第二章5
アルカの地下深くにX生徒会の巨大な議場があった。
生命の息吹が一切感じられない無機質なその空間にはダビデの星が描かれた漆黒のモノリスが三体、まるで有史以前から存在しているかのように直立している。
「我らの悲願たるアリヤー」
黒い石柱に『01』と刻まれた男声のモノリスがそう言い、
「その約束の日は近い」
同じように『02』と刻まれたモノリスが低い男の声で応じる。
「ですが残された時間の間に我々はより多くのことを学ばねばなりません」
打って変わって女の声を発し、部屋の壁にかけられたモニターにオーイシアの地図を表示させるモノリスの表面には『03』の数字が彫られていた。
「我々はいずれアルカにおいて滅亡させる側に立つでしょう。ならばより短時間で、より効率的に相手を滅亡させるため、アルカにおいて滅亡する側がどのようにして滅んでいくかを詳しく知っておかなければなりません」
女声のモノリスは続ける。
「既にサブラ・グリンゴールド中佐を現地に派遣しています。彼女なら問題なく我々の欲するものを手に入れてくれる筈」
「うむ」
「確かに」
『01』と『02』のモノリスは『03』の判断に同意した。
直後、「しかし」と『02』のモノリスが声を上げる。
「我々はハイスクール・エウレカの二の舞を避けるための対策も講じなければならない。問題の目を摘み、こちらが先手を打って行動するための情報収集組織を持たねば」
「既に本国と調整して準備を進めています。ご覧ください」
『03』のモノリスがそう言うと同時に、モニターに禍々しいマークが表示された。
「イスラエル諜報特務庁――モサドの憲章を」