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常識に縛られない縛りプレイ!  作者: いとう
第1章 新たな出会いと縛りプレイ
7/49

1-7 はじめてのせんとう

7話です。

年内最後の更新ですかね。

初めての戦闘シーン。

森に入る前に、俺はスキルの確認をすることにした。


懐からパウロさんに貰った糸の束を取り出す。すると、ウィンドウが目の前に現れた。


────────────────────

洞窟蜘蛛の糸

Rarity:4


ケイブスパイダーの吐き出す糸。粘着性は失われている。加工には高い技術が必要である。

────────────────────


これもマチルダさんたちから聞いた話だが、アイテムには10段階の希少度が存在し、高いものほど希少である。希少度4は中々に貴重なのではないだろうか。


「おっ、動かせそうだな」


糸を持って動くようにイメージしてみると、ゆっくりとだが糸の端が浮かび上がった。やはり糸を動かすことが出来るスキルのようだな。


そのまま10分ほど続けていると、視界の端にまたウィンドウが開いた。


────────────────────

【糸術】がLv.2になりました。

────────────────────


どうやらスキルがレベルアップしたようだ。まぁ序盤は割とサクサク上がるのだろう。RPGの定番だな。


定番RPGなら糸なんて武器にしないだろ、なんてツッコミは無しだぞ。


スキルレベルが上がったことで、より自在に糸を動かせるようになった。武器として運用するなら、首を絞めたりするくらいしかできなさそうだがな。


糸で首を締めても糸の方が切れてしまいそうたとも思ったが、パウロさんによればケイブスパイダーの糸には強度があり、《堅牢の森(アーマードフォレスト)》なら、よほど怪力の魔物に出会わない限りは切れないだろうとのことだ。



スキルの確認を終えた俺は、《堅牢の森(アーマードフォレスト)》に足を踏み入れた。


踏み入れた森の内部はアマゾンの熱帯雨林(といってもテレビでしか見たことがないが)そのものだった。


木々は鬱蒼と生い茂り、あんなに照りつけていた日差しもここまではほとんど届いていない。


「本当にゲームの中なんだよな?ここは。」


俺は遠くから聞こえる謎の獣や虫の声に少しドキドキしながらも歩みを進める。


すると、近くの茂みからガサガサッ!と物音が聞こえてきた。


慎重に近づき、こっそりと覗き込む。


「ッ!」


そこには現実世界のウサギのような、しかしウサギとは似ても似つかぬ動物がいた。これがパウロさんの言っていたアーマードラビットなのか...?



ちなみにこの世界、自分のステータスを見ることはいつでもできるし他人に公開することも可能だが、他人や魔物のステータスを覗き見ることは基本的にできないのである。マチルダさんによれば『鑑定』というスキルでそれは可能になるらしいが、持っている人は少ないらしい。


そんなことを考えながら、俺は改めて目の前のアーマードラビット(仮)に視線を戻した。見た目は結構可愛い。大きさも現実世界のウサギと変わらない。


しかし決定的に異なるのは、その毛皮である。その背中はアルマジロのような見た目で、見るからに硬そうである。耳は固く尖っており、その硬さと相まって刃物のようにも見える。


「悩んでいても仕方ないか...いくぞ!」


「ギュピィ!?」


俺は覚悟を決め、ものは試しと、勢いよく飛び出してアーマードラビット(仮)を殴りつけた。


「ッ?」


やはり硬い。これダメージ通ってるのか?

俺に気が付いたアーマードラビット(仮)が反撃してきた。物凄い勢いで体当たりしてくる。


「キュピ!」


「ぐおっ!」


腹部にクリーンヒット!


俺は呻き声をあげながら後ろに数メートル吹き飛ばされる。


MALOでは仕様上、身体的な痛みは現実の4割程度までカットされている。しかし、痛いものは痛いし衝撃も残る。


可愛い声のくせにえげつない攻撃だ。晩飯が出るかと思った。実際MALOでも食べたご飯が飛び出たりするのだろうか?......っと!次が来る!


「くそ!糸が間に合わない!」


「キュゥピ!!」


「ぐ!?」


俺はまた回避が間に合わずに吹き飛ばされた。なんて硬さと疾さだ。まるで砲弾である。


咄嗟に自分のHPを確認すると、残り半分ほどまで削れていた。まずいな。糸で首を絞めようにも糸の移動速度が遅すぎて奴の動きに全く追いつけない。


「またか!」


アーマードラビット(仮)がまた突進してくる。ダメだ。これは間に合わない。俺は腕を前にクロスして防御姿勢をとった。


「キュピィィ!!!」


「ぐぁっ!」


俺はそのまま後方に吹き飛ばされ、近くの木の幹に激突して意識を失った。クソ、可愛い顔してえげつねぇ......。


***


目が覚めると、そこは知っている噴水だった。幾分数の減った周りのプレイヤーの視線を感じる。


「これは、死に戻ったか。あのウサギ、強すぎないか?」


どうやら死に戻ったようだ。


恐らくデスペナルティによって、俺のステータスは全パラメータが半減していた。アイテムの損失については大丈夫のようだ。ちゃんと糸は手元にある。それとも運が良かっただけだろうか。


プレイヤーはそれぞれが初期装備としてアイテムボックス(腰につけるポーチ型のアイテム)を配布されており、100種類までのアイテムを各99個まで収納して持ち歩くことが出来る。大きさ等の制限はよくわからない。あとでヤナギにでも聞いてみるか。


「そんなことより、あのウサギか...」


あのウサギ程度倒せないようでは、ヤナギと香月さんとパーティを組むなんて夢のまた夢である。


さっきの戦いを検証してみる。まず俺の初撃はダメージが通っているようには見えなかった。あの装甲が存在しない部分を攻撃すればダメージが入るかもしれないが、先ほどの相手の動きからして無理だろう。速さが違いすぎる。


そうなるとやはり、糸で首を絞めるしかないか。いくら装甲が硬くても呼吸を止めてしまえば倒せるだろうし?


問題はどうやってそこまで持ち込むかだが...。俺には少し考えがあった。


***


「あそこに1羽いるな...やっとか...」


俺は再び《堅牢の森(アーマードフォレスト)》に来ていた。目の前の茂みの奥にいるアーマードラビット(仮)をやっとの思いで見つけたところだ。


先に自分が見つかって先制攻撃を受けると先ほどの二の舞になってしまうので、探すのに多大な緊張感を伴った。見つけただけでもうクタクタである。


索敵系のスキルを持っているプレイヤーならもっと簡単に見つけられたのだろうか。まったく...縛りプレイヤーに厳しい世界である。自業自得だが。


「...よし、これで準備完了だな」


俺は付近の茂みの陰に糸を網目状に展開して即席の罠を作り上げた。...これ、結構維持が大変だな...。


「おい!こっちだ!」


俺は大きな声でアーマードラビットの注意を引きながら走り出した。気づいたアーマードラビットがすぐさま追いかけてくる。


相変わらず足の速さだ。危ねっ!


俺は繰り出される突進を何とか避け続ける。最初から回避に徹していれば何とかなりそうだ。


「ここだ!」


「キュピィ!?」


俺はタイミングを見計らって茂みに飛び込んだ。俺につられて茂みに飛び込んだアーマードラビット(仮)は先ほどの罠の中に飛び込む形になった。


「キュゥピィィ!!」


「うお!なんて力だ!」


アーマードラビットはかなりの力で抵抗しているが、そう簡単に身動きは取れないようだ。決めるなら今だな。


「ゲームと分かっていても、やはり心が痛むな。すまん!」


「キュゥ...」


俺は糸を操作してアーマードラビットの首に巻きつけると、手で端を掴んでそのまま思い切り引き絞った。


しばらくすると、


────────────────────

【糸術】がLv.3になりました。

堅牢兎の外皮を入手しました。

────────────────────


「やっと倒せた......。」


かなりの激闘だったと思うんだが、レベルアップは無しか。


俺は、息絶えたアーマードラビットが目の前で光となって消えていくのを確認すると、パウロさんへの報告のために街へ戻ることにした。


一度死に戻りもしてしまったし、結構時間が経ってしまったな。

皆様、よいお年を。

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