3-3 赤色の神
皆さまいつもありがとうございます。
ちょっとペース落ち気味ですが、頑張ります。
ここは、どこ?
確かおにーちゃんと教会に来て...
神さまの像がひとつ光ってたから近づいて...
んーー。そこから思い出せないや。
周りには何も無い。
強いて言うなら...うーん...『赤い』?
なんだか不思議な感じだなー。
どっちが上か下かも分からない。
早くおにーちゃんのところに戻りたいんだけどなぁ。
『ようこそであるよ。』
「うわっ!びっくりした!こ、こんにちは...?」
私の目の前に突然現れたのは、私の腰くらいまでの身長しかないおじさん?だった。
おじさん...って呼んだら失礼かな。
体格は子供くらいなんだけど、顔は完全におじさんなんだよね。
服は真っ赤なつなぎに、真っ赤なとんがり帽子。
よく見たらお洒落に見えてきたかも。
『?私の顔に何かついているであるか?』
「い、いえ!そんなことはないです!ちょっと驚いちゃっただけです!」
この人、よく見たらさっき光ってた神様の像にそっくりだ。
え、もしかして神様なのかな?
『ほ。そうであったか。それはすまなかったである。』
「いえ...失礼かもしれないんですけど、もしかして神様、ですか?」
『む?ふむ、たしかに私を赤神と呼ぶ者たちもおるな。』
うわやっぱり!神様!
どうしよう。
膝をついてお辞儀?お供え物?貢ぎ物?五体投地?
どうしたらいいかわかんないや。
「あの......私、神様にお会いするの初めてなので、どうしたらいいか分からないんです。」
『ほほ。そんなことはどうでもいいのであるよ。人々が勝手に我々を神と呼ぶだけなのである。我々はすこーしだけ、この世界に干渉できるだけの存在なのであるよ。』
なんだかちょっと分からないけど、とにかく気にしてないみたいでよかった。
「それであの、御用はなんでしょう?」
『ほ。お前から強い愛の気配がしたのでの、様子を見に来たのである。私は愛と闘いを司っているのであるからな。』
愛の気配?私から?
『そうであるな。相手は、お前と一緒に神殿へ来た男であるな。お前たちから、お互いを想う強い愛が感じられるのである。』
え、おにーちゃんのこと?
どうしよう、強い愛なんて......。
兄妹なのにそんなのだめだよ!
「でも私たち、兄妹だから......」
『ほ?何か勘違いしているようであるが、私が司るは全ての愛であるよ?そこにはもちろん、兄妹愛も含まれるである。』
「えっ」
は、恥ずかし〜〜!!
『な、なんだかすまないである。恥をかかせるつもりは無かったであるが。』
「いえ、いいんです......自爆なので。」
私は顔がすごく熱くなるのを感じた。
きっと今、真っ赤っかなんだろうな。
『ほ。私が出てきたのはお前に会ってみるためであったから、他に用事もないのである。そろそろ時間のようであるし、さらばなのである。』
赤神様がそう言った途端、私の視界は急に遠くなった。
***
ふむ。ミクから聞いた話によると、俺が紫神と黒神と会っていた間、ミクも別の神に会っていたようだ。
赤神か。あの真ん中の、一際小さい神だな。
愛と闘いの神か......『恋は戦いなのよぉん!』ってベリ美も言っていたし、案外近い概念なのか?
よく分からん。
「体調に異常はないか?例えば動けなくなるとか、冷や汗が止まらなくなるとか。」
俺は心から心配してミクにそう聞いた。
すると返ってきた答えは、
「え、全然大丈夫だよ?ってかおにーちゃん!その汗どうしたの!?びっしょびしょ!」
これである。
黒神は仕方ないとして、あの紫色の神の奴、絶対許さないからな。
挑んだところで勝てる気は全くしないわけだが。
まあ少なくとも赤神が理性的だと言うことが分かっただけでもよしとしよう。
ちなみにミクは赤神と出会ったあと、こんな称号がステータスに追加されていたらしい。
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〔赤神の加護〕
赤神の加護を受けた者の証。
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加護、か。
確か俺が初めて紫神に貰ったのも加護だったな。
いつの間にやら寵愛に変化しているが。
アレのお陰で今の俺の縛りプレイがあるって意味だと、紫神には感謝しなきゃいけないな。
あのいたずら好きな性格を考えると、あまり気が進まないが。
「リョーさん、もしかしてまた神に会われましたか!?」
サミュエルさんが息急き切って神殿に飛び込んできた。
いつか見たような光景だ。
あの時との違いは、俺が身体を動かせているところか。
「ああ。俺もミクも会ったみたいだな。毎度心配させてしまってすまない。」
「私は初めて神様に会いましたけど、なんだか不思議な方でした。赤神様、って本人?は言ってました。」
それを聞いたサミュエルさんは、驚いた顔で言う。
「ミクさんもお会いしたのですか?それは凄いですね。赤神様は比較的色々な方の前に姿を現わしますが......それでも神々に会われるというのはそれだけで素晴らしい事なのです。いやはや、お二人とも本当に素晴らしい......」
サミュエルさんが静かに興奮している。
まぁそりゃ、ほいほい姿を現わす程に神々も暇じゃないだろうしな。
俺とミクは、ブツブツ言いながら自分の世界に入ってしまったサミュエルさんをそのままに、そっと神殿を後にすることにした。
***
「サミュエルさん、なんだか感動してたね。」
「ああ。滅多にない事なんだろうな。」
俺とミクは、セルノスの表通りを歩きながら、そんな話をしていた。
「俺は挨拶する人がまだいるんだが、次の場所には一人で行ってもいいか?ミクには済まないんだが、少々訳ありなんだ。」
そう、俺はこの後パウロさんの店に向かおうと思っていた。
なにせ、王国に追われてるらしいからな。
どういう事情なのかは知らないが、俺の一存でパウロさんとマチルダさんのリスクを高めるわけには行かないのだ。
「んー。そういうことなら分かった!この近くによく行ってた喫茶店があるから、私はそこに挨拶に行ってくるね。また後で集合しよ!終わったらすぐ連絡してね?」
「ああ。そうするよ。」
俺は少し名残惜しそうなミクと別れ、一人、パウロさんの店へと向かうのだった。
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