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常識に縛られない縛りプレイ!  作者: いとう
第1章 新たな出会いと縛りプレイ
4/49

1-4 MALOの世界へ

こんにちは。いとうです。

挨拶は大事ですよね。

サービス開始5分前、俺は少し早めの晩御飯と風呂、トイレを済ませ、家族に部屋でゲームをする旨を伝えて、準備万端でメガトロンに座っていた。


逸る気持ちを抑えつつ、ヘッドギアを頭に装着。

スイッチを入れる。鼓動が早まる。



...さあ、サービス開始の時間だ。

───welcome to MALO───

目の前に文字が踊り、俺の意識は暗転した。


***



『........ふふ...』


「ん?なんだ?誰か何か言ったか?」




───────目の前が明るくなってくる。意識が浮上する。



「...ちん!リョーちん!!!」


「うわ!...なんだヤナギかよ。...ここはどこだ?」


「なんだとはご挨拶だなぁ。ようこそリョーちん!MALOの世界へ!」


その声につられて顔を上げると、俺は、息を飲んだ。


そこは賑やかな街だった。初期装備のプレイヤーなのだろう。同じ格好の人々がそこかしこにいる。


「...すげぇ。」



俺はそこに立ち尽くすしかなかった。


肌を撫でる風も、土の感触や匂いも、NPCと思われる人々の喧騒さえも、現実となんら遜色が無い。


どこかのテーマパークに連れてこられたと言われても信じられるレベルだ。事実、周りの他のプレイヤーも感動を通り越して戸惑っているようだ。


ひとしきり周囲を観察してからやっと呼吸を思い出した俺は、得意げな顔でこっちを見ている親友に向き直った。


「ようこそって言っても、お前も来たばかりだろうが。」


「まぁね!実際リョーちんと同じ反応しちゃったしな!いやー、めちゃくちゃリアルだよなぁ。この耳もさ!本物にしか見えないよ、ほら!」


「耳...?」


ヤナギの頭にふと目をやった俺は、また言葉を失うことになる。ヤナギの頭に、まるで動物のようなふさふさの耳が生えていたのだ。


「おま、そ、そのあたま...」


「すごいだろこれ!動かせるんだぜ!」


「...なんなんだ?その耳は?」


「なにって、あ、リョーちんもしかして種族選択、適当にやった?」


「あぁ、他のことで頭がいっぱいだったからな。すぐヒューマンに決めてしまった。」


「やっぱりな。これは獣人を選んだらついてきたんだよ!尻尾もあるぜ!」


確かにヤナギのおしりの辺りからふさふさの尻尾が生えている。なんの尻尾だろうか。


改めて周囲を観察してみると、ヤナギ以外にもさまざまな耳や尻尾をつけた獣人のプレイヤーがそこかしこにいる。もしかしてヒューマン以外の種族には体に特徴が現れるのだろうか。


「ヤナギくん!」


聞きなれた声がした方を見ると、俺はまた息を呑んだ。


とんでもない美人がこちらに駆け寄ってくる。髪はきらきらと陽に反射して輝く金色で、純白の肌、少しとがった耳がのぞいている。周囲の何人かのプレイヤーも見とれたり、鼻の下を伸ばしたりしている。その美人は俺たちの前で立ち止まった。


「よかった。無事に合流できたみたいね!」


「えっと、ヤナギ、知り合いか?」


「何言ってるんだよ、リョーちん。メグミンだぞ?」


言われてもう一度まじまじと見つめる。確かに顔立ちは香月さんだ。むしろ殆どいじっていない。


「...すごいな。」


「な!メグミンはエルフなんだぜ!めちゃくちゃ似合ってて綺麗だよな!」


「えっ、あっ、ありがとヤナギくん...」


なるほど、エルフか。確かによく創作話で聞くようなエルフの特徴である。凛としたイメージの香月さんによく似合っている。


...今は赤くなって照れているようだが。



それにしても、本当にヤナギは天然でやってるんだもんな。周りの男性プレイヤーが血の涙を流しているぞ。出血のバッドステータスとかつかないのか?あるのかも知らんが。


「と、とりあえず三人でパーティーを組む予定なら、ステータスとかをお互いに知っておいた方がいいんじゃない?まずは私のステータスを二人に見せるわね。」


心なしか顔と耳を赤くした香月さんがステータス画面を開く。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

NAME:メグミ

Race:エルフ

JOB:来訪者

Lv:1

HP:100

MP:10

STR:10

VIT:10

DEX:10

INT:10


〈Skills〉

【弓術】Lv.1 【風魔法】Lv.1

【身体能力強化・微】Lv.1 【遠見】Lv.1

【夜目】Lv.1

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ステータスは許可をした相手には見せることが出来るようだ。


遠距離攻撃を主とするようなスキル構成だな。それにしても、スキルが5つもあるなぁ。これが普通なんだろう。


まぁ、俺には全然関係ないけど。


「よし、次は俺の番だな!」


待ちきれなさそうに、ヤナギもステータスを開いた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

NAME:ヤナギ

Race:獣人(狼)

JOB:来訪者

Lv:1

HP:100

MP:10

STR:10

VIT:10

DEX:10

INT:10


〈Skills〉

【剣術】Lv.1 【HP増加・微】Lv.1

【身体能力強化・微】Lv.1 【嗅覚強化】Lv.1

【夜目】Lv.1

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ヤナギは狼の獣人だったんだな。全体的に近接戦闘に特化した構成のようだ。魔法関係のスキルはとっていないらしい。獣人は魔法が苦手らしいからな。パーティを組むならタンクということになるのかな?


「それで、リョーちんはどんなステータスにしたんだ?」


お、やっと俺の番か。


ふふふ、では見せてやろう!俺の華麗な縛りステータスを!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

NAME:リョー

Race:ヒューマン

JOB:来訪者

Lv:1

HP:100

MP:12

STR:14

VIT:12

DEX:16

INT:12


〈Skills〉

【糸術】Lv.1

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「ちょっとリョーちん!なんだよこのステータス!」


「ふふふ、驚いたか。」


「リョーくん、いくら何でもこれは...」


「これぞ俺の求める縛りプレイだ。俺はこれから一切のスキルをとらないつもりだからな。」


「「それは流石に無茶だと思う...。」」


香月さんどころかヤナギまでが呆れた目でこちらを見てくる。しかし俺の意志は固いのだ!



あ、そうだ。これとは別に聞いておかなきゃな。


「なあヤナギ、誘ってもらっておいてなんだが、俺と、本当にパーティを組むのか?」


「え?もちろんだよ!」


「だって俺はこんなステータスなんだぞ?これから追いつくつもりではいるけど、お前たちがMALOを楽しむ足を引っ張りたくないんだよ。」


そう、縛りプレイは基本的にトライ&エラーなのである。わざわざ俺のプレイスタイルにこの2人を付き合わせる必要もないだろう。


パーティを組むのは断られても仕方のないことだと俺は思っていた。


ひとりは寂しくなるかもしれないが、これも縛りプレイの宿命だと思って甘んじて受け入れることにしよう。


「リョーくん。ひとつ勘違いしてるようだから言っておくわね。ヤ、ヤナギくんは貴方と一緒に遊びたくて私に無理を言ってきたのよ?」


珍しく香月さんが詰め寄ってくる。


「そうだよリョーちん!リョーちんがどんな雑魚ステータスだろうと俺はリョーちんとメグミンと三人で遊ぶからな!」


雑魚ステータス言うな!雑魚ステータスだけども!



......だが、そんな風に思ってくれているなら俺もそれに応えなきゃな。



「わかった。じゃあパーティには遠慮なく入れてもらうことにする。ただひとつ、約束させてくれ。」


「約束?」


ヤナギが首を傾げ、頭の耳が揺れる。


「俺はやっぱりお前たちの足を引っ張る自分が許せなくなると思う。だからな、俺に少し時間をくれ。すぐにお前たちと肩を並べられるようになってやる。」


「......やっぱりリョーちんはそうでなくちゃ!そういうことなら許してやるよ!」



少し誇らしげで、何故か少し偉そうなヤナギを他所に、俺は香月さんの方を向く。


「メグミ、俺がいない間、ヤナギと二人で仲良くやるんだぞ。」


すると香月さんは目を見開き、こう言った。


「ま、まままままかせせて!!」



......大丈夫だろうか。


俺がこうハッパをかけるのは香月さんとヤナギの関係の発展を狙った面もあるので、是非、香月さんにはこのチャンスをモノにしてほしいと思う。ヤナギは悪い奴ではないのだ。



「そういえばリョーちんとメグミンには言ってなかったけど、俺の昔からのネトゲ仲間もパーティに誘ってもいいかな?女の子なんだけどさ、MALOを一緒に始めてるはずなんだ!」


「「...え??」」



...香月さん、頑張ってくれ。

では、また次回。

さよーならー。

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