表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/176

シェイラのノート:何でも書いていいって言うから、思いっきり書いてみた

 時々コウジと喧嘩をする。

 私が悪いって自覚することはある。

 でもね……。


 お米を研ぐと、米粒が欠けたり割れたり、おにぎりを握る時、ご飯粒同士がくっつかずに手のひらにくっついたり、握れたと思ったら、指の間からご飯がムニューって出てきたりする。

 もっとさぁ……。

 手取り足取り教えてくれてもいいじゃない。

 ただ言葉だけで説明して終わりなんだもの。


 でも食べ物を粗末にしないってことで、私におにぎりの作り方を教えるのは諦めて、私と交代。

 できあがったおにぎりは、食べた人からはあまりいい感想もらえなかった。

 でもやらかしたのは私だからね……。ごめんなさい。


 でも、謝りたくないときもある。


「傷だらけでようやくこの部屋に来ることができて、けど碌な治療受けられないのは問題なんじゃないの?!」

「ここは病院でもなくホテルでもなく、酒場でもない。何度も言ってるだろ? 何度同じ会話すりゃ気が済むんだよお前はっ!」


 分かってるよ、そんなこと。

 病院にしちゃ不衛生だし、ベッドとかの寝具はないし。

 ホテルにしてもそう。


「お酒があったらなぁ」


 なんて愚痴も聞こえてくるくらいだから、酒場のように陽気に騒ぐところでもないことくらい分かるわよ。行ったことないけど。


 でもさ、苦しんでる人達を、少しでも早く楽にしてあげたいじゃない?

 いや、楽にって……逆方向のことじゃないから。

 少しでも早く怪我が治ってほしいって思うもんでしょ?

 おにぎりの時間以外は自分から動こうとしないんだもん、コウジってば。

 人じゃないでしょ、あいつっ。


「治療してやりたいなら勝手にやりゃいいさ。けど一回やったなら、相手がどんなに気に食わない奴でも全力で治療に当たれ。一人も漏らすな」


 ……できるわけないじゃない。

 冒険者達の出入りが激しい時は、こっちの動きがついて行けない時があるし、なぜか私の魔力の光はおにぎりにしか影響しないんだもの。


「俺にとっちゃ自宅の一室。だがこいつらにはただの安全地帯。何度も同じことを言うが、ここはただ体を休めるだけの場所。握り飯はおまけ。だから一日二食なんだよ」


 冒険者達にはおまけでしょうけど、コウジにとっちゃ重労働よね。

 ……確かにその上でここに来る人達に漏れなく手当てするっていうのは無理か。


「俺は神でもないし救世主でもない。けど、誰かに親切にして誰かに不親切にするっていう差別はしたくない」


 つっけんどんな態度でも、みんなに同じ態度をとることで平等に接しているってことになるらしいんだって。

 それが逆に安心感を与えるって言ってた。


「あいつは手厚い治療を受けてるのに、それよりも俺の方が重傷なのに気にも留めてくれない、って思われたら、誰だって不安に思うだろ? 冒険者同士でそこからいがみ合いが生まれるかもしれない」


 怪我の治療は冒険者達の協力だけで何とかしてもらうんだって。

 それで苦楽を共に共有してもらうほうが、誰もがここにいる間の居心地がいいんじゃないかって。

 考えすぎだと思うけどなぁ。


 そんな事言ったら、


「世の中には、子供なら知らないことがまだまだいっぱいあるもんだ」


 だって。

 まぁこの部屋の主はコウジだから、言うことには従うけどさ。


「あれもこれも、といろいろ手を出すと、後で手に負えなくなることが山ほどある。責任者じゃなければいろいろと言いたいこともあるだろうが、責任者になるとしたくてもできないことも増えてくるんだよ」


 目と気を配ると、そんなことが増えるんだって。

 何よ、大人ぶっちゃって。


 ……まぁコウジは大人みたいだけどね……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつも見て頂きましてありがとうございます。

新作小説始めました。
よろしければ新作共々、ブックマーク評価感想をいただけると嬉しいです

勇者じゃないと言われて追放されたので、帰り方が見つかるまで異世界でスローライフすることにした

俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる

cont_access.php?citi_cont_id=170238660&s ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ