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常識に縛られない縛りプレイ!  作者: いとう
第1章 新たな出会いと縛りプレイ
8/49

1-8 早速の詰み

みなさまあけましておめでとうございます。

いとうです。

本年もよろしくお願いいたします。

街へ戻った俺は、早速パウロさんの店に向かった。


それにしても、相変わらずの廃墟っぷりである。たまに通行人がいるが、この建物には目もくれない。


「パウロさん、いるか?アーマードラビットを狩ってきたんだが。」


「おお、遅かったからマチルダと心配していたところじゃ。それで?初の戦闘はどうじゃったかの?」


「かなり大変だったな。やはり魔獣との戦闘は甘くないらしい。これがドロップ品だ。」


「はて?アーマードラビットは初心者でも割と簡単に倒せる魔獣なんじゃが...って、リョー、ドロップ品はこれだけか?こんなに時間がかかって、たった1羽か?」


「なんだと?かなり強かったように感じたが...。」


なんだなんだ。ちょっと嫌な予感がしてきたな。


「お、リョー。やっとこさ帰ってきたね。あん?なんじゃいパウロ、そんな顔して。」


マチルダさんが店の奥から顔を出した。


「おい、リョー!ちょっとワシらにステータスを見せてみぃ!」


「あ、あぁ...。わかった。」


俺はこの時点で薄々状況を察してしまった。恐らく()()だろう。


......そしてその予想は寸分違わなかった。




「なんじゃいこれは!」


「うるさいよパウロ。どれどれ...。あぁ!?リョー!なんでアンタはスキルが1つしか無いんだい!?」


やっぱりそこか。しかしいくらマチルダさんの威圧感に冷や汗ダラダラとはいえ、ここは譲れないのだ!


「それが俺のスタイルだからな!」


俺がドヤ顔で言い切ると、2人は呆れた顔でこちらを見て、


「こんなステータスならアーマードラビット1羽にこんなに時間がかかったのも納得さね。」


「そうじゃのぅ。これならそこいらの子供の方がまだ強いわい。」


マジ?俺、近所の子供にも負けるの?


「紫神様は変わった者をよく気に入るからねぇ。アンタとかアタシみたいな。」


「なぁ、何をそんなに呆れてるんだ?」


この一言がマチルダさんに本格的に火をつけてしまったようだ。


「これが呆れずにいられるかね!いいかい、リョー。スキルってのはね、持つ者と持たない者では雲泥の差なのさ。この世界に生きる者のほとんどはスキルを5つ以上持っているさね。スキルは強さ。確かにステータスの大きさも力にはなるけどね、スキルの差ってのはもっと大きいのさ。それは訪問者も違いないはずさね。それがリョー、アンタはなんだい?スキルが1つ?リョー。アンタは今、この世界で1番弱い人間に違いないさね。」


お、おう...。そんなにヤバい状況なのね。俺。


怒涛の勢いで捲し立てられた俺は、ことの重大さと自分の縛りプレイの道のりの険しさを理解した。そして......



「それがなんだ!これが俺の縛りプレイ(生きる道)だ!」



......縛りプレイへの決意を更に強くしたのであった。


***


「...はぁ、さすが紫神様に興味を持たれるだけのことはあるさね。リョー、お前もかなりの変人だよ。」


マチルダさんが褒めちぎってくる。


「ありがとう。それより、俺がこの先強くなるにはどうしたらいいと思う?」


「褒めてないさね!!」


マチルダさんの顔がまた赤くなる。これ以上危険を冒すのはやめにしよう。怖いし。


「スキルを今からでも習得するのが1番なんじゃが...意志は固そうじゃのぅ...。とりあえず最終的には、《堅牢の森(アーマードフォレスト)》の主、アーマードグリズリーを倒せる程度にはならないとこの世界で探索者として食っていくのは無理じゃと思うぞ?」


グリズリーって......。

草食(?)のウサギにも手こずってるのに......。


「まちなパウロ。リョー、そもそもアンタは探索者として生きていくつもりなのかい?その弱さだと、探索者協会にも加入させてもらえるか怪しいとアタシは思うさね。」


探索者協会?初めて聞く名だな。後で調べておこうか。


「俺は仲間たちと共に、この世界を巡るのが目標なんだ。」


「それならなおさら、強さは必要だよ。どこに行くにも物騒な世の中だからねぇ。」


まぁ森に魔獣が出るくらいだしな。


「そう。俺はなるべく早く強くなりたいが、絶対にこのスタイルを変えるつもりはないんだ。その上でアドバイスが欲しいが、二人に無理を言うつもりもないぞ。それなら今からでも俺は去るからな。」


この二人には十分世話になった。迷惑をかけるくらいなら別の方法を探そう。

何とかなるだろ、きっと!(楽観)


俺は少し気落ちしながらも、その場を去ろうとした。


「まぁ待ちな。アタシもパウロも、アンタのそういう頑固なところも気に入っているのさ」


「そうじゃぞ!そしてワシに1つ案があるのじゃが...」


「奇遇だね、パウロ。アタシもだよ。」



......どうやら俺には縛りプレイの神が微笑んだようだ。


***


マチルダさんとパウロさんに勧められたのは、教会に行くことだった。運が良ければ、そこで紫神の声を聞けるらしい。


本来であれば《色彩の神々》はそうほいほいと声を聞かせてくれるわけではないのだが、こと紫神に限って言えば、教会で祈りを捧げれば気に入った者には比較的すぐ声をかけてくれるらしい。


「ま、ダメ元で行ってみな!」


「無理ならウチで雇ってやるわい!がはは!」


「ああ、ありがとう。」


俺は二人にお礼を言い、パウロさんから余っていた地図を貰って、街に唯一という教会へと向かった。


パウロさん、人なんか雇う余裕あるのか?


***


「失礼する。神に祈りを捧げたいのだが」


「ようこそいらっしゃいました。おや、来訪者の方ですかな?これは珍しい。」


「ん?なぜ俺が来訪者だと?」


「はは。皆さん同じ格好をしていらっしゃいますからね。来訪者の方がこの教会を訪れるのは初めてです。申し遅れました。私はこの教会の司祭を務めております、サミュエルと申します。」


「ああ、俺はリョーという。少し訳あって紫神に祈りを捧げにきたんだ。」


出迎えたのはサミュエルと名乗る優しい顔の男であった。ややふくよかな体型がより人懐っこく感じられ、身に纏う神官服が非常によく似合っている。


「紫神様ですか。それはまた珍しい」


サミュエルさんは少し意外そうな顔をした。


「そんなに珍しいことなのか?」


「ええ。《色彩の神々》はそれぞれ司るものがあるのはご存知ですか?例えば赤神様なら愛や闘い、青神様なら水や魔法などです。中でも紫神様は文字通りの異色でして......毒や遊戯を司っています。毒魔法の使い手は少ないですし......あまり紫神様を訪ねて教会にいらっしゃる方は多くないのですよ。」


「なるほど...俺は知り合いに勧められてここに来たんだ。なんでも俺は紫神に興味を持たれているらしくてな。」


「ほう......それはそれは。それならば神の声を聞くこともできるかもしれませんね。それでは、この扉の先の左から二番目の像が紫神の像です。いってらっしゃい。」


柔らかに微笑むサミュエルさんにお礼を言って、俺は神殿の奥の扉を開ける。



そこは巨大な広間だった。


左右対称の造りになっており、静まり返った部屋の奥にそれぞれ高さ5メートルほどの像が8体立っている。非常に精巧な作りで、厳かな空気をそれぞれが纏っているように思えた。それぞれの像が《色彩の神々》の姿を模しているのだろう。俺は向かって左から2番目の像に近づいた。


「これは...光ってる...のか?」


紫神の像は全体が薄っすらと淡い紫色に光っているように見えた。他の像も見てみるが、紫神の像だけが光っているようだ。


「祈りを捧げるって、具体的にどうするのか聞くべきだったな。」


俺はとりあえず、祈るならこうだろうと像の前に両膝をつき、両手を胸の前で組んで目を瞑った。


(紫神よ、俺の縛りプレイ(人生)に道を示してくれ...もう貴方だけが頼りなんだ...)


『...ふふ.........』


なんだ?いま誰かの笑い声がしたような...そういえば今の雰囲気、俺がMALOにログインした時のと同じ...?


────────────────────

〔紫神の加護〕を受けました。

スキル【糸術Ⅱ】を得ました。

────────────────────


それっきり不思議な雰囲気は感じられなくなり、俺は目を開けた。もう紫神の像は光っていない。


「終わりましたかな?」


振り向くと、サミュエルさんが立っていた。いつからいたのだろうか。


「ああ。誰かの......女性の笑い声が聞こえた。」


「それはそれは!貴方は紫神様にかなり気に入られているようだ。素晴らしいことです!」


「そ、そうなのか。よく分からないが......」


俺はいまいち実感が湧かなかったが、とりあえずサミュエルさんにお礼を言って教会を後にし、パウロさんのお店に戻ることにした。

温泉いきたい。


良ければ評価等、お願いします。

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