2-14 《酒とぱふぇ》のために
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「オラァ!!」
裂帛の気合を込めたダリアのロングソードが、飛びかかるアーマードウルフをその装甲ごと一刀両断する。
振り向きざまにもう一閃。
「グォォン!!」
叫び声をあげて斃れるアーマードウルフ。
「っふう。これで最後か。」
ダリアは剣を鞘に仕舞うと、周囲を見回した。
散らばり、光の粒子となって消えつつあるアーマードウルフの亡骸。
その数にダリアは違和感を覚えた。
「あれ?...私、こんなに倒したか?」
「すみません!ダリアさんが敵の注意を引いてる間に残りをやっちゃいました。」
ダリアに話しかけたのは近くの物陰から姿を現した、パーティメンバーのミクである。
「あ、ああ。それはいいんだが...。私にすら気がつかせないとは...短期間でよくこんなに強くなったな!ミク!」
「ダリアさんの指導のおかげです!」
「途中から、完全にお前の独学だったけどな...」
そう、ダリアはミクが敵を倒していることに全く気がついていなかった。
というのも、それはミクの確立した戦闘スタイルに理由がある。
ミクはいま、黒装束で全身を覆っていた。
奇しくも、現在《堅牢の森》を爆走する兄のリョーと似た格好ではあるが、その在り方は大きく違う。
ミクの戦闘スタイル、それは...
「ミク!次がお出ましだ!」
「はい!」
「ゥガァァ!」
ダリアに向かって突撃してきたのはアーマードディア。
草食動物とは思えないアグレッシブな突撃であったが、ダリアの左手の盾がそれをガッシリと受け止めた。
ガキーーン!
甲高い音を立てて巨大な角と盾がぶつかる。
攻撃が失敗したのを悟ったアーマードディアは距離をとろうとしたが、
そこで自らの首から鮮血が吹き出しているのに気がつく。
「ガッ...」
それがこのアーマードディアの最期だった。
崩れ落ちる巨体。
もちろん、トドメを刺したのはミクである。
それを賞賛の眼差しでみつめるダリア。
「いや、見事と言うほかないな。それにしてもミク、そんな戦闘スタイルをどこで思いついたんだ?私には無い発想なんだが...」
ダリアは、再び物陰から姿を現したミクに気になっていたことを尋ねた。
「ふふん!これはですね!ジャパニーズNINJAスタイルです!」
黒装束に身を包んだミクは腰に手を当て、胸を張ってそう言うのであった。
***
よおみんな!
皆さんお馴染み、〈大先生〉ハワードだぞ!
元気にしてたか?
今は絶賛、探索者協会の酒場でグルンさんと呑み会中だ!
「《酒とぱふぇ》だぁ?」
「おうよ!ここらで一番の腕っこきのダリアちゃんがいるんだ!上位入賞間違いなしだろうよ!ガハハ!」
グルンさんが酒臭い息を吐きつつ、大笑いしている。
俺はMALOに来てまだ日が浅い。
しかし、情報収集は全力で行ってきた自負がある。
特にこの街の腕利き探索者の名前なんてすでに全員抑えてるはずなんだが...。
ダリア?なんて名前は初めて聞いたな。
「おいグルンさんよ、本当にそのダリアってのがここらで一番の腕利きなのか?」
「当たりめぇよ!ついでに、ここらで一番の美人ときたもんだからよ!旦那様が羨ましいぜ!なぁ、ダイナ!ガハハ!」
グルンさんは陽気に笑いながら、探索者協会のカウンターの方に向かってそう叫ぶ。
するとカウンターに控えていた、一際いかつい職員が苦笑いしながらこちらの席に向かって歩いてきた。
話の流れからして、そのダリアさんの旦那さんみたいだな。
「おいおい、グルンのジィさん、呑みすぎじゃねぇか?そこの若いの、あんまりこのジィさんに呑ませてやんないでくれると助かる。ここで死なれちゃ寝覚めが悪いからな。」
「んだとダイナ!老い先短い老いぼれの唯一の楽しみまで奪う気か!ガハハ!」
ダイナと呼ばれた男が首の後ろをぽりぽり掻きながら、何やら皮肉めいたことを言ったが、グルンさんには全く響いていないようだ。
この男、ときどきカウンターにいるのを見かけるが、実際に会話するのは初めてだな。
すかさずタナカが話しかける。
「すみません。気をつけますね。ところであなたは?」
「お、すまん。俺はダイナ。この探索者協会の職員だ。よろしくな。」
ダイナさんがそう言って手を差し出してくる。
「ここらで一番人気のない受付職員って言ったらコイツのことって覚えときな!ガハハハハ!」
「おい、ジィさん!余計のこと言わなくていいぞ!...ったく。すまんな。こんな酔っ払いに付き合わせちまって。」
俺はダイナさんの手を握り返し、それに応じた。
「いや、俺たちも情報屋をやってるもんでな。色々教えてもらってんだよ。俺はハワード。こっちは仲間のタナカだ。ダイナさん、よろしくな。」
隣のタナカがペコリと頭を下げる。
ダイナさんの手は予想以上に強く、ゴツゴツしていた。
「おう!俺のことはダイナでいいぜ。んで、ジィさん、何の用だったんだ?」
「こいつらがダリアちゃんについて知りたいらしくてなぁ。」
ダイナさんが怪訝そうにこちらを窺う。
「あー、俺たちは情報屋をやってるんだが、今回の《セルノス大狩猟大会》で有力な参加者についての情報を集めていてな。」
「なんだ、そういうことか。いいぜ、役に立てるか分からねぇが分かる範囲で教えてやるよ。」
「なにぃ?ダイナ、じゃあワシにはダリアちゃんのスリーサイズを教えてくれんか!」
鼻息荒く会話に割り込んでくるスケベジj...グルンさん。
「自分で聞け!」
「いっってぇ!!おいダイナ!もっと老人を敬え!いてぇじゃねぇか!」
頭を思いっきり殴られたグルンさん、いやグルンが文句を言っているが、これはもう無視しよう。
「んで、このジジィのことは放っておくとして、お前ら、何が知りたいんだ?」
「ではまず僕からひとついいですか?」
タナカが律儀に手を挙げて訊く。
「ダリアさんという方がこの辺りで一番の腕利き探索者というのは、本当ですか?」
「あー、今は確かにそうだな。」
ん?何か含みのある言い方だな。
「というと?」
タナカがもう一押しする。
「一応本人から軽く口止めされてるから詳しいことは言えないんだけどな?ダリア肝いりの来訪者がいてな、そいつらがすぐに一番になると思うぞ。」
「ふむ...彼らはそんなに強いと?」
タナカが顎に手を当てて考え始めた。
なんだその仕草、カッコいいな!
俺も今度からやろうかなぁ。
「ダリア本人が、そのうち勝てなくなる、って断言してたからな。負けず嫌いのアイツにしては、これでも相当珍しいことなんだよ。」
それを聞いたグルンが目を見開き、叫ぶ。
「ダリアちゃんはC級探索者だぞ!ミクちゃん、そんなにつえーのか!?」
「おいグルンのジィさん!せっかく俺が伏せてたのに、名前を出すなよ!」
ダイナさんが焦ったようにグルンに注意する。
いや、もうだいぶ前から手遅れなんだがな。
「おっと、いけねぇ。歳とると物忘れが酷くてなぁ。大先生たち、忘れてくれや!ガハハ!」
なんて適当な爺さんなんだ。
絶対この爺さんには秘密を話しちゃいけねぇな。
「まぁ、ミクちゃんの方はそれほど強く口止めされてる訳じゃないからいいっちゃいいんだが...出来ればあんまり広めないでもらえるか?俺がアイツらの信用失うのは嫌なんでな。」
「おう、いいぜ。ダイナ、お前も苦労してんだな。」
俺はグルンの残念さについてダイナに心底同情する。
「分かってくれるか!ハワードだっけか?お前とは良い友達になれそうだ!ちょっと聞いてくれよ、このジィさんな...」
俺とダイナはそれから、グルンの愚痴で盛り上がった。
本人の目の前で。
当の本人は全く気にせず大笑いしながら酒を煽っていたが。
それにしても、ダリアとミクか...。
今後の動きに注目だな。
書き溜める時間がほしい...。
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最近ハワードが主人公みたいになってるのは、私のお気に入りだからです。
リョーもそのうち出ます。そのうち。




