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またややこしい女がやってきた

 地元に戻って来てからはほとんどこの屋根裏部屋とプレハブ、そして一階の店と住まいの往復ばかりの生活だ。

 もちろん外に買い物に出るが、外で何かをして過ごす時間はない。

 普通にこの世界で生活している人には、この屋根裏部屋とプレハブでの現象は、腰が抜けるほど驚くことばかりだと思う。


 俺も今ではすっかり慣れた。

 驚くことと言えば、窓から見える花火を見た時、異世界でも同じような物があるという話を聞いた時。

 異世界でも同じ物が存在するのかと。


 まぁそれでも笑い話にできる驚きだよな。


 だが、久しぶりに腰が抜けたことが起きた。


 俺の生活ぶりを見てどう思う?

 缶詰の生活って感じするよな?

 でも実際、そうでもない。

 ネットでいろいろ情報は収集している。

 学生時代からゲーム関係のサブカルの知識も身につけた。


 その中でよく見るストーリーで、空から女の子が落ちてくる、なんて出だしは、漫画やアニメでもよく見てきた。

 そして、屋根裏部屋は屋根裏部屋で、そこでのルール、決まりってのはある。

 現実では、空から女の子が突然落ちてくるなんてことはあり得ない。

 それは、屋根裏部屋で扉があると思われる壁から異世界人はやって来るが、プレハブの部屋やそこ以外から異世界人が入ってくることと同じくらいあり得ないこと。


 それが、である。


 ドスン!


 という音が、プレハブの方で響いた。


「お、おい……コウジ……」


 何だよこっちは米研ぎの最中だ。

 洗米した米を水に浸す工程が、ちょっとした工夫でできるようになった。

 その邪魔になりそうな、どこかの冒険者の声は無視するに限る。


「コウジ……天井から女性が落ちてきたぞ?」

「あ?」


 天井から何かが落ちてきた、というと、空から何かが落下して、屋根、そして天井を突き抜けて床に落ちてきた、という言い方に聞こえる。

 冬の時期、雪が積もって雪下ろしをしないまま放置しておくとそうなることくらいは予想がつく。

 だから雪下ろしを何度かしたが、女性が落ちてきたってのはどういうことだ?


「……天井、どこもおかしいところがねぇじゃねぇか」

「だから、天井から落ちてきたんだってば」

「……お」

「ん?」

「お前、いつぞやの斧の戦士だな?」

「……それは何度も俺が説明したろ。それよりその向こうにいる女性のことだよ」


 種族は何だろう?

 人間じゃないのは分かる。

 が、何となく赤みが勝った肌が見えるような……。亜人かな?

 その女性がお尻をさすっている。

 尻もちついて痛めたらしいな。


 だが、天井から落ちてきたと言われてもな。

 最初からそこにいたんじゃないのか?

 だが、何かが落ちてきたような音は聞こえた。

 ……まぁ……現れ方は、俺が目にしてない限り放置でいいか。


「ほほぉ……こうなってたか……。……ここの主は……お主か?」


 ……またなんか変な異世界人がやってきたぞ?

 何か……黒い長髪がきれいだけど、額に短い角が一本。そして赤い肌。

 赤鬼?

 鬼の女性……鬼女……うーむ……。

 人間として見れば……年齢、三十代くらいか?


「お主、妾の声は聞こえておるのか?」


 何か、どこかで聞いたようなフレーズだな。


「あー……聞こえてますが……。あなたは?」

「妾か? 妾は……」


 ……しまった。

 つい聞いてしまった。


「いや、言わない方がいいやもしれん」


 ……はい?

 まぁ、いいけど。


「おぉ、こっちは変わらんの。ん? 何か隅に置いてあるの。あれはなんじゃ?」


 ノートのことらしい。


「ここに来る人達が暇だろうから、暇つぶしに何かいろいろ書いてもらえりゃ退屈せずに済むかなと。それだけ」

「ふむ……。妾の時は……。ふふ。そもそも建物もなく、妾一人だけだったのぉ……」


 また昔話するお年寄りがやってきたか。

 って、建物がない?

 どういうことだ?

 雑貨屋初代の曾祖父の以蔵が女王サマと出会ったのは、その屋根裏部屋だろ?

 それすらなかった時代の話?

 仏壇には確か、曾祖父夫婦の位牌が一番古かったような。


 って言うか……。

 この女、何者?


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いつも見て頂きましてありがとうございます。

新作小説始めました。
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勇者じゃないと言われて追放されたので、帰り方が見つかるまで異世界でスローライフすることにした

俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる

cont_access.php?citi_cont_id=170238660&s ツギクルバナー
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