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シェイラのノート:こんなことがありました

 つくづく、ガムテープ、とやらの力はすごかったわね。

 魔力とか全然ないのに、こっちの被害なしに相手を無力化できるんだもの。

 うちの国でも同じ物を作らせたいくらい。


 コウジもその手ごたえを感じたみたいね。

 この部屋の常備品になった。

 それで、早速それが活躍することになったの。


 転売って言うの?

 あの一件が呼び水になったのか、それともすでにそんな風習ができてたのか、おにぎりをトレイごと強奪しようとする一団が部屋にやってきた。

 全員まとめてガムテープでぐるぐる巻き。

 もちろん周りの協力もあったんだけど。

 何か、以前からここに出入りしてる冒険者達何人かが常連顔しながら、気軽に手伝いに応じてくれたんだけどね。

 そのうちの一人の女魔導師さんが、カレーにありつけるだの言ってたけど……よく分かんない。


 コウジはなんか急に深刻な顔して、それどころじゃないって突っぱねてたみたい。


「お前……ここに母親を呼べないか?」


 なんて急に言ってくるんだもん。

 こっちだって多少は期待してたけどね?

 今回は無理そう。

 甘口ってやつ?

 あれ……国では食べたことないから、それが目当てでここに居残りたいって言うのは……流石に無理か。


 もちろん私の力を当てにされるのが一番の理由だけどね。

 他の誰でもない、私の力でみんなが元気になれるってのが分かるから。


 でも流石に初対面の人から「女神様」なんて言われるのは、ちょっとね。

 そこまで言われるほどのことはしてないと思うし、無意味におだてられたり褒められたりされたって実感わかないし。


 あぁ、まぁ真剣な顔して言ってくるから、まず間違いなくからかわれてるわけじゃないんだなって分かった。

 しょうがないからこの部屋から出て使いの者に言伝頼んだわよ。


 次の日にお母様はやってきたけど、コウジってば相変わらず渋い顔をしてたわね。

 私ばかりじゃなく、周りの人達にも聞かれたくない話だったみたい。

 指輪の部屋に籠って長い時間話してたわね。


 ようやく部屋から出てきた二人は、やっぱり同じような表情。

 二人で内緒話って、なんかこう、感じ悪いわね。


「……縋りつかれても、こっちは知らんこともあるからな?」


 っていきなりそんなことを言われた。

 まさか私が


「コウジがいないと何もできないの~」


 とか言うと思ってるのかしら?

 冗談じゃないっ!


 ……カレーについては、一考の余地を必要としてほしいけどね。


 まぁ確かに今の私はまだ子供だけど。

 子供と思われてるけど。


 でも、普通にできることは、まだ子供なのに、とか、子供のくせに、とか思うだけでもしてほしくないわね。

 米袋一つくらい、あの重さなら誰でも片手で持てるでしょ。

 ……そりゃおにぎりはどうしても握りつぶしちゃうから、なかなかうまくできないけど……。

 おにぎり作るためにここにいるんじゃないもん。


「シェイラ。コウジにあなたを預けた時に比べて、随分……大人になったようね?」


 お母様からはそんなことを言われた。

 私は変わったとは思ったことはないけど……。

 少しくらいは成長したかも。

 でも、随分って程ではないと思います、お母様。


 でも、まさかお母様があんなことを言うなんて思わなかった。


「ここに来る前に制限しておいた魔力の放出と魔術の起動を解除します。これからは自分で制御すること。この部屋やコウジ達に傷を負わせないこと。分かりましたね?」

「え? えーと……」

「返事は? 制御ができないと言うのであれば、お母様も無理は言いませんよ?」


 そう言われると、何か試されてるような気がした。

 で、できますっ。やりますともっ。


 つい返事に力がこもって、鼻息が少し荒くなっちゃった。

 でも、何となく大人として認められ始めてるような気がして、少しうれしかった。


 けど、その後に聞こえた一言が……。


「まだまだ子供だな……」


 って、コウジ、うるさいっ!


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新作小説始めました。
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勇者じゃないと言われて追放されたので、帰り方が見つかるまで異世界でスローライフすることにした

俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる

cont_access.php?citi_cont_id=170238660&s ツギクルバナー
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