落下
深いところの、底が知れないまま落ちていく。
ただひたすらに落ちていく。
たまに気を失っては心地が良い。
その時、どんなに幸福な夢を見たって、目覚めた頃には落ちていく自分を思い出す。
ただ、落ちていく。
落ちた先になにがあるのだろう。
そこがどんな場所だろうと、目的地には変わらないのだ。
落下した瞬間から変わることのない目的地。
少なくとも、落ちていく先は向かうべき場所なのだ。
落ちた先がどこなのか、落ちた先に何があるのか、さっぱり分からない。
気が付いたら落下の最中だった。
ふと、気が付くと落下は終わっていた。