一枚しかない俺の舌先は……三寸はゆうにある
さて。
腹も落ち着いたし、気持ちも落ち着いた。
ただでさえ気が立ってたんだ。特にシェイラは。
それじゃ正常な思考も判断もできないっつーの。
「それで……どうするの? こいつら」
「何度も言う通り、俺には打つ手はないし、手を打つつもりもない」
……そんなに注視されてもな。
「理由を……聞いていいですか?」
やはり襲われた元怪我人は心配するか。
そりゃそうだよな。殺されかけたくらいだからな。
「理由って……。俺にはこいつらの行動を制限させる力はないし、やっちゃダメって禁止してもしちゃうだろ。したいんだから」
したいからしちゃったら死体が増える。
そんなこともあるわけだ。
「コウジ……。あなた本気で言ってるの?」
「他に手があるんなら教えてもらいたいもんだ。俺は静観。それしかできねぇよ」
「コウジさん……何か考えがありそうですね?」
双剣戦士、何か鋭いな。
「……何でそう思う?」
「にやついてますよ? 何となく、そう見えます」
まぁ腹に一物はあるわけだが。
「隠し事は良くないわよ? 特に私に」
しょーがねぇなぁ。
言葉も時には人を傷つける道具になるってこと、教えてやろうかね。
「まぁこいつらは俺の握り飯で金もうけを企んだわけだ。そして守銭奴なんて二つ名が生まれる程のことをしでかしてるわけだよな?」
「まぁ、そういうことね。そっち方面で随分実績を上げたってことよね」
二人の冒険者は複雑な顔をしてる。
まぁしょうがねぇよな。
「こいつら、そのうち誰かを敵に回すことになる。けどこいつら自身はそこまで考えてねぇはずだ」
「……敵に回す?」
「そんな相手、誰かいるのか?」
四人に目を向けるが、口もガムテープで塞がってるため、こいつらは何も言えない。
聞く気もないがな。
「そうだなぁ……。こいつらに殺されかけたって言ったな?」
「あぁ。こいつら、結構腕が立つぞ」
「で、あんたは普通の冒険者って訳だよな?」
「あぁ。それが?」
「その仕事の依頼人はどこかの組織だったりするのか?」
「いや、一般人だ。レアなアイテムが欲しいって頼まれてな」
危険地帯でなけりゃ見つけられない代物か。
そこで商売始めるこいつらも図太いというか向こう見ずというか……。
「その依頼人がもし国だったら?」
「国?」
双剣の戦士も首をかしげてる。
分かんないかな?
「国から依頼を受けた冒険者が、どこの馬の骨とも分からない奴に殺されかける。前金とかもらってなくても、依頼を受けてくれた冒険者の命が、魔物ではなくどこぞの者によって落とされかけたんだ」
「国がその真相を突き止めないわけにはいかない、か」
「ましてや守銭奴なんて噂が流れている最中だろ?」
双剣の戦士が両手を叩く。
分かったらしいな。
「そうかっ。おにぎりの救世主は守銭奴になったわけじゃなく、相変わらず救世主としての活動をしている。現に俺が確認したっ」
救世主はやめろっつーの!
「この部屋に来る入り口はこいつらがいる場所だけじゃない。独り歩きした、コウジさんは守銭奴という噂もいずれは消える。じゃあ噂の出所はどこだって話になった時……」
「依頼を受けた冒険者に重傷を負わせた。それが同一人物で、国からの依頼なら……」
元怪我人にも理解できたらしい。
「そ。国から追手がかかる。まぁそれで話は終わりになるが、もしこいつらが何かの組織の末端とかだったら……」「その組織からも追われるかもしれない? 国によって組織が潰されるかもしれないんだもん。この四人を生贄にすることで組織が存続できるかもしれないなら、喜んでこいつらの首を差し出すわよね」
何かこいつら、青ざめてきてるような気がするが……気のせいだよな、うん。