。その中でも何十年と在籍して指導されてきた先生はやはり人気があり、どこでも満員です。その先生が培ってきた知識をワンレッスンごとに分けてもらえるのです。得るものが多いか少ないかはその生徒の受け止め方にもよるが、指導法やレッスンにほれ込んで通い詰める人も多いでしょう。

 でも短期間の旅行者ならそうはいきません。幸い今はネット社会ですので、スタジオのホームページと当日のレッスンスケジュールを閲覧して受講予定を組める。オープンなので急な予定が入れば次のクラスを受ければいいのだし、本当に自由。

 旅行は日常からの解放だというのは本当です。時間の使い方が自由、つまり非日常。だから旅行が好きになるのかも。旅行が終盤にさしかかると、いつもの慣れた日常にも帰れるという喜び、そしてまたここに来ようという未来への計画をたてる喜びをも味わう。短期間ながら言葉や笑顔を交わした思い出もお土産になる。私の小さな人生の煌めきです。

 思い出は宝石になる。バレエ留学などの華々しい活動とは縁がなかったけれど、それでもバレエと出会えて満足しています。









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