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その女性の名はサーニャ そしてイゾウと

 一見、どこかの社交界の舞踏会に出るのではなかろうかという華やかな装いの女性。

 ように見えた、のだが実際にそうらしい。

 背中からどでかい蝶の羽が生えている。

 えーと、確か……ティターニアとか言うんだっけ? その夫がオベロンとか。


「で、イゾウはどこじゃ?」


 どこじゃ、ときたもんだ。

 どこぞのお姫様か?

 いや、風格からすれば女王って感じだが、頭のねじが外れた……


「妾の言葉を解せぬか? あぁ、妾のことはサーニャと呼ぶがよい」

「あ……あぁ。俺は……幸司……だが」

「ふむ。新たに空間を増やしたのだな。そっちの方が居心地が良さそうじゃの」


 頭の中が落ち着かない。

 どこから突っ込めばいい?

 どこでもいいや。

 まず


「あー……っと、サーニャさん? あんたの言うイゾウって何?」

「ん? 縁者ではないのか? ハタナカイゾウじゃ。おらんのか?」


 え?

 畑中イゾウ?


 って言うか、俺、苗字言ってないよな?


「ハタナカ雑貨店、とやらの二階……屋根裏部屋じゃろ? 知っておるよ。じゃがコウジのことは初めてだの」


 いかにも、以前来たことがあるような物言いだ。

 いや待て。

 この女の後ろに控えてる黒づくめの男……亜人って奴か?

 用心棒……かな?


 って疑問はそこじゃないっ。

 なんで、ここに来る者はみんなボロボロの格好になって来るのに、汚れ一つない衣装でここに来れるんだ?!


 ……このお方、何者?

 何しに来た?

 いや、どうやってここに来たんだ?


 コルトを横目で見る。

 なぜかコルトは固まっている。

 緊張のあまり、という感じだ。

 知ってる人なのか?


 いやいや、待て待て。

 畑中イゾウ?

 誰だそりゃ?

 何か縁のある……


 いや、待てよ?

 祖父ちゃんの名前は徳蔵だった。


「コルト、ちょっと調べもの! すぐ戻る!」


 家の仏壇に位牌があった!

 名前が後ろに書いてたはずだ!


 大急ぎで仏間に移動。

 位牌の後ろを確認する。


「……畑中……以蔵……。享年八十七歳……」


 今から……三十五年くらい前に亡くなってたのか。

 俺が生まれる前の話だよな。

 さらに遡ること……何年になる?


 まぁ異世界の人だから、この世界の人間よりも寿命は遥かに長いだろうから……。

 伝えとくか。

 急いで仏間に来たけれど、戻りはそんなに急がんでもいいか。


「畑中以蔵について調べ……何してんの」


 緊張のあまり固まっているコルトの頭を、愛玩動物を可愛がるようにその女の人は撫でまわしている。


「コ……コウジさん……助けて……」


 何で涙目?

 何で固まってるの?


 この人……サーニャって言ったっけ?

 偉くご機嫌だが……。

 まぁいいや。


「畑中以蔵について分かった。三十五年前に八十七歳で亡くなってた。俺の曽祖父さんってことになるな」

「ほう、孫と思ってたが曽孫になるのか。……そうか……お前達にはずいぶん昔の話になるのだな……」


 ……おいくつですか?

 って聞きそうになった。

 女性に年齢を聞くのはエチケット違反……どころじゃねぇよな。

 コルトとのいざこざでしっかり学んだぞ。


「俺の……曽祖父さんとどういう関係なんだ?」


 顔はサーニャから外さずに、視線だけを周りに向けてみた。

 誰も彼も固くなっている。


 もしも近所に天皇陛下がやってきたら……ここまで固くなることはないな。

 国旗の旗を振るくらいは動ける。

 何でまたこんなにみんな緊張しているのやら。


「妾がまだ幼かった頃、イゾウに助けてもらってな」


 この店の初代。

 そして異世界交流も同時に始まったってことだよな。


「それ以来何度か遊びに来たりしてな……。ある時期からしばらく来れなくなった。その間に……そうか……死んでしまったか……」


 何か涙を浮かべてるような。

 ……子供の頃の命の恩人、か。


「その幼かったあんたは、今何になったんだ?」

「……うむ。……フォーバー王国という国の女王をしておる」


 ……はい?


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いつも見て頂きましてありがとうございます。

新作小説始めました。
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勇者じゃないと言われて追放されたので、帰り方が見つかるまで異世界でスローライフすることにした

俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる

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