2-10 パウロ印の武具
どうも!
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武器の名前考えるの楽しい!!
「ハアァァ!」
裂帛の気合とともに、煌めく双剣がアーマードゴリラの巨体を引き裂く。
「シッ!」
美しい長弓から放たれた一本の矢が、まとめて三体のアーマードウルフを貫く。
「ええぇぃん❤️」
巨漢...もとい、乙女が、その身に纏うドレスを閃かせながら、身の丈2メートルはあろうかというアーマードディアをその拳で吹き飛ばす。
***
ヤナギたちパーティは、来たる《セルノス大狩猟大会》に備えるべく、《堅牢の森》で特訓を続けていた。
「いやー!それにしてもリョーちんに貰ったこの武器、やっぱりすげぇ!」
「ヤナギくん、貰ったわけじゃないのよ。素材もお金も足りなかったんだから、今こうして狩りで稼ごうとしてるんでしょ?」
「そうよぉん。でもこのドレスの値段を稼ぐためにあと何体狩ればいいのかしらぁん?」
ベリ美はパウロとマチルダの合作であるバトルドレス《恋する乙女はときに獰猛な狩人》を見つめながら言う。
ドレス全体は濃い緑色で統一されており、煌びやかな刺繍と可愛らしいフリルが施されている一方、
《堅牢の森》の風景に溶け込める実用性も兼ね備えている。
ちなみに銘はベリ美がつけたものである。
「俺ももっと稼がないとなぁ。最近は依頼こなしてもランク上がらないもんなぁ。」
ヤナギが腰の両側にさげた双剣《双子の流星》の鞘を撫でながら言う。
刃渡りは一般的なロングソードと同じくらいではあるが、その切れ味は比較にならない。
先程もアーマードゴリラの硬い外殻を、その鋼のような筋肉諸共切り捨ててみせた。
鞘にも流麗な装飾が施されており、その材料もはるか北方から取り寄せられた頑丈な木材である。
剣の柄に埋め込まれた宝石は、実用性も兼ね備えているが、一度振るわれれば煌めく流星のように見えることだろう。
「でもこの武器があれば、もっと強い魔獣にもいい闘いが出来ると思うわよ?イベントで上位に入れば賞金もでることだし。」
メグミの背中で存在感を発揮するのは長弓《翡翠》である。
鈍く緑に輝くその弓は、驚くなかれ、鉱物で出来ている。
魔力伝導性の非常に高い鉱物を、パウロが丁寧に加工、整形したものだ。
弓にふさわしいしなやかさを備えてはいるものの、やはり使用者の技術によるところが大きい、テクニカルな武器に仕上がっていた。
「たしかに!もう少し強い魔獣を探してみようか!フィールドボスとも戦ってみたいし!」
ヤナギのその提案に2人は賛成し、ヤナギパーティ一行は森の奥深くへと消えていった。
***
「パウロさん、いるか?」
俺は《セルノス大狩猟大会》に向けた特訓も一区切りつき、再びパウロさんの店に来ていた。
ヤナギ達から武具の感想が来たので、俺の感想とまとめて使用感を伝えるためである。
武具完成後のアフターフォローも完璧なパウロさんの店。この店の外観さえ整えれば変えれば大繁盛間違いなしだろう。
...本人にその気はないようだが。
「おぉ!リョーか!待っとったぞ!それで、ワシが作った武具の調子はどうじゃい?」
店のような廃墟の奥からパウロさんが出てきた。
「みんな大満足してるみたいだ。ありがとう。俺の方も問題ない。むしろ性能が良すぎて腕が鈍っていかないか不安なくらいだ。」
「ガハハハ!それは良かったわい!ちょっと素材が不足気味だったからの、心配してたんじゃよ。」
嬉しそうに笑うパウロさん。
ちなみに、パウロさんがヤナギたちのパーティに向けて作り上げた武具のステータスは以下の通りである。
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恋する乙女はときに獰猛な狩人
Rarity:7
非常に高い技術で縫い上げられたバトルドレス。
柔軟性と耐久性を兼ね備えており、ある程度の防御力も期待できる。
森や草原の風景に溶け込む緑は、まるで意中の相手を狙う恋のハンター。
HP+100
STR+10
DEX+10
VIT+15
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双子の流星
Rarity:7
非常に高い技術で鍛え上げられた双剣。
その切れ味もさることながら、左右の柄に施された宝石は、魔力を注ぐことでその色に応じた魔法を発動できる。
戦場を駆ける二筋の流星を前にすれば、その者の生命の光は霞んでしまうことだろう。
ATK:1500(×2)
MP+20
DEX+10
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翡翠
rarity:7
非常に高い技術で錬成された弓。
全体が魔力伝達に優れた希少な鉱石で作られており、使用者の技術に大きく性能が左右される。
射られた者は、命落とすその瞬間までそれに気がつくことはないだろう。
ATK:2500
MP+30
DEX+10
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いや、性能がおかしい。
MALOの常識に疎い(とよく言われる)俺でも分かるぞ。
普通の店売りロングソードがATK:100であることを考えると、その異常さが分かる。
「ま、性能が実力に追いつかなくなったらまた持ってきてくれりゃ改良してやるわい!もちろん素材と金は用意してもらうがの!ガッハッハ!」
パウロさん、あんたが神か。
「なぁ、パウロさん。こんなに高性能の武具が作れるのに、なんでもっと大々的に売ろうとしないんだ?」
俺は、純粋に疑問に思っていることを聞いてみた。
パウロさんの武具は明らかに店売りのものと比べても性能がおかしいし、すぐに高値で売れるようになる気がするのだ。
まぁ、以前のマチルダさんとのやりとりを見ると、何か事情があるようだが。
「あぁ、そのことかの。うーむ。説明が難しいのぅ。」
「いや、話したくないならそれでいいんだが。」
パウロさんにはお世話になりっぱなしだ。
迷惑をかけたいわけじゃない。
ただ、お礼というわけではないが、もし俺に解決できるような問題があるなら解決したいと思っている。
「詳細は今度マチルダにでも聞いてくれりゃいいんじゃが、簡単に言うとの?ワシとマチルダは王国から追われておるんじゃよ。」
おっと、トンデモ発言きましたー!
え?王国?追われてる?
でもパウロさんの表情を見るに本当のことっぽいな。
「それはなんだ...その、悪いことでもしたのか?」
「ああ!いや!そういうわけじゃないぞい!ただ、ちーーっと王国に嫌気がさしての。マチルダと逃げて来たんじゃ。王宮の奴らうるさいし...。」
え?なに王宮?
王宮の奴らって...。お偉いさんをそんな呼び方てすか?
というか、パウロさん、王宮御用達の職人だったの!?
「ま、そんなことどうでもいいじゃろ!あとはマチルダに聞いとくれ!」
「...あ、ああ。話してくれてありがとう。」
あ、パウロさん、説明が面倒になってしまったようだ。
俺も出てきた情報にびっくりしすぎて処理しきれてないが。
全然どうでもよくはないので、詳しい話は後でマチルダさんに聞くことにしよう。
「そういえば、俺の分の素材と代金はここに置いておくぞ。」
俺は今回の分の代金と集めてきた素材を渡した。
この地域では取れない素材はパウロさんの店の倉庫から出してもらった。
めちゃくちゃ高くついたが。
というかぶっちゃけ、ヤナギたち3人の武具に関しては半分以上がこの地域では取れない素材で出来ている。
あいつらは果たしてパウロさんに代金を完済できるのだろうか...。
「おぉ!これで店の改築が出来るわい!最近雨漏りが酷くての。起きたら顔がビショビショなんじゃよ。」
それはもう外では?
あんな高価な素材を倉庫に隠してるのに、なぜ店を直さないんだこの爺さんは。
と思って聞くと、
「良い素材は良い作品にしなけりゃ『匠』の名が泣くわい!寝床なんて二の次じゃよ!」
とのことである。
素材が良すぎてセルノスでは作品の買い手がつかなかったために貧乏だったらしいので、目の前の『匠』は思った以上に救いようがない。
こういう人が紫神に気に入られるんだろうな。
と、俺は自分のことを棚に上げ、遠い目をするのだった。
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5秒で終わります!
ヤナギたちの武器の性能は後でバランス調整するかもです。




